テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2,153
#狂愛
柏木さくら
1,634
#ホラー
天野 夢縁
359
#タイムリープ
卵焼き
222
『31番の保護、確認しました。次はあなたたちを保護します。』
送り主――R。
俺は画面を見つめたまま立ち尽くしていた。
「知り合い?」
美咲が小さく聞く。
「いや。」
首を横に振る。
「初めて見る。」
美咲も同じだったらしい。
表情が少しだけ曇る。
「……気を付けて。」
「組織じゃない人間が近づいてくる時もある。」
「利用されるだけ利用されることもあるから。」
俺はメッセージを閉じた。
返信はできない。
電話番号も表示されない。
一方通行の連絡だった。
その夜。
自宅へ戻ると、母さんの病院から電話が入っていた。
胸が締めつけられる。
「もしもし!」
思わず大きな声が出る。
電話の相手は看護師だった。
『神谷さんのお母さまですが、お変わりなく過ごされていますのでご安心ください。』
力が抜ける。
『ただ……』
その一言で、また息をのむ。
『病院の受付に、お見舞いだと言って果物を置いていった方がいまして。』
「え?」
『お名前は名乗られませんでした。』
嫌な予感がした。
『メッセージカードだけ残っていました。』
「何て書いてあったんですか?」
看護師は少し間を置いて答えた。
『”悠真さん、お仕事頑張ってください”と。』
頭の中が真っ白になった。
組織だ。
母さんに直接危害は加えていない。
でも――
**“いつでも近づける”**
そう伝えてきたんだ。
翌朝。
玄関を開けると、小さな封筒が落ちていた。
差出人はない。
中にはUSBメモリが一本。
紙が一枚。
そこには印刷された文字で、
**『一人で見ろ』**
とだけ書かれていた。
「開ける?」
美咲が聞く。
俺は迷う。
組織かもしれない。
Rかもしれない。
どちらにしても危険だ。
それでも、何も知らないままでは前に進めない。
俺は古いノートパソコンを取り出した。
ネットにはつながない。
個人情報も入っていない。
USBを差し込む。
動画ファイルが一つだけ表示された。
再生する。
画面が暗転し、数秒後に映像が映る。
どこかの部屋。
窓はない。
机と椅子だけ。
そこへ、一人の男性が入ってくる。
帽子を深くかぶり、顔は見えない。
しかし、その声だけははっきり聞こえた。
「もし、この映像を見ているなら。」
男はゆっくり顔を上げる。
「私はRです。」
俺たちは息をのんだ。
「組織は止められます。」
「ただし。」
「あなたたちだけでは無理です。」
男は机の上に一枚の紙を置く。
そこに映っていたのは、参加者の一覧だった。
番号だけじゃない。
名前も。
年齢も。
応募した日も。
その中で、一つだけ赤く囲まれた名前がある。
**神谷 悠真**
「あなたが鍵になります。」
映像はそこで終わった。
部屋に静寂が流れる。
美咲が画面を見つめたままつぶやく。
「……どうして悠真なの?」
俺も答えられなかった。
その時。
窓の外で車のブレーキ音が鳴る。
キィッ――。
反射的にカーテンの隙間から外を見る。
黒いワゴン車。
見覚えがあった。
助手席の男がこちらを見上げる。
そして、ゆっくりと笑った。
(第二十八話へ続く)
コメント
1件
うわ、続きがめちゃくちゃ気になる…! 「R」からの一方通行のメッセージに始まって、お母さんへの嫌がらせ、USBの映像で「あなたが鍵になる」って悠真に直接言われる展開。しかも最後の黒いワゴン車の男の笑顔、ゾッとした。病院のカードで“いつでも近づける”って暗に脅してくるところが特に怖かったな…。設定の不気味さと描写の省略の効かせ方がすごく巧い。次、どうなるんだろう。