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きなこもち
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#サレ妻
都築七美
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それから数日後。
奈緒は再び一花の病室を訪れていた。
「これ、必要そうなもの適当に買ってきたよ」
ベッド脇の棚へ、タオルや日用品の入った紙袋を置く。
一花は申し訳なさそうに眉を下げた。
「何から何まで本当にありがとう」
「いいの。こういう時くらい頼ってよ」
奈緒は笑ってから、何気ない口調で続けた。
「それに、俊介のことも心配しなくて大丈夫だから」
「俊介?」
自宅が全焼したため、俊介は今、自治体から案内された被災者向けの仮住まいで一人で暮らしていた。
「今、仮住まいで一人なんでしょ? たまにご飯届けたりしてるの」
一花は目を丸くした。
「そんなことまでしてくれてるの?」
「大したことじゃないよ。俊介、放っておいたらろくなもの食べなさそうだし」
高校時代から俊介を知っている奈緒らしい言い方に、一花は少しだけ笑った。
「この前なんて洗濯物そのままになってたから、ついでに畳んできた」
「ごめんね……」
「だから謝らないでって」
奈緒は一花の手へそっと触れた。
「今は自分と悠真くんのことだけ考えて。一花の代わりに、少しくらい手伝わせて」
「……ありがとう、奈緒」
一花は心からそう思った。
自分が何もできない間、俊介のことまで支えてくれる親友がいることが、ありがたかった。
しばらく話したあと、奈緒は「また来るね」と病室を後にした。
奈緒は廊下を歩きながら、ふと足を止めた。
脳裏に浮かんだのは、先ほど見た一花の姿だった。
顔の大部分を覆う包帯。以前の面影を隠すようなその姿が、頭から離れない。
「……かわいそう」
ぽつりと零れた声は、静かな廊下に消えていく。
「せっかくの、可愛い顔が……」
自分でも気づかないうちに、頬がわずかに緩んでいた。
そのことに気づいた瞬間、奈緒ははっとして表情を引き締める。
何事もなかったように前を向き、そのまま廊下を歩き出した。
俊介が暮らす仮住まいには、奈緒が持ってきた夕食の匂いが広がっていた。
テーブルには料理が並び、俊介はその前の椅子に腰掛けたまま、どこか疲れた顔で奈緒の手元を眺めている。
脇には、畳み終えた洗濯物が重ねられていた。
「悪いな。こんなことまでしてもらって」
「いいって。一花には、俊介のことは私に任せてって言っちゃったし」
奈緒はそう言って笑った。
火災以来、俊介は仕事と病院を往復するばかりで、仮住まいには寝に帰るような毎日を送っている。
奈緒も最初は食事を届けるだけだったが、いつの間にか散らかった部屋を片づけたり、溜まった洗濯物を畳んだりするようになっていた。
「高校の時もさ、俊介って放っておくと昼ご飯抜いたりしてたよね」
「そんなことあったっけ」
「あったよ。一花にパン分けてもらってたじゃん」
「……ああ」
懐かしそうに笑った俊介の表情が、すぐに曇った。
奈緒もそれに気づき、それ以上は笑わなかった。
「昔は、こんなことになるなんて思わなかったな」
ぽつりと零れた言葉に、奈緒は俊介の横顔を見つめる。
「……うん」
短い沈黙が落ちた。
俊介は疲れ切ったように俯き、深く息を吐く。
奈緒はしばらくその背中を見つめていたが、やがて静かに立ち上がった。
一歩ずつ距離を詰め、そのまま背後から俊介の身体へ腕を回す。
「俊介……辛いよね」
俊介の身体がわずかに強張った。
それでも奈緒は離れず、背中へ頬を寄せるようにして抱きしめたままでいる。
しばらくして、俊介の手がそっと奈緒の腕に触れた。
奈緒が息を止める。
俊介は何も言わないまま、その腕へ手を添え――ゆっくりと奈緒の方へ向き直った。
奈緒が顔を上げる。
二人の視線が、すぐ近くで重なった。
コメント
1件
いや〜〜〜〜〜〜第13話もエモすぎた😭💕💕 奈緒、親友のためって言いながら俊介の部屋に入り込んで洗濯畳んでご飯作って…からの背後ハグ!? しかも最後の視線が重なるシーン、距離ゼロじゃん…!? これ一花はちゃんと治るのかな…「かわいそう」のあとの微かな笑みがめっちゃ引っかかるんだけどっ!!😳🔥 続きが気になりすぎて今夜眠れそうにないです、七美さん…! 奈緒の優しさの裏側、まだまだ暴かれてない感じがたまらん…!!