テラーノベル
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終わってみれば圧勝であった。フルアーマーオーク100匹VS暗黒騎士10名は10倍の人数差を覆し、敵軍を圧倒して見せる。
砦から援軍がすぐに駆けつけたが、その頃には動いているオークはおらず死体処理だけとなった。
「う~む、さすが帝国軍最強の暗黒騎士達。装備を整えた程度の亜人、相手にもならんな」
特にバルト将軍とフリーデ将軍の強さは別格で、漆黒の大斧バルディッシュとファルシオンで、バッタバッタとオークを斬り倒していた。
彼らだけ無双系のゲームからやってきたのではないかと思ってしまうほどだ。
一応俺も戦闘には参加したものの、戦果としてはオーク2匹を倒しただけ。
しかも二匹とも、俺のことを仲間と勘違いした失礼極まりないオークだった。
「ぐはははは、オークから兄弟扱いされたのか!」
先程の戦闘をバルト将軍に話すと、ゲラゲラと笑っている。
フリーデ将軍も「すみません」と謝りながらも、俯いて笑っている。
「笑いごっちゃないよ。いきなり兄弟、俺はこっちを見る。お前はあっちの人間を倒せって指示されたし」
「それでなんと返したのだ?」
「ブヒブヒ(了解)って言って、油断したところを後ろから刺した」
ブタの真似で油断を誘って倒したという話に、フリーデ将軍は笑いを堪えられなくなり、腹を抱えてしゃがみこんでいる。
「王子はもしかすると人でありながら、豚王になれるかもしれんな」
「嬉しくないよ。ってか、指一本触れさせないって言ったんだから守ってよ」
「いや、オークのうち何匹かわざと通した」
「は?」
「実戦に勝る経験はない。オーク数匹に殺されるような王子では、こちらも守りきれん」
将棋じゃないが、王将でも最低限眼の前に来た敵くらい倒してくれないと困るってことか。
「命のやり取りを一度も経験したことのない王に、国の舵取りはできぬ」
「そんな王おらんだろ」
「イヤミル殿下は我先にと逃げ出した」
バルト将軍の王子嫌いって、ほとんど兄上のせいでは?
そんなことを話しながらも砦に帰還。
「王子、今日はもう休んで良い。ワシはこれからオークがどこから来たのか調べるため、調査部隊を編成する」
「わかりました。風呂入ってきます」
俺はオークの血に濡れた鎧を脱ぎ捨て、砦内のシャワールームへと向かう。
その道中、フリーデの旦那であるトニーを発見。メガネにチュニック姿の彼は、両手に大工道具をもっている。
彼は俺を見て慌てて頭を下げる。
「あなたは」
「お、王子! わたくしはトニー・アイゼンベルグと申します!」
「フリーデ将軍の旦那だよね。婿養子なのかな」
「はい、その通りでございます!」
「そんな緊張しなくていいよ。ここで何を?」
「わたくしはエスタの執務貴族です、この砦の点検も行っています」
執務貴族とは、ようは下っ端公務員で、国が管理している土地や砦などを実際目で見て修理が必要か判断したり、破損があれば業者に仲介する役職である。
「トンカチやらノコギリやら持ってるけど」
「いやはや、なんでもかんでも発注を出すわけにはいきませんので、修理できる場所は自分で直しております」
なんて偉い人なんだ。
こんな真面目そうな人がギャンブル狂いとは到底思えない。
「ターナーさーん、こっちも壊れてるんでみてくださーい」
「少々お待ちを!」
#シクフォニ
らの(腐女子)
249
5,423
#悪役
にこ
8,545
騎士に呼ばれて忙しそうだ、引き止めるのも悪いな。
「大変だね」
「いえ、これも公務ですし。ただターナー呼びはバカにされてると思いますけどね」
苦笑うターナーじゃなくてトニー。
まぁ確かに、お手伝いさん呼ぶみたいな呼び方だったしな。
日常的にストレスは抱えてそうだ。
「すみません、失礼いたします王子」
「頑張って」
トニーは深く頭を下げて呼ばれた方へと走っていく。
もしかして昨日カジノで見たのは、何かの間違いだったんじゃないか?
