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程なくして、救急車が到着した。
しょっぴーと舘さんに先導されて救急隊の人たちが駆け付けてくれて、佐久間くんを担架に乗せる。
救急車に同乗して病院まで付き添ったのは、最初から状況を見ていた俺と、症状を冷静に説明出来そうなあべちゃん。
状況は分かるけれど、冷静に医師への説明が出来るかと聞かれたら……自信はなかった。
救急車の中、佐久間くんは眠そうにしていたけれど……出来るだけ意識を保ったままで居させるようにと言われ、俺とあべちゃんとで必死に話しかけて。
ようやく病院へ到着するなり、佐久間くんは検査室へ運ばれていった。
意識はあるし吐き気も今のところはないようなので恐らく大丈夫だろうという医師の見立てだったけれど、念の為に頭部CTと全身(主に腰)を強かに打ち付けた為MRIも撮るらしい。
俺たちはといえば、佐久間くんの検査が終わるのを通された個室で待っている状況だ。
そんな中、あべちゃんのところへ岩本くんからの連絡が入った。
佐久間くんは何者かに突き落とされたかもしれない
俺が一瞬感じた他人の気配と
身軽な佐久間くんが突然なんの前触れもなく、ひとりで階段を転がり落ちるはずがないというメンバー全員の見解と
事件性がないとは言いきれず、岩本くんとふっかさんとで相談して警察に連絡をしたそうだ。
ただ、佐久間くん自身の意識が朦朧としていた為に話が聞けず、本当に突き落とされたのかどうかは分からない。
明日、佐久間くんの容態を見ながら事情聴取に来るそうだ。
「……絶対、佐久間くんはひとりで落ちたりしないよ」
「うん。俺もそう思う」
「しかもさ……佐久間くんが落ちる直前まで、俺と話してたんだ。なのに、いきなり足を踏み外したりなんてしない」
「そうだね。意外とそそっかしいとこもあるけど……佐久間なら簡単に受け身も取れるよ。なのに、脳震盪起こすような落ち方をしたってことは……」
「急過ぎて、咄嗟に受け身も取れなかった」
あべちゃんと顔を見合わせて、こくりと頷いた。
考えれば考えるほど、おかしい。
受け身も取れず仰向けに転がり、頭を押さえて呻く佐久間くん。
あの姿を思い出して、また血の気が引いていく。
未だ検査中だけれど
とにかく、生きていてくれて良かった。
もし彼を失っていたら
俺はきっと、彼を突き落とした犯人を許さない
絶対に見つけ出して
必ず、同じ目に遭わせてやる───
「……めめ」
あべちゃんに手首を掴まれて、ハッと顔を上げる。
苦笑を浮かべたあべちゃんが、緩く首を横に振った。
「やめな。……血、出てる」
「っ……」
無意識に強く握り締めた拳。
爪が手のひらに食い込み、血が滲んでいた。
「……ごめん」
「いや……めめの気持ち、分かるから。俺だって、佐久間が本当に突き落とされたんだとしたら……犯人を許せないから」
「うん……」
「他のメンバーだってそうだよ。局に残ってるみんなも今、手分けして怪しい奴が居なかったか調べて回ってるって」
「……みんなが?」
「そうだよ。みんな、佐久間が突き落とされたんだって疑ってない。……みんなそうなんだから、まあ……めめが一番動揺するのは当たり前だよね」
「…………へ?」
なんで、
尋ねるより先に、あべちゃんがクスクスと笑った。
「だってめめ、佐久間のこと好きだろ?恋愛対象としてさ」
「ぐっ……!?」
ゲホゲホ、と思わず噎せてしまう。
なんでそんな、
一度も、誰にも言ったことなんてなかったのに。
「なんっ……ゲホッ、なんでっ……ゴホッ」
「あはは。やっぱり、バレてないと思ってた?」
「ぅ……だ、だってさ、俺、今まで誰にも言ってなくて……」
「でも、分かるよ。めめが佐久間を見る時の目、なんていうかさ……恋してる人のそれだったから」
「……っ、ダダ漏れだったって、こと?」
「だね。多分、気付いてないのは佐久間だけじゃない?」
「…………」
みんなにバレているのに、なんなら一番気付いて欲しい人に気付かれてないなんて。
