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スタートヽ(*^ω^*)ノ
『……ちょっと、歩きません?』
キヨがぽつりとそう言ったとき、レトルトは驚いて顔を上げた。
けれどすぐに、視線を逸らしてしまう。
「……うん」
ふたりは並んで雑貨屋を出た。
夕方の風が、少しだけ肌を撫でる。
沈黙。
けれどその沈黙は、気まずいものじゃなくて、胸の奥にじわじわと染み込んでくるような……温かい緊張だった。
キヨはレトルトの横を、ほんのすこしだけ歩幅を合わせて歩いていた。
無言のまま、だけど意識はどこまでもレトルトに向いている。
レトルトは、隣にいるキヨを横目で見上げる。
(……ほんまに、キヨくんや)
高い鼻筋、涼しげな目元。
画面の中では何度も見ていた顔。
でもこうして隣で歩いていると、改めて背の高さにも、声の響きにも、息づかいにも実感が湧いて――胸が、きゅうっとなる。
目が合いそうになるたびに、レトルトは視線を逸らしてしまった。
顔が熱くて仕方ない。
『……レトさん、顔真っ赤ですけど、大丈夫ですか?』
ふいにキヨが優しく声をかけた。
その言葉に、レトルトはますます赤くなる。
「だっ、大丈夫ちゃうし……てか、そんなん言わんといてや……」
『ふふっ。レトさん、照れすぎじゃないですか?』
キヨが、くすっと笑った。
その笑い方が、レトルトの胸にふわっと風を吹かせる。
「キヨくんのせいやし……」
レトルトは拗ねたようにそっぽを向いたが、すぐに肩が触れた。
『…ごめん。でも、会えて嬉しいです』
そのまっすぐな言葉に、レトルトの目が、そっと潤む。
「……俺も、やで……」
言った瞬間、また顔が赤くなるレトルト。
だけどもう、隣にいるキヨの存在が怖くなかった。
むしろもっと近くにいて欲しいと、思ってしまった。
つづく