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「はあ~あの顔、すっごく嬉しそうだった。たまんない」
味を占めてしまった。
リースが赤面するものだから。赤面しても、顔を見せるようなタイプじゃなかったし、私がそんなの解釈違いだ! って見なかったところもあったけれど、リースの赤面を見て、グッと心がわしづかまれたような気がしたのだ。
ああ、良かった。
そして、新たに出来た、未来の約束。人との予定とか、テストの予定は億劫だったけど、リースとの予定は楽しみだなって思った。現金な奴だって思われたら、まあ、その通りなんだけど。でも、恋人になって初めてのデートと言うことで浮かれていた。
私が、こんな調子で、すぐに良くなって聖女殿の中を歩くものだから、使用人達は吃驚して、腰を抜かしそうだった。
中でも、リュシオル、グランツ、アルバなんかは、飛んできて、大丈夫なのかと、私の身体を揺さぶった。それはもう、ぐあんぐあんと毒に侵されたときよりも酷いくらいの目間がして大変だった。
ブライトは、用事があってすぐに戻ってしまったみたいでいなかったけど……まあ、あの人は忙しいし、至急飛んできてくれただけのスケットって言う感じだったし。そりゃ、感謝してるし、直接会ってお礼は言いたいけれど。
そんな感じで、心配に心配されて、本当に愛されている、好きって思っていてくれるんだなと、じんわり心が温かくなった。それと同時に、あのエトワールの視線を感じてしまって、とても恐ろしかったけれど。
リースも用事があると、戻ってしまい、もう少し一緒にいたかったな、何て我儘を言ってしまいそうになった。けれど、彼も彼でやることがあると、私は言葉を飲み込んだ。彼の足枷にはなりたくないから。
そう思いながら、私は、自分を治癒してくれていたはずのトワイライトがいないことに気がつき、皆に何処に行ったのかと尋ねてみた。皆は同じように首を横に振ったが、グランツだけは、神殿の方にいったのではないかと、有益な情報をくれたのだ。
さすがグランツ、と彼の頭を撫でて神殿に向かおうとすれば、グランツに引き止められてしまう。
「どうしたの?」
「俺もついていきましょうか」
「ううん、近いし。さすがに、神殿を壊せるほどの魔力を持った人なんていないでしょう。それに、闇魔法なら尚更、魔力が弱まるわけだし」
思ったけど、神殿が光魔法の力を強めるのなら、闇魔法を強める館とかそういうのがあるのだろうかと私は思った。もしあるとするなら、見てみたいところだけど、私達の力が弱まるのは簡便だと思う。
私は、グランツに付き添いは大丈夫だからといって、神殿に向かった。本当は連れてきても良かったんだけど、グランツの前で、妹にありがとうって伝えるのは何だか恥ずかしかったのだ。恥ずかしがることなんて一つもないのに。
(私の可愛い妹が、私の為に全力尽くしてくれたんだもん。一杯ありがとうって伝えるんだ!)
何だか、子供に戻ったような気分で、私はスキップをしながら、神殿へと向かう。私は、トワイライトのことが大好きだし、トワイライトも私の事が大好きで相思相愛。最高の姉妹だと思っている。
彼女の出生の秘密を知って、そりゃ、驚いたけれど、でも、運命のイタズラって、最高だなって思った。彼女が、前世の私の妹で、両親のことはトラウマだし、許したいとは思えないけれど、理由も分かってスッキリした部分もあって。
トワイライトには感謝している。
(未だに信じられないけど、トワイライトは全て覚えていて、全て見てたってことでいいんだよね)
どういう原理で、本当にどうなっているか分からないけれど、トワイライトは私の両親のことも、両親がどう私に当たっていたかってことも全て知っていた。そして、私の前世での全てを見てきたと。
それを思い出したのはいつかわからないけれど、まあ多分きっと混沌に飲まれた時、なんだろうけど、それで全て思い出して、私の為に動くって決めたあの子は、凄いと思う。
彼女も彼女で、一人で背負おうとしていた。私と同じ。姉妹だから。
そんなことを思いつつ、神殿のどこら辺にいるのだろうかと、私は探した。女神の庭園なら、安全だし、あそこに入ってゆっくり話せたらな、何て思いながら歩いていれば、何処からか、人の話し声が聞こえてきたのだ。
「禁忌の魔法です。それは、死者蘇生の魔法と同じく大きな代償を支払わないといけないんですよ。そんなことしたら……此の世界が、崩壊する可能性だってあるのに!」
「そんなの、知ったことじゃないわよ。私は、愛されたい。ただ、それだけのために生きるの。誰かが作った、こんな巫山戯た世界で、悪者扱いされるのは嫌。だから私は――偽物のエトワール・ヴィアラッテアを殺して、世界を巻き戻す」
「え?」
いまのって、私の声? と一瞬からだが反応した。でも、私は口を開いていないし、そのトゲトゲしい言い方というか、口調は、私がよく知っているものだった。
声は一緒だけれど、中身が明らかに違う。
(もしかして、エトワール・ヴィアラッテア!?)