「……佐久間くん、もしかして……鈍い?」
「もしかしなくても鈍いね。……佐久間はさ、色んな人に愛情を振り撒いてるくせに、自分に向けられる恋愛的な好意にはなんでか気付かないんだよ。仲間としての好意はきちんと受け取れるのにね」
囁くように言うあべちゃんの表情は、どことなく寂しそうで。
俺は手首を掴んだままの彼の手を、軽く叩いた。
「……あべちゃんも、俺と同じ気持ち……?」
「……昔ね。佐久間の傍に居るとさ、みんな一度はあいつを好きになるんだよ」
「今は───」
「仲間として、好きだよ。みんなもそうだと思う。……めめだけだよ、諦めずずっと佐久間を想ってるのなんて」
「ずっと」
「ずっと、でしょ?」
なんていうか
こんな時なのに、恥ずかしいやら照れくさいやらで……俺は頭を抱えた。
長い間、片想いしていることまでバレていたなんて。
「まあ、でも……鈍いのはお互い様だと思うけど」
「……え?」
その時、部屋の扉が静かに開かれた。
カラカラと音を立て、ストレッチャーに寝かされた佐久間くんが運び込まれる。
俺とあべちゃんは揃って立ち上がり、佐久間くんの方へ近付いた。
少しだけ状態が良くなったのか、彼の顔色はそれほど悪くはない。
でも……瞳は固く閉じられている。
「佐久間くん、」
「先生、佐久間は……」
最後に部屋へ入ってきた医師が、笑みを浮かべる。
「大丈夫、疲労で眠っているだけです。頭部CTでもMRIでも重篤な症状は見られませんでした。ただ、頭を強く打ったことに違いはありませんから。2、3日は安静にしてもらって、2週間程度は様子を見ながら、少しずつ仕事に復帰するようにしてください」
「っ……」
良かった……
良かった、ほんとに……!
脱力して、その場にへたり込みそうになる。
そんな俺を、あべちゃんが腕を掴んで支えてくれた。
「……検査中、ご本人から少しだけ階段を落ちた時の状況を聞いたんですが」
「何か、言ってましたか?」
「……誰かに強く、肩を押された……と」
「「……!!」」
俺とあべちゃんは息を飲み、顔を見合せた。
やっぱりそうだった。
佐久間くんは誰かに肩を押されて、階段から落とされた。
湧き上がる怒りに拳を強く握るのを、あべちゃんがまたやんわり止める。
「先生、このことは……」
「ご心配なく。守秘義務がありますので。それに……こういうことは、一度や二度ではありませんから」
「良くあること、ということですか?」
「…………」
医師は微笑んだまま、その問いには答えない。
代わりに、あべちゃんの肩をポンポンと叩いた。
「明日まで入院してもらいます。本来付き添いはご家族限定ですが、事情が事情なのでこのまま付き添っていただいて構いません」
「……はい。ありがとうございます」
3人の看護師が佐久間くんをストレッチャーからベッドへ移し、医師と共に部屋を出ていく。
それを見送ると、あべちゃんがパイプ椅子を2つ、ベッドの傍らまで引いてきた。
「めめ、座りな」
「ん……」
促されるまま、糸が切れたように椅子に座り込む。
あべちゃんもその隣へ座って、深いため息を吐き出した。
「……とりあえず、無事で良かった」
「うん……」
「多分明日、警察の人が来ると思う」
「……うん」
「佐久間がどれくらい覚えてるかにもよるけど……少しでも手がかりがあれば、すぐ犯人は捕まるよ」
「…………うん」
「問題は、犯人の動機だよね。……なんで佐久間を、突き落としたのか」
「……視線」
「ん?」
「最近、視線を感じるって……言ったの、覚えてる?」
「ああ……なんか居心地悪いって言ってたよね」
「うん。……佐久間くんも、同じような視線を感じるって、言ってたんだ」
「……佐久間も?」
あの時、大丈夫だと笑う佐久間くんに流されるまま、みんなへ相談はしなかった。
あの時すぐに、みんなに言っていれば。
佐久間くんをひとりにしなければ。
こんなことにはならなかったかもしれない。
殺意すら感じるんだと、言っていたのに。
(大丈夫なんかじゃ、なかったじゃないか)
すやすや可愛い寝顔で眠っている佐久間くんの手を、そっと握る。
