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大都会に異変が生じていた。街中で異能が暴走する事件が頻発し、通常は隠れた力を持つ異能者たちが次々に異常な行動に走っていた。噂では、ある日突然、ビルの上で炎を操る者が現れ、翌日には公園の木々が謎の力で根こそぎ浮かび上がったという。
この暴走事件の収拾に当たるべく、鋼谷は上司に呼び出された。いつものように無理難題を押し付けられるのだろうと覚悟していたが、上司からの指示は簡潔だった。
「鋼谷、お前が行け。原因を突き止めて、解決しろ」
「…俺が、ですか?」
鋼谷は納得がいかない顔をした。異能の暴走なんて一筋縄ではいかない危険な案件だ。なぜ自分が、という思いが拭えなかった。
「何で俺がやるんです?他にも異能者はいるでしょうに」
上司は鋼谷の疑問に対して、淡々と答えた。
「お前が適任だ。…お前は、異能を持ってないからな」
その一言に、鋼谷は思わず目を見開いた。異能を持っていない――? 自分がゴーストバスターとして働いてきたのは、ずっと異能があると思っていたからだ。しかし、上司の言葉はあまりに事実であり、その表情からは冗談の気配すら感じられなかった。
「俺、異能持ってない…?」
信じがたい事実に、鋼谷は呆然とする。自分の力だと信じてきたものが、実は異能ではなかったのだ。異能を持つ者としての自信が根底から揺らぎ、困惑が頭を巡る。しかし、そんな鋼谷の表情を見ても、上司は一切気にせず、軽い口調で続けた。
「まあ、ない方が今回の任務には都合がいいんだよ。異能がないってことは、暴走の影響も受けにくいってことだ。つまり、解決に動けるのはお前しかいないってわけ」
理屈は分かるが、それでも納得できるものではなかった。異能がないとなると、自分がこれまで戦ってきた存在と対等でいられた根拠が失われるようで、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちになる。
そんな不安を抱えながらも、鋼谷は街へと向かった。暴走する異能者たちを抑えるために自らの力を振るい、次々と暴走事件を鎮圧していく。異能を持たない自分がその場にいることで、確かに影響を受けず、異能者たちを正気に戻すことができると分かったのだ。
「なるほど…異能がないってのも、こんな役に立つことがあるとはね」
少しずつ事態を理解し、冷静さを取り戻した鋼谷は、不思議な安心感すら感じ始めていた。異能を持たない自分だからこそ、この暴走する異変に立ち向かえるのだ、と。
だが、異能暴走の原因は未だ不明だった。異変の裏に隠れた存在を探る中、鋼谷は徐々に真実に迫っていく。そして、次第に「異能がない」自分がこの事態に関わる理由が明らかになっていく。
一体、誰が、何のためにこの異変を引き起こしているのか。そして、自分が異能を持たない理由とは何なのか――
鋼谷の心に疑問が渦巻きつつ、異能の異変の真相へと歩みを進めるのであった。