「この前ね、果穂ちゃんがここに観光に来たんだよ。前にも話したと思うけど、ご家族でね。子どもさんもずいぶん大きくなってたし、本当にしっかり家族してた」
「果穂ちゃん……幸せなんですね」
「そうだね。きっと慧君にその姿を見てもらいたかったのかも知れないね。私はこんなに幸せだよって。果穂ちゃん、慧君と話してすごく楽しそうだった。あんな可愛い顔するんだっていうくらい。北海道に来て慧君に元気もらって、今も毎日いろんなことに頑張ってると思うよ。本当に……女は強いよ」
あんこさんの優しい笑い声が響いた。
果穂ちゃんもお母さんになって、ずいぶん表情が柔らかくなってた。
ご家族みんなで買い物してくれて、その姿を見てたら、こっちまですごく温かい気持ちになった。
自分を真剣に想ってくれてた人が幸せだと、こんなにも嬉しいのか……って。
そう思ったら、俺は雫ちゃんに心配かけたままなんだって、ちょっと申し訳なく感じた。
早く安心させたいけど、結婚という形では無理だから。
せめて今は、目の前の仕事を一生懸命頑張る。
その姿で雫ちゃんに少しでも喜んでもらえたらって、そう思った。
みんなで話していたら、時間が過ぎるのが早い。
あっという間に夕方なって、親戚のみんなも集まり、あんこさんのバースデーを祝うパーティーが始まった。
カフェの前の広い場所でのバーベキュー。
北海道の新鮮な食材が揃ってる。
じゃがいもやアスパラガス、たくさんの野菜は知り合いの農家さんからのプレゼント。
ホタテやエビ、アワビなどの魚介は鮮魚店、いろいろな部位の豪華なお肉は精肉店から。
あんこさんが数年の間に築いてきた信頼で、最高の食材が無料で集まってきた。
本当に、こんなに誰からも好かれる人はなかなかいない。
あんこさんの人間味溢れる人柄に、みんなが惹かれるんだろう。
男性陣がバーベキューを仕切り出し、女性はにぎやかに盛り上がってる。
久しぶりに楽しい時間が流れた。
「あの……慧さん」
真美ちゃんが話しかけてきた。
「ん? どうかした?」
「あっ、いえ、今日は私までお世話になって本当にありがとうございます」
正孝君のお嫁さん。
優しくて可愛くて、良い子だ。
雫ちゃんも、この子を自分の娘みたいに大切にしてる。
「真美ちゃんも来てくれて、あんこさんは喜んでる。忙しいのにごめんね、ありがとう」
「とんでもないです。私もですけど、お義母さんも……みんなに会えるって、すごく楽しみにしてました」
「そっか、それは良かった」
「ひとつ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「慧さんって……お義母さんのこと好きなんですよね?」
単刀直入過ぎる質問に驚いた。
思わずビールをこぼしそうになる。
「えっ、あ、あの……」
かなり動揺する俺のことを見て、真美ちゃんが笑う。
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