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翌日
地味な奈緒として再び健一の前に。
「……奈緒、頼む!里奈にだけは……あいつにだけは、この場所を教えないでくれ」
床を這いつくばって磨きながら、健一が震える声で縋り付いてくる。
かつての尊大な態度は見る影もなく
今の彼は「里奈」という名前を聞くだけで失禁しそうなほど怯えていた。
「あら、そんなに怖いの?あなたが『刺激が欲しい』と言って選んだ女の子じゃない」
私はソファーに座り、健一が磨いたばかりの床を、新調した真っ赤なヒールでわざと踏みつけた。
キュッ、と嫌な音が響く。
「……っ!」
健一の肩がビクッと跳ねるが、彼は黙って汚された床を再び拭き始めた。
そう、これが今の私たちの正しい関係。
その時、リビングの静寂を破るように、玄関のチャイムが激しく連打された。
ピンポンピンポンピンポン!!
「来たわね」
「ひ、ひいぃぃっ!!」
健一は雑巾を放り出し、テーブルの下に潜り込もうとした。
モニターには、案の定、里奈が映っている。
手には何やら分厚い封筒を握りしめ、カメラを睨みつけていた。
私はゆっくりと立ち上がり、玄関へ向かう。
「奈緒!行くな! 開けるな!!」
健一の悲鳴を無視して、私はドアを開けた。
「……またあなた? しつこいわね」
「健一を出せ!!あいつ、私のメッセージ無視して……!親のところにも行ってやったわよ。あいつの母親、腰抜かしてたわ!」
里奈の言葉に、奥の部屋からガタガタと何かが倒れる音が聞こえた。
私はふっと冷たい笑みを浮かべ、彼女を中へ招き入れた。
「……いいわよ。入りなさい。彼、ちょうど反省しているところだから」
「反省……?」
里奈は拍子抜けした顔でリビングへ入ってきた。
そこで彼女が目にしたのは、かつての不倫相手が
エプロン姿で這いつくばり、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして床を磨いている姿だった。
「……健一?何よ、その格好」
「り、里奈……っ、悪かった、俺が全部悪かったから! 警察にだけは……実家をこれ以上壊すのはやめてくれ!!」
健一が里奈の足元に転がり込み、靴を舐める勢いで謝罪する。
その惨めな姿を見て、里奈は呆気にとられた後、ゲラゲラと笑い始めた。
「あはは! 最高! あの偉そうにしてたエリート様が、ただの雑用係じゃない!ねえ、奈緒さん、これ動画に撮ってもいいわよね?」
「ええ、お好きにどうぞ。彼の『今の姿』を、あなたの親御さんにも見せてあげたら? 娘を騙した男がこんなに無様に堕ちたって」
里奈はスマホを取り出し、健一を執拗に撮影し始めた。
フラッシュが焚かれるたび、健一は顔を覆って叫び声を上げる。
「やめろ…やめてくれ……っ!」
「いいじゃない、健一。これがあなたの望んだ『刺激』でしょう?」
私は里奈の肩を抱き、彼女に耳打ちした。
「ねえ、里奈さん。これからも時々、彼を『躾』に来てくれない?あなたが来るたびに、彼は自分がどれほど愚かだったか、身に染みてわかるはずだから」
里奈の目に、共犯者の愉悦が宿る。
かつて奪い合った男を、今は二人で「オモチャ」として共有する。
里奈にとって、健一はもう「愛する対象」ではなく、自分の傷を癒やすための「叩き台」へと変わったのだ。
「……わかったわ。なんなら毎日でも来てやるわよ、健一」
里奈が去った後、健一は真っ白な顔で動かなくなっていた。
外には里奈という「狂犬」が徘徊し、中には自分を支配する「悪魔」が微笑んでいる。
「ねえ、健一さん。これでわかったかしら?」
私は彼の顎をクイと持ち上げ、その虚ろな瞳を覗き込んだ。
「あなたはもう、どこへも逃げられない。死ぬまでこの檻の中で、私とナオミさんと里奈さんに怯えて暮らすのよ」
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#大人ロマンス
#サレ妻