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「とりあえず、一晩は様子見の為に入院。明日は体調次第になるけど帰っていいって」
「そっか……なんかもー、マジで申し訳ない……俺がもうちょい気を付けてたら、受け身くらいは取れてたはずなのに……」
「何度も言うけど、佐久間くんが悪いんじゃない。後ろから突き落とされるなんて、普通は誰も考えないよ」
「そうかもしんないけどさぁ……はー、しくったなー……」
心の底から悔しそうに言って、佐久間くんが大きなため息を吐き出す。
繋いだままでいた手をにぎにぎするのは、無意識だろうか。
なんか、小さな子供みたいで可愛い。
ぎゅ、と軽く握り返すと、『ふぉわっ!?』と面白い声を上げる佐久間くん。
「なに、その声」
「や、やー……あの、手…………ごめん、」
「……なんで謝るの。俺が勝手に繋いでただけなのに」
それでもって、まだ離したくないと思っている。
気持ちは伝えられないなんて思っているくせに、佐久間くんが無事で(……いや。脳震盪は無事とは言わないんだけどね)いてくれたことが嬉しくて、好きが溢れ出して止められなくなっていた。
ずっと、こうしていたい。
ずっとずっと、佐久間くんに触れていたい。
ごめん、と言いながらも、佐久間くんからは離さない。
ちょっとだけ調子に乗って指を絡めるようにすると、彼が小さく吹き出した。
「にゃあに、甘えてんの?」
「んー……そうかも。やっぱさ、元気で可愛い先輩がベッドに横になってると……不安になるじゃん」
「かわいいって言ったぁ」
何年か前にやったやり取りに、今度は2人で吹き出す。
と、佐久間くんが『いてて』と呟き腰を押さえた。
「っ、佐久間くん、大丈夫?」
「ん、ふは、大丈夫、大丈夫!笑ったら腰に響いただけ!」
「だけ、じゃないんだよ、もう……」
深くため息を吐き出して、佐久間くんの腰をそっと擦る。
「打ったのはこの辺?」
「多分……?そこ、一番痛いとこ」
「完全復活には2、3週間かかるって。その間はなるべく安静にね」
「マジかぁ……歌リハは出ていーのかな?」
「明日お医者さんに聞いてみるといいよ」
「だなー。……はー……でも、どうなんのかなぁ、これから」
「…………」
それはね
犯人を見つけて制裁を加える
その一択なんだけど。
今のところ心当たりも手がかりもなくて、相手が二の矢を放つのを待つしかない状況だ。
当然、今度は阻止するけれど。
「なあ……まさか、このせいでツアー延期になったりとか、他の仕事飛んだりとかしないよな……?」
「しないよ。ツアーもやるし、仕事もこなす。でもって、佐久間くんも護る」
「んはっ、蓮なら全部完璧にやりそう!」
「やるよ、当たり前でしょ?」
特に佐久間くんを護るっていうのは。
目下の最優先事項だ。
でも、少し困ることもある。
出来る限り佐久間くんをひとりにしないつもりだけれど、個人仕事の時はどうするか。
流石に、全ての現場に彼を連れていくわけにはいかないし、逆について行くのも難しいだろう。
時間がある誰かにその間は託す……ということになると思うけれど……なんとなく、嫌だ。
そんなこと言っている場合じゃないのは分かってるんだ。
でも、佐久間くんは俺が護りたい。
「悩ましいなぁ……」
「にゃはは、そんな難しい顔して。何考えてんの?」
「いや……」
待てよ。
俺がずっと佐久間くんに付きっきりでいるつもり満々だったけれど。
そもそもそれを、佐久間くんが受け入れてくれるのか?
『迷惑かけたくねーもん!』とか言って、断られる可能性大だ。
それ以前に、『蓮にそんな義理ないじゃん』って言われそうな気がする……
「あの、さ……佐久間くん、」
「んー?」
「えっと、明日からのことなんだけど───」
カラカラ……
俺の言葉を遮るように、病室のドアが開く。
2人でそちらに目を向けると、岩本くんと舘さんが入ってくるところだった。
ずっと外に居てくれたあべちゃんも、一緒に入ってくる。
「佐久間、具合はどうだ?」
「照、涼太。来てくれたんだ」
「みんな来たがってたんだけどね。流石に全員で面会時間外の病院に押しかける訳にはいかないから」
「しょっぴーと康二は『俺が行く!』って言い張りそうなのに」
「うん、言ってたよ。だから正攻法で決めました」
「正攻法?」
「ジャンケン」
お見舞い勝ち取りました、のガッツポーズをする舘さんが可笑しくて、みんなでクスクス笑った。
「照は今後のことを話すために、始めからジャンケン除外だったんだけどね」
「今後のこと……」
佐久間くんと顔を見合わせて、ごくりと喉を鳴らす。
そんな俺たちを見て、岩本くんがいつものクシャッとした笑みを浮かべた。
それだけで緊張が解けるんだから……やっぱり、俺たちのリーダーはすごい。
「そんな緊張しなくていいって。……とりあえず、今後の仕事の予定はそのまま。でも、佐久間の個人仕事はマネが調整を始めてる」
「調整……?」
「メンバー全員もしくはメンバーの内の誰かとやる仕事はそのまま……だけど、安静期間は身体動かすのはNGってことになった。ピンで出ることになってる仕事は、ラジオも含め怪我のためって理由で断る」
「えっ……!?そんなぁ、ラジオなら出られるよ!」
「……犯人が捕まるまで我慢しろ。ひとりで居る時にまた狙われたらどうするつもりだ」
「う……」
しゅんとする佐久間くんには申し訳ないけれど、それについては俺も賛成だ。
佐久間くんをひとりになんて、絶対に出来ない。
そう思っていると、舘さんが俺の肩を叩いた。
「言っておくけど、目黒もだからね」
「え……俺も?」
なんで?
