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俺様生徒会長に鳴かされて。

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俺様生徒会長に鳴かされて。

12 - Lesson4 小鳥の飼い方なんて知らねぇよ 2

♥

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2024年12月29日

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と、また引きずるように優羽を連れていったのは、校舎のすぐ近くにある学生寮区域だった。

生徒のほとんどがすんでいるこの区域は、湖を囲う森を切り開いて造られている。

湖を一望できるように並び立ち、石垣状の外壁が中世の城のように見えると評判のいい学生寮だけど、俺が優羽を連れ込んだのは、さらにその奥の別館だった。

カードキーで認証して玄関フードを抜けると、すぐに管理人兼世話係の松川さんが迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、彪斗さま」

「ただいま、松川さん」

俺は後ろにいた優羽を紹介した。

「こいつ、小鳥遊優羽っていうんだけど、今日からここに住むことになったから」

「それはそれは。なるほど、この館にお住まいになるに相応しい方ですね。よろしくお願いしますね、小鳥遊さま」

松川さんの性格がにじみ出た穏やかな笑顔につられて微笑み返した優羽だけど、案の定、「ここに住むってどういうこと??」っておどおどと俺を見上げてくる。

そんな優羽を無視して、俺は松川さんに続けた。

「あのさ、505号室って空いてたよね?」

「あ、はい。空いてますが」

「ん。じゃ俺とコイツ、そこに入るから。登録直しておいて」

「はぁですが」

「いくら松川さんでもこれはゆずらないよ。親父には『また駄々こねた』とかってテキトーに言っといていいからさ」

「いえ、そうではなくその部屋は」

「じゃ、よろしくね」

と、言いながら、さっさと俺は優羽を引っ張ってエレベーターに乗り込んだ。

「あの彪斗くん…ここは…?」

「ここは俺たち生徒会メンバー専用の寮。選ばれたもん同士寝食共にして結束感高めて、生徒によりよい学生生活を送ってもらうためにがんばりましょー、っていうキメぇ目的のもと作られた場所で、会議や企画準備もここでやったりする。ま、他の生徒もいないし住み心地もいいし、悪くないとこだけどな」

「いえ、あの、そういうことじゃなくて…どうしてわたしもここに住むの…??」

はぁ?今更なに言ってんだ。

と、俺は優羽をしかめ面して見下ろした。

「言っただろ。おまえは俺のものだ、って。俺のもんが俺のそばで暮らさなきゃ、おかしいだろうが」

チン

とエレベーターが止まって、扉が開いた。

固まったままの優羽を引っ張って、すぐそばにあるドアにカードキーを差し込む。

ピッと解除のランプが鳴った。

この館の中の唯一の相部屋。

入ったのは初めてだったけど、想像していたよりもいい部屋で驚いた。

さすがこの館の中で一番広い部屋だけあって、ベッドも家具も机もドレッサーもふたつずつあるのに、ぜんぜん窮屈さを感じさせないし、なにより、最上階というだけあって、部屋一面に広がる窓から見える湖の景色が、俺の部屋以上に絶景だった。

ベランダがあるのも同じだが、やっぱり広くてテーブルとチェアふたつ置いてても、解放感が損なわれていない。

「へぇ、なかなかいいじゃん。一緒に住むにはぴったりの部屋だな」

思わずひとりごちて、部屋に入ろうとしたが、

「…っおい、優羽」

足を踏み堪えて、どうしても優羽が部屋に入ろうとしなかった。

「おい、なに考えてんだよ」

「それは、こっちの台詞だよ…っ」

蚊の鳴くような小さな声だったけど、

優羽にしては珍しく棘のある言葉だった。

「あ?なんか文句あんの?」

「い、一緒に住むなんて…しかも同じ部屋でなんて…そんなの無理だよ…っ」

俺は優羽の手を、さっきより強めに引っ張った。

「あ…っ」

木の葉のようにあっさりとつんのめった優羽を抱き止めると、

少し乱暴に、壁に押し付けた。

「おまえ、ばかなの?俺の言うことはなんでもきかなきゃならねぇし、俺の好きなようにされても文句は言わない。そう認めさせたのに、もう忘れたの?」

「認めてなんか、ないよ…っわたしには、ちゃんと心があるよ…?『もの』なんかじゃない。好き勝手にされるだけの彪斗くんの」

「『もの』、だよ」

優羽のわずかな意地をねじり潰すように、俺は低い声で遮った。

「おまえは俺に捕まった小鳥。俺の好きなように飼われて、好きなだけ鳴かされる。俺が飽きるまで、な」

ま、たぶん飽きるなんてこと、ないだろうけどな

おどおどとした感じは相変わらずだけど、

それでも優羽は、俺を見上げ続けていた。

その瞳の奥に眠る意志を感じて、もしかしてこいつ、案外強情なのかもしれない、と思ってみる。

臆病すぎるだけに見える歌手への抵抗感も、見方を変えれば強情って言えるし。

ただ振り回されるしかない子だと思っていたのに、こんなところもあるんだな。

そんな意外な面も、けっこう可愛い。

我の強い女は面倒臭くて嫌いなはずなのに、どうしたわけか、俺はワクワクし始めていた。

ますます優羽に引き寄せられる心のように、俺は無意識にその頬に手を伸ばす。

心地よい肌。

細いあご。

ちょっと力を入れたら折ってしまいそうで。

ハラハラするのに、いっそ、そうしてしまいたくなるような…モヤモヤした気分に襲われる。

「『今日はこれで許してやる』って、さっき言ったけど」

「…?」

「やっぱ無理かも」

かすかに動揺をしめした優羽が動く前に、

抱き寄せて、捕えた。

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