テラーノベル
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翌朝。
佐伯陸は、スマホを握ったまま布団の中にいた。
画面には昨日のメッセージが残っている。
【明日は、必ず来てください】
「……行きたくねえ」
小さく呟いた。
昨日までは違った。
5万円。
6万円。
ただそれだけだった。
簡単に稼げる。
それが嬉しかった。
でも。
今は違う。
参加者が消えていく。
禁止事項が増えていく。
そして、自分が受け取った金額まで向こうは把握している。
普通じゃない。
どう考えても。
陸はスマホを開いた。
【本日の案件に参加しない】
入力して。
送信ボタンの直前で止まる。
指が動かない。
「……」
そのまま画面を閉じた。
しばらくして。
――ピロン。
通知が鳴った。
【23番】
【本日の報酬は80,000円です】
陸は目を見開いた。
「……8万?」
昨日より、さらに高い。
しかも。
仕事内容は昨日までとほとんど変わらない。
指定された場所へ行く。
指示に従う。
それだけ。
陸はしばらく画面を見つめた。
「……一回だけ」
誰に言うでもなく呟いた。
「今日だけやって、終わりにしよう」
陸は集合場所へ向かった。
部屋に入る。
昨日いた8番。
11番。
21番。
誰も喋らない。
いつもなら適当な会話がある。
今日はない。
全員がスマホを見ている。
「……なあ」
陸が声を掛ける。
誰も反応しなかった。
「昨日の人たちって、本当にどうなったんだ?」
8番が顔を上げる。
「その話、するな」
「でも――」
「するなって」
声が少し震えていた。
陸は黙った。
その直後。
モニターがついた。
【本日の案件を開始します】
そして。
【本日は、通常案件です】
陸は少しだけ安心した。
昨日と同じだ。
そう思った。
だが。
数秒後。
画面に新しい文字が表示された。
【23番】
「……え?」
自分の番号。
全員の視線が陸に集まる。
【23番は、指定された場所へ単独で移動してください】
【他の参加者との接触は禁止します】
陸は立ち上がった。
「俺だけ?」
返事はない。
11番が小さな声で言った。
「……行ったほうがいいよ」
「なんで?」
11番は答えなかった。
ただ。
陸から目を逸らした。
陸は部屋を出た。
指定された場所へ向かう。
そこには誰もいなかった。
スマホに次の指示が届く。
【その場で待機してください】
陸は周囲を見回した。
何もない。
ただの建物。
人通りもある。
これなら大丈夫。
そう思った。
しばらくして。
また通知。
【案件終了】
「……え?」
何もしていない。
ただ待っていただけだ。
それなのに。
【報酬80,000円を送金しました】
陸のスマホに8万円が入った。
「……なんだよ、これ」
怖かった。
でも。
同時に。
嬉しいと思ってしまった。
それが一番怖かった。
帰宅してからも。
陸は何度も口座を確認した。
8万円。
確かにある。
「……本当に、何もしなくても金が入るのかよ」
その夜。
陸は考えた。
やっぱり辞めよう。
こんな仕事。
続けたらダメだ。
そう思った。
なのに。
翌朝。
スマホには新しい通知が届いていた。
【23番】
【本日の報酬】
【120,000円】
陸は画面を見つめた。
昨日の8万円より。
さらに高い。
そして。
その下には一言だけ。
【昨日の案件に参加したあなたなら、問題ありません】
あなたの「死にたい」、ください
#ホラー
るしゅ
203
さぶれ-SABURE-
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コメント
1件
いやあ第65話…佐伯陸くんの心の揺れがリアルすぎて苦しくなったよ…😭💦 「今日だけやって終わりにしよう」って言い聞かせてる時点で抜け出せなくなってるやつじゃん…! しかも何もしなくて8万円→翌日12万円って、もう逃げ場なくしてくる感じが巧妙で怖い。 報酬が増えるたびに「嬉しい」って思っちゃう自分が一番怖いってとこ、めちゃ刺さった。 るしゅさんの描く「普通の人が少しずつ沼にハマる感覚」が生々しすぎて続きが気になる…!!