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『消えた歌、響く声』

第9話 - 第9話夜の微かな揺らぎ

2025年04月30日

#音楽

#小説

#青春

セバスチャン

その日の仕事は特に過酷だった。クライアントからの細かい修正依頼が重なり、彼は深夜までタブレットに向かっていた。

ようやく作業を終えたのは、時計が23時を回った頃。疲れ果てた身体をソファに沈め、冷えた炭酸水を手に持つ。

いつものようにアニメを再生しようとしたが、なぜか手が止まった。ふと、スマホの「StarLive」アイコンが目に入った。

「…どうせ明日消すんだ。最後に中身見てみるか」

気の迷いだった。彼自身、なぜそんな行動に出たのか分からない。

人を避けて生きてきた彼にとって、他人と繋がるツールに手を伸ばすのは異例だった。

だが、長年の孤独と疲れが、彼の心に小さな隙を作っていたのかもしれない。

アプリを開くと、アカウント作成を促す画面が表示された。

「ハンドルネームを入力してください」

とある。彼は一瞬迷ったが、昔好きだったアニメのキャラクターを思い出して適当に入力し、登録を済ませた。

カラフルな配信画面が次々と表示される。

メイクの濃い配信者、ゲーム実況の若者、奇抜なコスプレで踊る人々。

彼は予想通りだと溜息をついた。

「やっぱり、偽物の世界だ。こんなの…」

指が「アンインストール」ボタンに伸びかけたその瞬間、画面に新しい配信が表示された。

「ミィコ」と名乗る配信者のサムネイル。シンプルな服を着た少女が、控えめな笑顔でギターを持っている。

なぜか、その笑顔に目を奪われた。

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『消えた歌、響く声』

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セバスチャン

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