あべちゃんは小さく笑って、俺の背中をトントンと叩いた。
「後悔先に立たずって言うじゃん?」
「……うん」
「とにかく犯人が捕まるまでは、みんなで護ろうよ。佐久間も……もちろん、めめのこともさ」
「うん……ありがとう」
トン、と少し強めに俺の背中を叩いたあべちゃんが、スマホを手に立ち上がる。
「とりあえず、照に報告してくる。みんなやきもきして待ってるだろうから」
「うん」
「見て、めめ」
ぼそ、と俺の耳元で呟くあべちゃん。
その視線の先を辿ってみる。
「さっきから瞼プルプルしてんの。多分、起きるタイミング見計らってると思う」
「!」
良く見てみると、たしかに。
瞼と、長い睫毛がプルプル震えていた。
「佐久間くん……」
「しばらく部屋の前に居るから。……何かあったら呼んで」
「……うん」
2人で話せ
と、そういうことだろう。
ヒラヒラ手を振って、あべちゃんが部屋を後にする。
パタン、とドアが閉まると、佐久間くんの瞼が更にプルプルし始めた。
「……佐久間くん、寝たフリはもういいから」
「っ……ぶふっ」
目を閉じたまま、佐久間くんが吹き出す。
咎めるように握った手を更に強く握りしめると、『いててて』とか言いながら彼の目がこちらに向けられた。
「……れん」
「おはよ、佐久間くん。気分はどう?気持ち悪いとかない?」
「ん、大丈夫。頭も腰も、今はズキズキしないし」
「点滴入ってるからね。多分痛み止めじゃないかな」
「そっかぁ…………あ!収録は……?」
「今日は中止。振替日は岩本くんとふっかさんが調整してくれるって」
「あー……だよなぁ……申し訳ない……」
「……何言ってんの。佐久間くんのせいじゃないでしょ」
「や、だってさ……俺が階段落ちしなきゃ、こんなことには……」
「だから。それは佐久間くんのせいじゃないから」
きっぱりと言って、握った佐久間くんの手に額を押し当てる。
彼は恐る恐るといった感じで、その手を握り返してくれた。
「良かった。……無事で、良かった」
「うん。……心配かけて、ごめんな?」
「それも、佐久間くんが悪いんじゃないから」
そう返しながら、顔を上げる。
じっとその顔を見つめると、大きな目がぱちりと瞬いた。
「……肩、押されたんだね?」
「う、ん……押された、のか……蹴られたのかは、分かんないけど」
「誰か、後ろに居るって気づかなかった?」
「うーん……蓮とおしゃべりすんのに、夢中になってたかんね。待っててって言った直後に、一瞬気配感じて…………気付いたら、踊り場まで落ちてた」
「……そっか」
今のところ、手がかりらしい手がかりはない。
でも絶対、このままにはしない。
「佐久間くん」
「ん?」
「……また何かあるかもしれないし。でも今度は、絶対俺が護るから」
「!」
ぼわ、と佐久間くんの頬が紅くなる。
「お、おま…………かっけぇなぁ……」
「ふはっ……でしょ?」
こんなこと言うの、佐久間くん限定だけどね
そんなことを思いながら、俺は彼の小さな手をギュッと握り直した。
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無事でした(っ’ヮ’c)
そしてみんなに筒抜けのダダ漏れめめちゃんです^^
コメント
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🖤の感情ダダ漏れは通常営業です、 だけど🩷を突き落とした犯人は身の程知らず、🖤💛💜❤️💙はある程度キレたらヤバそうだって想像出来るけど💚は精神攻撃でネチネチ攻撃しそうで守られてる🩷🧡🤍の3人で抱き合いながらプルプルしてそう🤣 でも🖤はちゃんと🩷を口説き落として🖤の腕の中に保護して下さい🙇
第2話読了!佐久間くんが無事で本当に良かった…😭💕 めめの恋心があべちゃんにバレるシーン、めっちゃキュンとしたよ!「ダダ漏れだった」ってオチも可愛すぎるし、最後の「俺が護る」宣言はかっこよすぎて悶えた…!次回、犯人の謎も気になるけど、めめと佐久間くんの関係もどうなるんだろう!楽しみすぎるよ〜!