そんなことを思っていると、ひらっと何か紙が落としていった。もしかしたら何か必要な道具では? と思い拾ってみると。
「ゴージャスカジノ、◯月▲▲日、スーパースロットイベント開催。げきねつ、激アツか」
と書かれていた。
「めちゃめちゃスロッターじゃん……」
頭の中リールと7でいっぱいになってるだろあの人。
人は見かけによらないなと思いつつ、シャワー室の脱衣所へと入る。
さすがは砦の施設だ、しょっぱいシャワーが6本並んでいるだけで、浴槽はない。一応これでも部隊長クラスが使う設備なので、一般よりかはマシらしい。
バルブをひねると温かな湯が流れてくる。正直水圧は物足りないが、湯がはかなり熱め。
この砦の地下には火山道が通っていて、マグマが流れていらしい。その地熱エネルギーを使って、お湯が使えるようになっている。
湯と共に体から泥と血が流れ落ちていく、ついでに頭も洗っておこう。
「あーあギデオン製のシャワーならなー」
6段階ジェット噴射にミスト機能付きなのに。
水道ホースみたいなシャワーにぼやいていると、女性の声がガヤガヤと聞こえてきた。
頭に泡を乗せたまま振り返ると、フリーデ将軍含む騎士たちがシャワー室へと入ってきたのだ。
全員女性で血汚れがついている。どうやら今日俺と一緒に偵察任務に出た10人の騎士って、全員フリーデ将軍の部下の女性騎士だったらしい。
「全員黒甲冑だったし、男か女かもわかんなかったんだよな」
こういう時、男が風呂場にいるとキャーって叫ばれるのがラブコメの常識だが。
でも俺王子だしな、どんなリアクションとられるんだろう。そう思っていると、フリーデは裸のまま歩み寄ると、こちらに声をかけてくる。
「王子、隣のシャワーを使わせていただきます」
「あっはい」
ごくごく普通に許可をとられて、騎士たちはシャワーで汚れを落としていく。う~む怒られないのはいいのだが、なんとなくそういったお約束がないと物足りない気分になる。
「ゲームだと絶好のCG回収ポイントなのに」
絶対男として見られてないだろこれ。
相手に恥じらいがないと興奮値も半減だ。そう思いシャワー室を見回す。
いや、そんなことなかった。皆様ボインで、起伏の激しいスタイルをされている。余は眼福じゃ。
俺は隣に来てバルブをひねるフリーデ将軍に声をかけてみる。
「さっき外で旦那さんに会ったよ」
「本当ですか? 何か失礼はありませんでしたか?」
「いや、全然。真面目な人だなって」
「そこが取り柄の方なので……」
やはり新婚だけあって情感がある。
「お見合い結婚で、あまりよく知らないまま結婚したのですが」
「そこが敗因か……」
「えっ?」
「いや、なんでもない」
「父からは軟弱と反対されたのですが、私が気に入ったので……。向こうもアイゼンベルグ家に入ることを了承してくれましたので、婚約までは半年もかかりませんでした」
「男ってもっとよく見たほうが良いよ」
「えっ?」
「いや、なんでもない。あのさ……スロット……」
「スロット?」
「いや、旦那さん好きなのかなって。好きならその話してみたいと」
「ふふっ、婚約前はしていたようですが、今はもうきっぱりと辞めていますよ」
「ん、ん~……」
辞めてないんだなこれが。
どうやらフリーデ将軍には辞めたと嘘をついているらしい。
真面目に働く彼と、裏でギャンブルに明け暮れる彼はどっちが本当なのだろうか。
名残惜しいが、王子がいては気を使うだろうと思い、俺はシャワー室を先に上る。
コメント
1件
戦闘後の緩急がめちゃくちゃ良かったです!オークに「兄弟」扱いされてブヒブヒ応戦するところから、まさかの全裸混浴シャワーに「CG回収ポイント」とツッコむ王子の脳内が面白すぎて笑いました🤣 でも最後にトニーのカジノチラシがポロリ…フリーデ将軍に「辞めた」って嘘ついてるの、この人の二面性が不気味でゾクッとしました。人が見せる顔と本当の顔、これからどう暴かれるのか続きが気になります!