もしそうだったら、トワイライトが危ないと、私は方向を変え、走り出す。だって、聞えたのは、エトワールの声だけじゃなくて、トワイライトもで。
(何でここにいるの!?)
元が聖女だし、神殿に行けない理由はないのだが、ここが安全だと思い込んでいたために、少しショックだった。私達に安息の場所はないと、そう言われているようで。
「トワイライト!」
「お、お姉様!?」
キュッとかーぶを曲がって見れば、そこにはトワイライトがいた。彼女は驚いた様子で私を見ていて、何故ここにいるのか、とその顔が物語っている。そんな、トワイライトを見ながら、私は、辺りを見渡した。だが、そこには、既にエトワールはいなかった。
一足遅かったかと。
まあ、つかえられたところで、何かがかわるわけじゃないし、どうしようもないんだけど。病み上がりの身体で何が出来るって言うわけでもないし。
けれど、トワイライトが無事で、それが何よりも良かったと、私は胸をなで下ろした。トワイライトは、おどおどした様子で私に近づいてくると、お姉様、といつも通りに私の名前を呼ぶ。
「トワイライト、大丈夫?怪我は?何かされた?」
「お、落ち着いて下さい、お姉様、いっている意味が分かりません」
私が、トワイライトの両肩に手を置いて、マシンガントークをすれば、トワイライトは一旦落ち着いてくれと、話すから、と私に言ってきた。見た感じ、怪我は無いようで安心したが、まだ、不安は拭いきれない。
私が毒の魔法を喰らったように、エトワールもそんな魔法が使えたら? 感染しているリスクがある、とか考えちゃって、いてもたってもいられなかった。それが、バレてしまったのか、トワイライトには「私は大丈夫ですから」と、防御魔法を常日頃からかけているという事を教えてくれた。ということは、私があまりに無防備すぎると言うことも、同時に教えられてしまったようで、何だか悲しかった。まあ、それは良いとしても。
「トワイライト、さっきまで、誰かここにいなかった?」
「誰かって?」
「その……私に似た、誰か……とか。私の声が聞えて。ほら、ドッペルゲンガーとか、いるじゃない。あれって、出会ったら、死ぬって言うし……だったら、嫌だなあ、とか」
何を言っているか分からなかった。でも、トワイライトは、エトワールが二人いるなんてこと知らないだろうから、私はバレないように遠回しに言ったのだ。それが良かったのか、悪かったのか、トワイライトは驚いたようなかおをしていた。
「お姉様の、ドッペルゲンガー?」
「うん、だから、その見たのかなあって」
「いえ……見てないです」
「本当?」
眉を下げて言うトワイライト。私を信じてくれって、訴えかけてきているようで、そのあざといような、素なのかも知れないけれど、可愛さにノックアウトされてしまう。ああ、可愛い、私の妹は世界一可愛いと、癒やされながらも、状況を整理する。
(じゃあ、私の聞き間違えだったってこと?でも、そんなことってある?)
幻聴が聞えているんならそれはそれで、また違う問題が発生してくる。けれど、トワイライトを疑いたくもないし。何よりも、妹のいっていることは、姉として信じてあげたいと思ったのだ。他の人のことは、散々疑っておいて、これでいいのかと言われたら、ダメかも知れないけれど。
「本当です。私が、お姉様に嘘をつくと思いますか」
「思わない」
「ですよね!」
と、トワイライトは、私の手を握った。少し震えていて、その震えが何から来ているものなのか分からなかった私は、彼女の手を握り返した。少しでも、安心させてあげたかったから。
トワイライトは、私の手の温もりを感じつつ、目をスッと閉じた。
「温かいです。お姉様……本当に良かった」
「……そうだ、トワイライト。聞いたわ。私の事、助けてくれたんだよね」
「……私は何も出来て意味褪せん。ブライト様みたいに、毒を中和することは出来ませんでしたし。進行を抑えることぐらいしか……」
「それでもだよ。ありがとう。トワイライトのおかげで、今私はこうして生きているんだから」
いいすぎかも知れないけれど、彼女には一杯ありがとうって伝えたかった。
私の言葉を聞いて、トワイライトは、耐えてきたものが決壊したのか、私に抱き付いてきた。それを、真正面から受け止めて、私は彼女の背中をさすってあげる。
「お姉様、無事で良かったです!」
「うん、うん。トワイライト。ありがとう」
暫く抱き合って、彼女が泣き止むのを待っていた。私はその間に、先ほど聞いた言葉を何度も思い出して、復唱した。
(禁忌の魔法……死者蘇生だけじゃなくて……時を戻す魔法も、それに含まれるんだ……)
私はまだ知らないことばかりだな、と思いつつ、その魔法を発動するにはどういった条件が揃わないといけないのか、考える。考えたどころで、私には答えが出せないんだけど。
「お姉様?」
「何?トワイライト」
「何か考え事ですか?」
と、聞かれ、私は少しだけ嘘をつく。彼女の為の嘘なら許されるよね。
「何でもない。大丈夫」