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父さんの跡を継いで、俺は今、東堂製粉所の社長として奮闘している。
「まあ、大変だけど楽しくやってるよ。正孝社長には相変わらずお世話になってて、いろいろ助けてもらってる。ずいぶん年下だけど、さすが榊さんと雫ちゃんの息子さんだね。すごくしっかりしてて、頼りにしてる。本当に……有難いよ。雫ちゃんには電話で話したけど、新しい商品が日本小麦粉協会で金賞を受賞したから、それを今、海外にも広げるために試行錯誤してるんだ」
「海外に……? 東堂製粉所もいよいよ海外展開するのね。すごいじゃない」
「今が正念場だよ。うちの小麦粉が最高だってこと、たくさんの人に知ってもらえるチャンスだからね」
「慧君の夢、叶うね。うちのパンも東堂製粉所の小麦粉のおかげで本当に評判いいんだよ。他のじゃ絶対ダメ」
「そう言ってもらえたら、頑張ってきた甲斐があるよ。これからもまだまだ上を目指すよ」
世界に広げる夢……
この人が喜んでくれるから、まだまだ頑張っていけそうだ。
「頑張ってね。私も美味しいパンを作るから」
「慧君は本当に幸せだね。こんなにも東堂製粉所の小麦粉を大切にしてくれる人がいて。もちろん私もだけどね」
あんこさんが言った。
「あんこさんのパンは一流です。私も、少しでも追いつけるように努力して頑張りますから」
「何言ってるの。雫ちゃんは、もう私よりも美味しいパンを作れるようになってるよ。自信持ちな。でも、本当に偉いよ。子育てもちゃんとしながら仕事してるんだから。私の息子はこんな大きいから、子育てしなくて済んだけどね」
あんこさんが俺を見て笑った。
そして、また続けた。
「雫ちゃんはすごいよ。立派な旦那様、正孝君という素晴らしい息子さん、優しいお嫁さんの真美ちゃんがいて。しかも、可愛い孫の誠君まで。もちろん、榊グループを背負うことの大変さはあるだろうけど、でもそれ以上に、かけがえのない最高の家族と一緒にいられて……本当に幸せだね。良かった……ね」
しみじみ語るあんこさんの瞳がキラッと輝いた。
あんこさんは、雫ちゃんのことになると涙腺が緩くなってしまう。
きっと『杏』にいた頃からずっと本当の妹みたいに思ってたからだろう。
「あんこさん。そんな風に言ってもらえて嬉しいです。でも、あんこさんも素敵な人生を歩んでるじゃないですか。東堂社長や慧君もいて……こんな立派なパン屋さんとカフェも経営して。私、こんなに素晴らしい女性は他に知りません」
雫さんも、もらい泣きして……
「本当にお2人の絆、固く結ばれててうらやましいです。私もお2人に負けないよう頑張らないと」
真美ちゃんまで涙が……
「慧君だけ仲間はずれだね。私達3人の中には入れないよ~」
「あんこさんは意地悪だな。でも、女性は強いなって思う。あんこさんも雫ちゃんも真美ちゃんも」
「そうだよ、女性は強い。慧君、怒らせないよう気をつけてね。あっ、そうだ、果穂ちゃんも……」
「果穂ちゃん?」