テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
10話目もよろしくおねがいします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
『……本物のレトさん?』
キヨはカニのぬいぐるみを抱えたまま、信じられないという顔で立ち尽くしていた。
まるで夢でも見ているかのように、何度も瞬きをする。
レトルトは、キヨの視線に耐えられず、ぎゅっと唇を結んでうつむいた。
それでも、震える声で言葉を継ぐ。
「……うん、本物やで。」
声が小さくて、店内のざわめきにかき消されそうだった。
だけどキヨには、はっきりと聞こえた。
『……なんで……』
「……会いたくて……でも、怖くて……」
そう言いながら、レトルトは顔を真っ赤にし、袖の端をきゅっと握った。
肩も震えている。
キヨはじっとレトルトを見つめる。
信じられない、けれど……目の前にいるこの人は、画面越しに自分の言葉に笑ってくれた、
幸せそうな笑顔を見せてくれた、あのレトさんだった。
『…ほんとに……レトさん……なんだ』
キヨの声は、今にも泣きそうなほど震えていた。
レトルトはうなずいた。
ゆっくり、キヨの目を見て。
「……ずっと、キヨくんのこと、忘れられへんかった。……忘れるつもりも、なかった。」
沈黙。
でもその中に、互いの鼓動だけが、確かに聞こえていた。
キヨの腕の中にあるカニのぬいぐるみが、ぎゅっと握られる。
『俺、レトさんに……ずっと……ずっと会いたかったんだ!』
声を上げたその瞬間、キヨはぬいぐるみごとレトルトを抱きしめた。
レトルトは一瞬驚いたあと、その細い体を抱きしめ返した。
「あぁ……本物のキヨくんだ…あったかい…」
キヨは目を潤ませたまま、レトルトの肩に顔を埋めた。
『本物のレトさんだ……』
その言葉に、レトルトもまた、そっと目を閉じた。
つづく