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こんにちは!カエデです!
新しい街、シーガが見えてテンションマックスです!
略してテンクス・カエデ!!
*
「わぁ……! あれがシーガの街!?」
街道の向こうに見えた街並みに、
私は思わず駆け出していました。
美味しいご飯!ふかふかのベッド!
そんな期待に胸を膨らませていた、
その時!視界にモンスターが!
「あ、モンスターだ。ウィルソンお願い!」
ピュン──カィィィィィン!!
唐突な「硬い音」が、私のワクワクを遮りました。
火花が散ると同時に私の手元から放たれた良い形の石、
「ウィルソン」が、無残にも砕け散った!
「あれ!? ウィルソンが……効かない!?」
私の目の前に立ちはだかったのは、
全身が鏡のように磨き上げられた巨大なゴーレム。
その威圧感は、今までのモンスターとは桁違いでした。
「ちょ!?カエデ!?
また私が気付かないとこで戦闘してる!?」
ツバキが追いつき、私の前に飛び出しました。
「な、何だこいつ……? ピカピカしてて趣味悪いな……」
ツバキが眉をひそめます。
すると、ローザさんが目を輝かせて叫びました。
「おお! これは素晴らしい!
手配書Sランクのネームドモンスター、
『反射する絶望(リフレクション・オブ・デス)』ですよ!」
「ねーむど……?」
私は首を傾げた。
「はい! 国が討伐隊を組む、Sレベルの災害指定個体です!
物理無効、魔法反射の初見殺しで有名なネームドですよ!」
「なんで嬉しそうなの!?」
ツバキがツッコみます。
「だって、聖女様の伝説の1ページに相応しい相手ですから!」
ローザさんはペンを構えてスタンバイ完了です。
「はぁ……またこれか……。
まぁ良い……ここは我に任せよ……」
ツバキは左手で左目を覆い、不敵に笑いました。
あ!今、我って言った。
これは中二モード。自信満々な時のツバキ。
でもサクラいわく、「これはダメな時のフラグ」らしいです。
「ククク……物理が効かぬなら、
聖なる光で浄化するのみ……。
我が左眼に宿りし深淵の闇の光よ……!」
ツバキがカッと目を見開く。
「──ホーリービームッ!!」
ビーーーーーー♡
ツバキの左目から、極太の光線が放たれた。
ビームの音が可愛いな。あと、闇の光ってなに?
キィィィィィン!!
しかし、ビームは伝説の鏡面装甲に当たり、
四方八方へ拡散してしまった。
「なっ……!? 弾かれた!?」
ツバキが驚愕する。
すると──
「聖女様の神聖な光を弾くとは……なんと無礼な鉄屑でしょう!」
ローザさんが鬼の形相で飛び出し、高くジャンプ──!
その手には、分厚くて重そうな『カメリア聖典(ハードカバー特装版)』が握られている。
「教え(ページ)の重みを知りなさいッ!!(物理)」
ドゴォッ!!
ローザさんが聖典の角(カド)で、
ゴーレムの“こめかみ”をフルスイングした。
「信仰するモノを凶器にするのどうなの?」
ツバキが呟く。
「……」
ゴーレムはノーダメージ。
むしろ聖典の表紙がちょっと凹んだ。
「硬いですね……。
やはり物理では、信仰心が届きませんか」
ローザさんは何事もなかったかのように戻ってきた。
「当たり前だろ! 本で殴るな! バチ当たるぞ!」
ツバキが怒鳴った。
「聖女様! 手加減は無用です! 本気でお願いします!」
「くっ……仕方ない!
ならば……右眼も解放(オープン)するしかあるまい……!
刮目せよ! 双眸の裁きを!」
ツバキが両目をカッと見開いた。
「──ディバイン・ホーリービームッ!!」
ビビーーーーーー♡
倍以上の光量が噴出した。
あたり一面が真っ白に染まるホワイトアウト。
「め、目が! 自分の光で前が見えない!!」
ツバキがよろめきながら叫んだ。
だけど、すぐに聖女(中二)の魂が言い訳を紡ぎ出した。
「くっ……『光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる』……!
(訳:眩しすぎて足元も見えねぇ!)」
まだツバキは折れてない。頑張れ。
でも数秒後には──
「ローザぁ!? 敵どこ!? 私、いま視界ゼロぉおおお!!」
ツバキが慌ててる。一人称が「私」に戻った。
これはテンパリ・ツバキ。
はい、おかえり。いつものツバキ。
「はい! 聖女様! お任せを!」
ローザさんが即座に背後に回った。
そして、ツバキの長いツインテールを両手でガシッと掴み──
「ちょ、髪!? ローザなにして──」
ローザさんがツインテールを操縦桿のように引く。
グリンッ!!
ツバキの首が強制的に動く。
「私の毛根! 毛根が!!」
ツバキが悲鳴を上げる。
「あばっ!?」
変な声も出た。
「ツバキ? 女の子がそんな声出しちゃダメだよ?」
私はツバキに指摘。
「今、そんなことはどうでも──」
「仰角プラス2度!」
グイッ!
「あだだだだだ!! ローザぁ!? まだ引っ張るの!?」
「右へ3度!」
グイッ!
