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カインは王立フューチャー学園の教師と冒険者を兼任している。
主な仕事は冒険者の経験を生かした実践、そして魔法に関する講義。
そして最後に推薦候補生の見定め。
カイン自身はこれを一番面倒くさい仕事だと思っている。
毎年学園に紹介される人数は百人程度。そのほとんどが上級階級の貴族が大袈裟に言っているだけなのだが、それでも直接現場に出向き審査しなければいけない。
これは仕事の一環、面倒臭くても行かなくてはいけない。
そしてカインに紹介された人物の大半は、審査したところで推薦候補生に相応しい実力を持っていない。
推薦候補生の基準は厳しく、ただ優れているだけではダメなのだ。
突出した分野が必要であり、それを証明するため、紹介された人物には厳しい審査が課される。
審査に関しての情報は本人には一切伝えられず、難しい状況下で依頼内容以上の成果を出すことが必要なのだ。
この審査は厳しく、推薦に足る人物は毎年一人いればいい方で、いない年が多い。
ちなみにカインも驚いたことなのだが、今年の推薦候補生は三人も決まっている。学園内はこの話題で持ちきりで、今年は既に黄金世代と言われている。
ちなみにカインが直接審査した人で、候補生は見つかったことは一度もない。
紹介された人は、一応でも審査しなければいけない。
カインには紹介されても見込みの薄いもの者の仕事が回ってくる。
「こっちだって暇じゃないんだけどなー」
カインはそう呟きながら一枚の依頼書を見ていた。
内容は冒険者組合から学院への紹介。
クロスフォード支部に最短でCランクに上がった新人を見てほしいという内容だった。
「はぁー」
カインはため息をついた。
クロスフォード領といえば何もない田舎。
そんな田舎で出てきた期待の新人なんてたかが知れている。
でも仕事だから行かなければならない。
カインは自分に言い聞かせ出向くための準備をするのだった。
数日後、カインはクロスフォード領につき、該当の人物、アルトについて調べた。
その結果、基本的にソロで活動してゴブリンやオークを討伐し、最年少でCランクになったと分かった。
カインの見立てでは少しだけ優秀な人材。
推薦を取れるような人物ではない。
カインはまた損な役回りかと思い、それでも仕事は仕事とまたも自分を言い聞かせ、とりあえず会ってみようと思うのだった。
そして会って見てさらに期待が下がる。
カインから見たアルトは平凡そのもの。
強い者はある程度独特のオーラをしている。
カインはさまざまな人間を見てきた、そして冒険者としての経験からそういった人物は感覚で分かる。
アルトはせいぜい平凡、よくて標準。
事前に調べた情報すら嘘と思える、そんな人物だった。
さっさと審査して帰ろう。そう判断したカインはクロスフォード領内でたまたまワイルドウルフの緊急依頼が出てた為、テストを兼ねてアルトと一緒に受けようと思った。
そして依頼の話が進んだ後、アルトが意味深な発言をする。
アルトは無属性魔法を主に使い、全てを短期決戦で終わらせるのが得意と言った。
それを聞いてカインはワイルドウルフ相手に数秒は持ち堪えられるかどうかを聞いたが、自信満々で肯定していた。
カインはアルトの発言に期待はしないが興味が湧いた。
ほんの少しは楽しめそうかなと思い、その後はそれぞれが依頼のための準備をし、馬車で現場に向かった。
カインはアルトと馬車での移動中、作戦会議をした後アルトには無茶な注文をしてみた。
ワイルドウルフを誘導しろ。
これは殆どが無理なことだ。
ワイルドウルフはとにかく速い。
そんな相手から逃げ切るなんてことは普通はできないからだ。
カインは拒否されると思い少し冗談で言ったのだが、アルトはそれを出来ると断言し引き受けた。
(何かあっても助ければいいか)
カインはそんな軽い気持ちでいたのだが、結果が出た途端驚いた。
アルトはカインの助けなしに達成した。
さらに内容を聞くと、驚愕。ワイルドウルフ相手に足止めを行なったこともわかった。
カインは『サーチ』で常に状況確認をしていて、目標地点に辿り着くまでにワイルドウルフとアルトの動きが止まっていたのが分かっていた。
その時に戦闘をしていたのだろうと考えた。
そして今までの自分の考えを捨ててアルトの評価を改めた。
こういった一連の流れがあり、カインは決めた。
アルトを王立フューチャー学園に推薦しようと。