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その後は、一気につらい登山道になった。
はしごのような木の棚のようなところを、手も使って一気に登ったり。
急すぎて、ロープが張ってあるところを、じりじりと登ったり。
それでも彩香さんも、そんなに無茶苦茶疲れた感じには見えない。
先週の塔ノ岳もそうだったけれど、山を歩くペースが、身体でわかってきた感じだ。
体力はそれほど向上していないようなのに、何故か歩ける。
一気に登ったところで一休み。
さらにちょっとだけ高くなった、通称『偽ピーク』なんて感じの所で休んだ後。
今は、もうすぐ頂上という山の稜線を歩いている。
先生がいつの間にか手提げ袋を取り出し、枯れ枝とか、そんなものを探しては入れていた。
「それは何ですか」
「あとのお楽しみですよ」
何だろう。
そんな事を思いつつ歩いていると、テーブルとケルン? のある、ちょっと広い広場に出た。
「ここが畦ヶ丸の山頂です。あまり見晴らしは良くないですけれどね」
それでも葉が落ちた木々の間から、山々の列が遠くに伸びていくのが見える。
静かな山中、という感じのいい場所だ。
取り敢えず、畦ヶ丸山頂1292.6mと書かれた柱の前で、皆で記念撮影。
「展望がさっと開けるこの前の山もいいですけれど、こういう静かな自然の中という感じもいいですね。何かずっとここでのんびりしたい感じです」
その気持ちもよくわかる。
まあ、急登だのはしごだの、色々あって疲れたせいもあるけれど。
「でもこの先に、とっておきの山小屋があるんですよ。もうほんのちょっとのところですから。そこへ荷物を置いてから、色々ゆっくりしましょう」
そう先生が言うので、写真を撮っただけで歩き始める。
「山小屋バッチはあるかな」
「ここは無人小屋だから、ありません」
なんて言いながら歩いていって。
山頂からほんの少しだけ下りたところに、小ぶりだけれど、しっかりした感じの小屋が建っていた。
「ここが本日の目標、畦ヶ丸避難小屋です。この時間ですから、先客さんはいないと思いますけれど、いたら、ちゃんと挨拶してくださいね」
そう言って、先生を先頭に中に入る。
中は無人、そして思ったよりも綺麗だ。
板の間と、テーブルがある土間と、それから、あれは何だろう。
三角の換気口みたいなものがついている、金属製の容器がある。
「とりあえず、ザックをここに下ろして、ここの箒で、さっと掃除してください」
ホコリを掃いて、そして板の間に伸びる。
「ちかれたのだー!」
「確かに疲れましたね」
でも、先生は何故か板の間にいない。
見ると、あの金属製の容器みたいなものの蓋を開けて、何か見ている。
「大丈夫そうですね」
「それは何ですか」
彩香さんが尋ねる。
「薪ストーブですよ。これがあると、雰囲気も温かさも、全然違うんです」
先生はそう言って、手提げ袋から、枯れ枝とか、木の皮とか、葉っぱとかを出して中に入れた。
「これで、点いてくれますかね」