首を傾げる俺に、岩本くんが小さくため息をつく。
「お前も言ってただろ?最近嫌な視線を感じるって。……今回は佐久間が標的になったけど、もしかしたらお前がやられてた可能性もあるんだ」
「あ……」
そういえばそうだった。
すっかり忘れていたけれど。
「まあ、流石に目黒はさぁ……全部断るのは無理だから。代わりに、全現場にマネがピッタリ帯同する」
「ええ……」
送迎はしてもらうことも多いけれど、全部の現場に毎回帯同はない。
正直、自由がなさ過ぎるのはつらい……けど、そんなこと言っている場合じゃないのも分かる。
「分かった。個人仕事の時は充分注意するし、ひとりにならないようにします」
「そうしてくれ。……で、仕事以外の時間のことなんだが…………目黒と佐久間、しばらく同居して欲しい」
「……え」
「ええ……っ!?」
俺と佐久間くんは同時に声を上げ、顔を見合わせた。
俺的には願ったり叶ったりだけど、佐久間くんは───
「そっ……そんなん!いくらなんでも蓮に申し訳なさすぎるって!!蓮に迷惑かけんのだけはヤダ!!!」
……ほら、言った。
予想通りの言葉に、苦笑をこぼす。
「佐久間くん、俺は迷惑なんて思わないよ」
「でも……っ、蓮にはそんな義理ないじゃん!俺の面倒見なきゃなんて……忙しいんだしさぁ!」
「誰も目黒に佐久間の面倒見ろとは言ってねぇよ。ただ、プライベートでは2人で一緒に居てくれって言ってるだけだ」
「で、でもさ!俺はしばらく安静なんだろ?そしたら、どうしたって蓮に色々負担がかかるじゃん!」
「負担なんてかからないよ。むしろ、目の届くところに佐久間くんが居てくれた方が俺も安心だし……それに、俺もずっとひとりで居なくて済むわけじゃない?」
「へ……」
きょとん、と佐久間くんが目を丸くする。
岩本くんとあべちゃんが揃って吹き出し、舘さんは温かな眼差しを佐久間くんに向けていた。
「そうだよ、佐久間。照とふっかと相談してさ……めめと2人で居てくれれば、お互いにひとりにならずに済むじゃんって話になったんだよ」
「メンバーそれぞれ、個人仕事持ってるからな。帰りが遅くなることも、逆に早く出なきゃいけない日もある。それは目黒だって同じことだけど、メンバー間を転々とするよりはずっといい」
「目黒には悪いなって、俺たちも思ったんだけどねぇ」
「ううん、俺は平気だよ。むしろ、任せてもらえて嬉しい」
「後は、まあ……囮みたいでアレだけどね、犯人をおびき寄せ易いかもっていう打算もある」
穏やかな表情で、穏やかじゃないことを言うあべちゃん。
食ってかかろうとしたのか、佐久間くんが起き上がろうとしたのを肩を押さえて止めた。
「そんなん……蓮も危ないじゃんか!」
「そうだ、危ないんだよ。でも、お前と目黒がそれぞれひとりで居て、どっちが狙われるか分からないよりはいいだろ?」
「うん。佐久間くん、岩本くんの言う通りだよ」
「蓮……」
繋いだままの手に力を込めると、佐久間くんもギュッと握り返してくれる。
「じゃあ……ええと、よろしく……お願いします」
「こちらこそ、よろしく。……あとは早く解決するように、祈ろうよ」
「ん……だな」
良かった。
これなら俺が佐久間くんを護れそうだ。
ホッとしていると、舘さんがクスッと笑みをこぼした。
「後は、2人の相性が良ければと思ってたけど……もう充分仲良さそうで安心した」
「へ?」
「お前ら、俺たちが入ってきても一度も手、離さなかったしな」
「繋いでることも忘れてそうだったもんね?」
「「…………!!!」」
しまった。
離したくないとは思っていたけれど、普通はメンバー同士で恋人繋ぎなんてしない。
離しておくべきだったかな、と思いつつも……やっぱり俺から離すのは無理。
「れ、蓮は俺のこと心配してくれてただけだから!」
「みんな心配してるけどな?」
「うっ……」
「いいじゃない。仲良くてよかったって思ってるよ」
「そうそう。……めめ、頑張れ」
「!!……うん」
「……?何を頑張んの???」
不思議そうな佐久間くんを他所に、岩本くんと舘さん、あべちゃんが笑う。
……そうでした。
みんな、俺の佐久間くんへの気持ちに気づいてるんでした。
恥ずかしい……
ムズムズするけれど、その反面……
期間限定の、佐久間くんとの2人暮らしはちょっと楽しみで。
緩みそうになる口元を引き締めつつ、俺はそっと俯いた。
…………多分、ニヤついてるのは隠せていない。
*****
期間限定同棲✧◝(º▿º)◜✧
コメント
3件

🖤の心の声(やったヽ(=´▽`=)ノ) 不謹慎だが犯人に感謝、メンバー公認同居生活、期間限定って言われても🖤が、解消するわけない、絶対🩷に同居継続OKさせると思う😂
わあ、第3話読みました!もう、蓮くんの佐久間くんへの想いが溢れまくってて、こっちまでドキドキしちゃいました🤍 特に「ずっとこうしていたい」って心情と、繋いだ手を離さない描写がすごく好きです。メンバーみんなの優しさも感じられて、岩本くんの「頑張れ」には思わずにっこり。期間限定の同棲、どんな展開になるのかすごく気になります!