「いだだだ!」
「微調整! プラス0.5度!」
「0.5って! そんな細かく動かせるかー!!」
「ターゲット・ロック! 撃てーッ!」
ローザさんが叫ぶ。
ツバキは涙目で、それでも震える声でキメ台詞を絞り出した。
「……こ、これが……神の……導きだ……ッ!!(ヤケクソ)」
私はその光景を、少し離れた場所から眺めていた。
「わぁ……綺麗……」
私はうっとりと呟いた。
「ツバキって、照明として便利だね!」
手をパチパチ。
──しかし。
キィィィィィン!
その「照明器具」の全力照射も、
やはりネームドの装甲には通じない。
「どう?カエデ!!
効いてる?効いてない?
見えないから教えて!?」
ツバキが叫んだが、私の姿はそこになかった。
「……あれ?カエデ?」
光の中で何も見えないツバキが首をかしげる。
私はもう動いていた。
ツバキとローザさんが派手にやっている隙に。
ゴーレムの意識が「眩しい光」に向いている隙に。
(アルティメットスキル発動──《スピリットコール:草》!!)
私は猛烈な勢いで足元の雑草をむしり取り始めた。
「(ふんっ! ふんっ!)」
雑草を自分の服にペタペタと貼り付けていく。
頭にも。腕にも。足にも。背中にも。
「(もっと! もっと草を!)」
私は夢中で草をむしった。
ツバキの「あだだだ!」という悲鳴が聞こえるけど、
今は草集めに集中。
気付けば、私は完全に草の塊になっていた。
これならゴーレムにも気付かれない。
一瞬にして、私は全身緑色の「歩く茂み」と化した。
そして、音もなく地面を這うように移動する。
風のように、影のように。
ゴーレムは目の前の「眩しい光」に集中していて、
背後の「動く草むら」には気付かない。
鏡面装甲は無敵。
でも首の裏の継ぎ目だけ、剥き出しだった。
私は新しいウィルソンを袋から取り出す。
「(……ウィルソン。いくよ)」
私はウィルソンを固く握りしめ、大きく振りかぶった。
全力で──
ドゴォッ!!
鈍い音が森に響いた。
私のウィルソンが、ゴーレムの後頭部の継ぎ目に
完璧なクリティカルヒットを叩き込んだ。
「グ……ガ……ッ……」
伝説のネームドは一瞬で動きを止め、
ゆっくりと前のめりに倒れた。
ズズゥゥゥン……!
巨大な鉄の塊が沈黙する。
再起不能(リタイア)だ。
静寂が戻った森の中で、ツバキのビームも止まった。
私は草を払い落としながら、振り返った。
「やったよ!」
満面の笑みでピースサイン。
顔にもちょっと草がついている。
「……」
ツバキが涙目で充血している。髪もボサボサだ。
そして、私を見て震えている。
「……」
ローザさんはペンを走らせている。
「えっ? 二人ともどうしたの?」
私が首を傾げる。
「なにしたの!」
ツバキが震える声で言った。
「カエデ様は『草むしり』して『暗殺』しました。」
ローザさんが淡々と。
「何を言ってる!?
Sランクのネームドだぞ!?
国が討伐隊を組むレベルの怪物を……
『草むしり』して『暗殺』!?」
パニックのツバキ。
「だって、正面は怖いし」
私はポツリ。
「カエデ?噛み合わない!?
コミュニケーションを取りたいの私!」
ツバキが頭を抱える。
その隣で、ローザさんが「いただきました」という顔で手帳を閉じた。
【聖女の御言葉】
「私の毛根! 毛根が!!」
【注釈】
⇒ 聖女様は、激戦のさなかでさえも、
「毛根」という生命の萌芽を気遣われた。
髪を慈しむその御心に、
世の薄毛に悩む男性たちが歓喜の涙を流した。
「痛かっただけだよ!
あと勝手に私をハゲの守護神にするな!」
ツバキのツッコミが虚しく響いた。
*
──こうして私たちは、難敵を撃退した。
私の手の中で、
役目を終えたウィルソンの破片がサラサラと崩れ落ちた。
「ありがとう、ウィルソン……何世だっけ?
まぁいいや。君のことは忘れないよ」
私はすぐに足元の手頃な石を拾った。
「こんにちは! 新しいウィルソン!」
「だから切り替え早えよ!!
……はぁ、頭皮が痛い……帰りたい……」
ツバキががっくりと肩を落とした。
そのボサボサになり、
少し左右の高さがズレたツインテールが、
今日の激戦を物語っていた。
(つづく)
──天の声補足──
伝説のネームド『反射する絶望』討伐を確認。
通常なら【大量の経験値】と【世界初の討伐称号】が付与される。
……が、審議の結果【無効】とする。
理由は「戦い方が人道的にアウト」だからである。
味方をフラッシュバン(目くらまし)として利用し、
背後から鈍器フルスイング。
これは勇者ではなくヒットマンの所業である。
ちびっ子には見せられない。
よってレベルは1のままである。ドン引きである。
◇◇◇
──今週のカイ様語録──
『光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる』
(つまり、自分が眩しいときは足元に気をつけろ)
解説:
TVアニメ『堕光のカイ』第1112話より。
必殺技の光が眩しすぎて、段差につまずいて転んだ時のセリフ。
それでも「計算通りだ」と言い張った。
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