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「ついに来てしまったのです」
朝8時30分に、車は満車近い駐車場に着いた。
何とか縦列駐車出来るところに車を入れて、朝食。
弁当を食べてお茶を飲み、いよいよ出発準備。
「寒いですけれど、とりあえず下はスパッツと雨具ズボンのフル装備で、上はフリースに雨具でいいと思います。すぐに暑くなって汗をかきますから。暑くなりそうなら、上の雨具も脱いで下さい」
「アイゼンはどうするのですか」
「とりあえずアイゼンは付けないで、ピッケルは持って行きます。テントを張る黒百合平までは、おそらくアイゼンなしで大丈夫です」
そんな訳で服装を整え、靴を履き替える。
「今回も一応、使用前使用後写真を撮っておこう」
車の前で記念撮影をして出発。
ただ、皆サングラスに耳の隠れる毛糸の帽子をかぶっている。
これで後で、写真から表情が読めるだろうか。
体型と身長で、どれが誰かはわかるだろうけれど。
出発してすぐに、唐沢鉱泉の前を通る。
『日本秘湯を守る会』の提灯があった。
「帰りは当然、ここに寄るんですよね」
「ええ、下の立ち寄り湯と違って、施設が色々ある訳では無いけれど、いかにもという作りのいい温泉ですよ」
ああ、また2時間待ちか。
でもスーパー銭湯的な立ち寄り温泉よりは施設が少ないだろうから、そこまで待たないかな。
そんな事を思いながら通り過ぎる。
当たり前だけれど、下は雪だ。
何か片栗粉のような、ぎゅっとした感触を踏みしめながら一歩ずつ。
慣れていないので滑りそうで緊張する。
実際は、しっかり足の裏を付けておけば、そう滑ることも無いのだけれど。
「周りが全部、クリスマスツリー状態ですね」
「まだまだだな。上の方はこんなもんじゃない。ずっと綺麗だぞ」
「先輩は去年も来たんですか」
「ああ。特に朝は無茶苦茶寒いけれど、凄く綺麗だぞ。この辺はまだまだ木も貧相だしさ。あ、でも、あのカーブ辺りはいいかもな」
今日は先輩が一番前で、先生が一番後という隊列。
そしてカーブの先、ちょっと雪が低い枝についているところで、先輩は立ち止まる。
「見てろよ」
木の枝を、先輩がピッケルで叩く。
キラキラッと粉雪が舞って、陽の光を受けてきらめいた。
「うわーっ」
思わず歓声が出る。
それ位、綺麗だ。
「まだまだ先の方が綺麗だぞ。今日歩く時間は短いから、その分ゆっくり歩いていい。じっくり雪山を感じながら行こう」
そんな訳で、ゆっくり歩いて。
滑りやすくて怖い、丸太数本を束ねたような橋(雪がついて凍っている)をおっかなびっくり渡ったり。
態々キックステップを使って、階段状に足場をつくって歩いたり。
登りそのものは、角度も緩くて歩きやすい道だ。