赤桃/青桃/大学生if
本当になんでも許せる方向け🙆♀️
エロ、グロ描写なし 基本的桃視点
息抜きなのでめちゃくちゃです
202X年 x月x日
「ごめん、別れよう」
1人目の運命の人ができた。
深夜22時、彼とのデート終わり。その彼に連絡を入れて一息ついた。
左上の矢印を押して戻ると、プロフィール画像を変更した通知が、ベルの上の赤い丸で示されていた。何気なく押してみるとそこには、3ヶ月前のあの日に別れた元彼の『いふ』と言う名前が映っていた。
怖いもの見たさと言うか、良くないものを見るように、誰から隠れているかも知りえないのにコソコソとプロフィールを開く。
(…あ)
背景写真が俺の後ろ姿から別の写真に帰られていた。
元々このアプリを開かないタイプだしプロフィール画像なんか2年に1度変えるくらい。今頃気づいたんだろうな、なんて考えるも少し惜しい気持ちもあった。
視界にチラつくトークのボタン。自分の傷を抉ることになるくせ、人差し指で軽くそのボタンを押した。
スクロールもせずに目に入る最後のトーク、それは彼からの『今までありがとう』『まだ好きだった』という言葉。未練タラタラで気持ち悪く見えるかもしれないが、俺も彼をまだ愛してた。愛していたが、すれ違いが増え、カップルでいる意味がなくなってしまった故の結果だった。男同士故、お互い結婚なんか考えていなかったし、当たり前の結果なのかもしれない。でも好きだった。だからこそ3ヶ月引きずった。
新しい恋に進もうとしていたのにこれだ。なんて、勝手に少し苛立ちを覚えたとき、彼との会話を思い出した。
水族館デートのあの日、ロマンチックな雰囲気になった途端、彼が言い出したあの言葉。
『運命の人って2人おるらしいよ』
『1人目が忘れられない別れを、2人目は永遠の愛をってやつ』
『……じゃあ俺らは2人目だね』
なんて照れくさい言葉を吐いたのも、彼が嬉しそうに笑っていたのも鮮明に覚えている。
「結局1人目だったやん…」
頬杖をつきながら、ため息混じりに呟いていたところ、スマホのバイブレーションが鳴り、画面上に通知が流れてくる。今日デートした今いい感じの男から返信がきたようで、トーク欄を長押しすると『こちらこそありがとう、次いつ会える?』との連絡が。
カレンダーのアプリを開いてから、『来月の2週目なら会えるかも』と返しておく。
『なら水曜会える?会いたいな』
『会えるよ!楽しみにしてるね』
ありがとう、というスタンプを見送ってからアプリを閉じた。
眠いな、なんて零しながら風呂場へ向かった。
3限目の講義が終わり、友人と大学内を歩いていた時だった。
「ん?あれまろじゃね笑」
「えっ」
兄貴分のような友人だが、人を揶揄うのは人一倍好きな友人で、ニヤニヤしながら俺と彼を交互に見て目配せをしている。
「まじやめろって笑」
そう笑っていた時、彼がこちらに気付いたようで、バッチリ目が合ってしまった。
(最っっっ悪…!!!)
「ないこ笑笑なんかこっち来とるで!行ってこいよ!」
背中をバシッと叩かれ、体勢を崩し足踏みをすると、やはりこちらに向かってきている彼と目があった。
「俺外のファミマで待ってるからな!じゃ!」
「は!?あ!おい悠佑!!」
走って逃げていく友人の姿を追おうとするも、後ろから例の人物に呼び止められた。
「ないこ…ちょっとええかな」
「え、えっと…」
「急にすまん、話聞いてほしくて」
「いいけど…逆にいいの?」
「うん、ないこがいい」
手を引かれて数分、人気のない階段裏のような場所に連れてこられた。
「…今、上手くいっとる?」
「……ぼちぼちかな」
宗教勧誘かと警戒していたが、彼の口から出てきた言葉は驚くべきものだった。
「俺、まだ好きやねん」
時が止まった音がした。
今更なんだと思った。何様だと思った。
「なんで、振ったのそっちやん、意味わかんないんだけど」
勢いよく立ち上がり、1歩、2歩と後退りをした。悲しそうな瞳で訴える彼と視線を逸らしながら。
なのに、俺の口から「おれも好き」と溢れ落ちる寸前、聞き覚えのある声が耳を包んだ。
「…ないくん?」
「りうら…」
最悪なタイミングだと思う。元カレと良い感じの男が鉢合わせするなんて。しかも、どちらとも俺を狙ってるなんて。
「あの子、1年?」
「まぁそんな感じ」。そう流そうとした途端、りうらが友人に「先行ってて」と零しこちらに駆け寄ってきた。
「俺の恋人になんか用っすか」
俺の体の前に手を出し、前に立ちはだかる様に動いたりうら。
「ちょ、りうらなにいっ」
“俺の恋人”という誤解を生みかねない言葉を訂正しようと試みたが、りうらの手が俺の口を塞ぐように音を立てて叩いてくる。
「…そっか、ごめんな邪魔して」
「俺はないこの“友達”。これからないこのことよろしく頼むで」
「っあ、まろ…」
悲しそうな、寂しそうな後ろ姿を追おうとした矢先、りうらに抱きとめられた。優しいのに、安堵したような力強い加減に言葉が詰まった。
「よかった…なんもされてなくって……」
「……うん、ありがとう」
これで、これでよかったんだと思う。
彼が好きだった香水を手の甲に付け、彼が好きだったピアスを耳で揺らして、未練タラタラだったくせに。挙句、期待までさせてしまったくせに。
再構築なんてできなかったろうし、何より、目の前に俺をここまで好いてくれてる人がいる。
「…あのさ、こんなとこで言うのちょーダサいんだけど…、ないくんのこと好き、付き合ってください」
「返事、ほしいな」
帰路につき、友人と他愛のない会話を交わしながら電車に揺られていた。
夕暮れ色の強い光に照らされながら、少し早い快速列車のドア付近に立ち、座席の仕切りに背中を預けていた。
「そういえば!あの1年どないなったん」
「あの1年?」
「ほら、ないこのこと好きな赤いの」
「あー…」
答えに詰まっていると、とある駅を通り過ぎた外観が目に入った。そう、各駅停車でしか止まらない彼の最寄り駅だった。
「…おれさぁ」
「好きな人いるから断っちゃった」
コメント
1件
初コメ失礼します。とても刺さってしまって…好きです。 個人的には桃さん目線の赤さんが“運命の人”のどちらにも当てはまっていないような気がしました…赤さんにとっては桃さんが運命の人なのかもですが。 ゆずさんの真意は分からなかったです、すいません!素敵なお話ありがとうございました!