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カジノに行った翌日――
俺はバルト将軍、フリーデ将軍、他数名の騎士と共に騎馬に乗って偵察任務に出ていた。
いつもとは違い、渓谷内の爽やかな空気を吸いながら陽の光を浴びるのは気持ちがいい。
これで隣がヒゲむさいバルト将軍じゃなければ最高なのだが。
チラリと横目で将軍を確認すると、厳しい黒鎧に背中に巨大なアックスを背負っている。いかにも帝国軍人という感じで威圧感が凄い。後ろをついてくる漆黒の騎士たち10名も、コピーペーストで並べたような部隊で一言も喋らない。
甲冑の下がロボットだって言われても、やっぱりねと頷いてしまうだろう。
その上この部隊、部隊名が【帝国軍第6暗黒騎士団ジークゼクス】悪の部隊って感じで、ほんと帝国軍の悪いとこでてると思う。
俺と将軍が先頭で、次いで白鎧のフリーデ将軍と騎士たちが付き従ってくる。
俺はしれーっと馬の歩行速度を緩めて、フリーデ将軍の隣につこうとするも、バルト将軍もこちらの歩行速度に合わせてきて作戦失敗。
「遅れているぞ王子」
「すみません、馬の調子が悪いのかもしれません」
すまんな馬さん、遅いの君のせいにして。
「将軍自ら偵察を行うんですね」
「ワシは極力自分の目で状況把握をすることにしている。王子はなぜエスタのような、栄えている街のすぐ近くに砦があるかわかるか?」
「わかりません!」
「少しは考えんか!」
「えー……まぁエスタは帝国にとって重要な街ですよね。ここ落とされると、小さな街を挟みつつもほとんど首都へ直通ですし。後は確かこの辺地下道が多いんですよね、リザードマンやオークの拠点があったはず」
「ほぉ詳しいな」
バルト将軍は意外だなと、目を大きく開く。
「ゲーム、じゃなくて地理の勉強をしたので」
「この近くに住む亜人たちは気性が荒い。不用意に近づいた人間を、何度も襲っている」
「その程度ならばよく聞く話では?」
「その通りだが、ここにいる魔族は数が多い。正確に数えたわけではないが、推定約6万から10万と言われている」
「確かに、放置しておくのは怖い数字ですね」
「その通り、しかもここ最近奴らが徒党を組み王国を名乗っていると噂がある」
「動物王国みたいな」
「そんな可愛らしいものではない。話によると、【魔族国ゾルデム】地下を中心拠点にして勢力を拡大している」
地下はタチが悪いな、一体どこまで侵攻されているか目に見えないし、ある日突然地下から襲ってくるという可能性もある。
「奴らは人間は魔族を奴隷にしていると思い込んでいる」
「う~む……少しだけ心当たりが」
魔族は人間と違うため、殺人が起きても騎士団が動かなかったり、労働条件も人種と比べて悪かったりと、基本的人権が守られないことが多い。
恐らくこれはリガルドだけでなく、ギデオンやトリスタンなど、どこの国も同じで、魔族の人権があやふやになっているところは非常に多い。
「でも、言って魔族ですよね? 奴らって協調性がないし、本能に忠実だから軍としてはまともに機能しないと思うんですけど」
「そこが不思議なことに機能しており、小隊で行動をしている。それだけではない、つい最近この近くに現れたコボルトの部隊が、フルプレートの鎧と武器を装備しておった。一匹二匹なら略奪品かと思うが、30匹全員が同じ装備をしておった」
「……それって、誰かがゾルデムに対して装備を横流ししている?」
「恐らく個人ではない。国単位で、ゾルデム建国を後押ししているものがいる。コボルトが装備していたのは、全て旧神聖ガレス国のものだ」
既に答え合わせ完了な気がする。
タランチュラが、自分たちの兵隊としてゾルデムに目をつけたってことか……。
「目的のためには、魔族まで利用するのか……」
「王子、もしこれからゾルデムが活動的になれば、世界中で混乱が広がる。特に今リガルドの街にいる魔族達は、ゾルデムとなんら関係がないが、国民は魔族を責め関係が悪化することだろう」
ゾルデムなんて知らない魔族からしたら、俺達の立場が余計に悪くなるからやめてくれって思うだろうし、人間からするとお前もゾルデムの仲間か!? と疑心暗鬼になるのもわかる。
やがて人間に迫害を受けた魔族がゾルデムと合流して、ぐちゃぐちゃの戦争になるのは想像に容易い
その背景には迫害は勿論のこと、今まで魔族の人権をあやふやにしてきた人間にも問題があるだろう。
「バルト将軍は、この事についてどうお考えですか?」
「大きくなる前に叩き潰すが帝国のやり方。しかし」
#シクフォニ
らの(腐女子)
249
5,423
#悪役
にこ
8,545
――禍根は残ると。そりゃ魔族を10万匹以上殺したら、それはもはや戦争と変わらない。実質的な人間による魔族の支配だ。
俺がゾルデムのことについて考えている時だった、不意に気配を感じる。
周囲を見渡すと、岩陰からゾロゾロとオークの群れが姿を現す。
どいつもこいつも100キロは軽く超える豚人種、その数約100。しかも全身に鎧や武器を装備した、フルアーマーオークたちだ。
「王子を餌にしたかいがあった。なかなか大量だ」
俺がなんで偵察任務なんかに駆り出されたのか理由を把握する。
やっぱり俺が王になったら、このジジイは左遷だ。
群れの中で、一際デカいモヒカンのようなトサカをつけたオークが前に出てくる。
オークは俺を指さして、嬉しそうに笑う。
「ぐへぐへ、オマエ王子。オマエさらう、ぐへぐへ」
「どうやら頭使って攻めてきてるってのは本当みたいだな」
ちゃんと王子である俺を狙って、しかも誘拐すると言っているのだ。これはオークの思考能力から考えると、ありえない事だ。
バルト将軍は、太い腕で背中の斧を掴むと騎馬から飛び降りる。
彼の厳しい甲冑がガシャッと音を鳴らし、身長180センチ超えの老騎士が背筋を伸ばす。
「我が名はリガルド帝国軍第6暗黒騎士団ジークゼクス団長、バルト・アイゼンヴェルグである。王子には指一本触れさせぬ」
威圧感のある黒鉄の将軍の声に、オークたちは一瞬怯む。
彼の隣にフリーデ将軍と、ジークゼクスの騎士たちが並び立つ。
「同じく我が名はジークゼクス副団長、フリーデ・アイゼンヴェルグ」
鋼鉄のラウンドシールドと、片刃のファルシオンを構えるフリーデ。
彼女は剣を天に翳し、通る声で命令を下す。
「総員抜刀! オーク一団を殲滅せよ!」
暗黒騎士達は一斉に剣を抜くと、圧倒的不利な人数差にも関わらず勇猛に駆け出していく。
コメント
1件
第69話読み終えたよ〜! バルト将軍とフリーデ将軍との偵察任務、王子がフリーデ将軍の隣に行こうとしてバルトに邪魔されるの笑った😂 でも話が進むにつれてゾルデムの重みがじわじわ来るね…魔族が装備を揃えて国として動き始めてるって、しかも背後にタランチュラの影があるのはゾルデムがただの蛮族集団じゃないって証明しててゾッとする。 最後のオークの伏兵、「王子を餌にした」って台詞でバルト将軍のしたたかさも垣間見えてよかった。二人の将軍の「指一本触れさせぬ」からの連携は痺れたよ。 続き、めっちゃ気になる展開で終わったね…!ありんすさん、ありがとうございます🤍