テラーノベル
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───金曜日まで、あと3日───
「あはは!あの鬼畜な先生が担任になっちゃったんだから仕方ないっすよ!!」
蝉の声をかき消すような大声を出したのは、クラスの違う彼───しにがみくんだった。盛大に笑い、ぺいんとからはギロリと睨まれていた。が、相手はそれに屈せずただ笑い転げるだけだ。
そんな賑やかな、火曜日の下校途中。
「クロノアさん、大丈夫ですか?…その課題。」
日陰に立ちながらも、先頭を歩く彼はトラゾー。彼もクラスは違うが、どうやらしにがみくんとクラスは一緒なんだと。
組が違うならクラスの位置くらいは近ければよかったのだが…生憎にも、神様は優しくないらしい。対角の位置に配置されたクラス違いに、昨日は項垂れた。
心配そうに声をかけるトラゾーに、俺は少し目線を逸らしながら「あー…」と声に出す。
正直、彼が自分を心配してくれていることは分かった。それでいて、この事情は彼だけしか知らないことは俺とトラゾーだけの秘密だ。
「───ちょっと、難しい…かな?」
人差し指と親指の間隔をあけ、他の指を丸め込める。笑顔を相手に向けながらそう促すも、引きつった笑みになっていたのは、自分でも分かった。
「鬼畜な先生っすもんね。よければ手伝いますよ。俺らの担任が出した課題、少なかったんで。」
眩しいほどの笑みを向ける彼に、自身もまた笑みを漏らした。後方で言い合いをする2人の声を聞きながら、そろそろなだめなければと2人で笑う。
「しにがみさん、そろそろぺいんとがキレますよ。」
「いやあ、すいませんすいません。」
トラゾーが一言声をかけると、相手は頭の後ろをかきながら頭を下げるも、顔は思いっきし笑っている。
そのせいで、ぺいんとは 「謝る気ないだろ?!」としにがみくんにつっこむため、トラゾーと俺の2人で必死になだめた。
しにがみくんは時々、こういうことがある。お願いだから、今日はもう勘弁…。
ミーン、ミーン。
蝉の鳴き声でさえ暑いのに、うるささが加味されただけで、もっと汗をかく。
……………
その日の夜、俺はぺいんとと通話をしながらペア課題をどうするか話し合っていた。
時々、あの先生は意図が読み取れない課題を出す。今風に言ってしまえば、”イミフ”というやつだろうか。
『難しすぎて頭から血が吹き出そうです!!』
「さらっと怖いこと言わないで?!」
笑い合っている。つまり、課題は一歩も進んでいないということだ。情けないことに、この【感情】については特にわからない。
頭を悩ませている時、イヤホン越しに『あっ!』と言う声が耳を貫通する。
『シチュエーションとして考えません!?』
「しちゅえーしょん…?」
『そう!』
ぺいんとの言葉を反芻すれば、リアルで聞けば、鼓膜に大きな衝撃を与えるほど大きな声が彼の口からは出てきた。
よかった。ノイキャンかかりまくりで耳は無事に守られている。
『例えば…そうだなぁ…、クロノアさん。』
「ん?」
『もし───友達がいなかったら、どう思います?』
友達。何でこの場面でその言葉が出たのか謎だ。…いや、知りたくないのかもしれない。
相手は自分の返事を待っている。
だったら、いつも通りに返事をするだけで。
「あはは、何それ。でも、友達がいなくてもいいんじゃない?」
率直に、無感情でそう言った。何も考えずに。そう言うとぺいんとも、 『…なるほど、そういう考え方もあるのか…』と興味深そうな声を出した。
「───ぺいんとは?」
『へ?』
純粋な疑問と共にそう聞けば、相手は困惑した声を出した。
その声を聞いて、自身は内心焦る。今のは2人の感じることを伝え合うってことじゃないの。まさか、俺だけの意見で、なのか。なんてことを考えた。
意味もない冷や汗に体温を奪われながらも、イヤホン越しにぺいんとは早口で答えた。
『あ…っと、僕も、クロノアさんと一緒ですかね。』
ひどく焦った声。震えた声。
───どうして。
思ったことは、それだ。なんで彼は今、『クロノアさんと一緒』だなんて言っておきながら、『そういう考え方もあるのか』なんて呟いてしまったのか。
何で───俺とは考えてることが違うみたいな言い方したの?何で───意見が一緒だなんて言ったの?
単純に、ただそれだけが疑問で。
「───今日は、もう寝よう?」
なんで、自分の声はこんなに震えているんだ。
コメント
2件
ヤバイ...内容は神で投稿頻度もめちゃくちゃ早いのに 前回の内容を思い出せぬ...(泣) 最終話出たら一気見しよ... (応援してます!!!!!!)
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