「しーちゃん、大丈夫だよ。香さんから見て私と羅依は、あ…藤堂さんは羅依っていうんだけど、仲良しに見えるくらいだから」
しーちゃんを安心させようと慌てて発した言葉は役立つようにも思えないけど、しーちゃんに新たな心配を掛ける訳にはいかない。
「羅依が‘大丈夫だ’って言うから、大丈夫な気もするし。えっと…あとは…あ、家に行くのも初めてでないくらいには知り合いだし…って…羅依、あってる?」
「ん、来たことあるな。あそこでいいか?」
「ソファーとか椅子生活じゃないと無理だから…お世話になります。病人じゃないから出来ることはする。もちろん家賃は払うよ」
「バイトも出来ないのに?と思うが…出来ることはするって聞けたことが嬉しい。才花が生きるって宣言したようで嬉しい。さっきまで水も飲まないで、死にたいのか?というくらいだったのに」
冷たい声で嬉しいと言うから分かりづらいけれど…どうでもいい、と思いながらも私は生きる宣言をしたの?
‘藤堂さんが嬉しいとおっしゃる同じ部分で、私はほんの少しだけ安心しました。ほんの少しですけど…絶望の中でも生きたいという本能が働いた部分と、無意識にでも私を気遣ってくれた部分で出来た言葉でしょうから……100%の才花の気持ちじゃない’
「はい。それでも俺は才花の発した言葉を100%、裏でなく表を受け止めたい。気遣って発していようが、無理して発していようが、嘘であろうが真っ直ぐに受け止めます。その後で彼女が本心をさらけ出せたら…」
「ただの知り合いなのにそこまでします?」
羅依の言葉を遮って、ずっと座っていた香さんが立ち上がり、ベッドサイドで羅依と向かい合った。
「しーママ、知り合いって男の人だよ?いいの?」
「人が死にたいほどのどん底にいるときに、あまりに下品で低俗な質問…くだらねぇな。それとも、男と女が揃えばその‘いいの?’というコトしかアンタの頭の中にはないのかもな」
「ひどいっ…!」
「アンタが先に言ったんだろうが。自分の言葉に責任持てないお子ちゃまか?それならうちのクラブやなんかは出禁にしてやるよ」
クラブ経営者なのか…他にもありそうな口ぶりだな。
‘才花’
「うん、しーちゃん」
‘才花の予定を教えて’
「うん。この病院は退院して、羅依のマンションに行って、スポーツ診療科で診てもらってから先生に従って手術を受ける…さっきスクールから連絡があって………」
‘もしもし?才花?’
「……イギリス…世界大会辞退した…から…その後は……分からない」
‘十分よ、才花。香ちゃん、才花が自分で決めた予定には口出ししなくても大丈夫よ。心配ないわ’
「ふふっ…しーちゃん、元気出てきたね」
‘才花の予定を聞くと反射的に元気が出るのは、長年の習慣なのよね’
「うん、そうだね。また連絡は入れるけど、しーちゃんは洋輔さんとゆっくりデートしていてね」
コメント
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ウザいね…香サン しーちゃんと才花ちゃんに羅依が話してるのに、赤の他人のあなたが割り込んでくるなんて( ¯ ⌳¯ )チッそれもこんな時に低俗な質問よ(҂ ー̀дー́ )イラッもう出禁!出禁🪩 でも、才花ちゃんが手術を受けるとほんの少しでも前を向いてくれたのならば、その後のことはわからなくても、しーちゃん今はそれでいいよね!羅依もそう思うよね!私もそう思う!