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嫌々な気持ちを押し殺しながら僕はあの鳥居の前に来た。
前はこの鳥居を潜った瞬間に矢が飛んできたんだっけ?
というかずっと蒼葉くんから貰ったナズナの花、握りっぱなしだったなぁ…
そう思いながら、ナズナの花…
いや、ぺんぺん草を見つめる。
そういやこれの遊び方教わらないまま別れちゃったな…
そう心で呟きながらどうにかして遊べないかと試行錯誤する。
と、微かに種がカラカラと鳴った。
多分、遊び方はこれで正解…
のはず?
そう思いながら手のひらでぺんぺん草を挟んで前後に動かす。
そういやこういうオモチャ子供の頃に遊んだっけ。
確か名前はでんでん太鼓だっけ?
あれ結構危険なんだよなぁ…
自分にも周りの人にも当たるし。
結構当たったら痛いし。
多分、今の僕を傍から見たらただの変な奴だと思う。
草を両手で挟んで何してるんだか。
そう、ふと冷静になる。
「人の子よ、などかまたここに来し?」
見つからないよう鳥居の外から居ないことを確認してから入ったのにまさかこんな早く見つかるとは思わなかった…
そう肩を落としながら
「…やることがあって」
と言うと弓矢を向けてきた。
そんなとき、どこからか
【花いちもんめに遊ばむ】
と幼い女の子のような声が2重になって聞こえた。
だけどなんだか蒼葉くんよりも、
月さんよりも、
響いていて酷く不気味に感じる。
そして現れた少女2人に目を向けると頭に小さな鬼のツノのようなものが生えており、顔には対になったお爺さんの顔のような面をつけていた。
「それ…翁?」
そう呟くように独り言のように言う。
あれは確かに翁面だった。
昔、おじいちゃんと能楽を見に行った際におじいちゃんから教わったことがある。
「里玖をかしかし〜!!よく知れりかし!!」
「なればこは?」
そう言いながら黒色尉面をつけていた女の子は面を外し、梟の面をつけた。
白色厨翁面をつけていた女の子は狐の面。
2人が同時につけた途端、女の子たちの姿は変わった。
僕が知っているあの姿に。
そう。
ミューエの眷属の梟と狐のあの姿に。
「え、?」
僕がそう戸惑っていると
〔騙されるなんて滑稽なニンゲンだな〕
と知らない声が足元から聞こえた。
『まさか』と思いながら下を向くと、そこには初夏の都の鳥居の台座に座っていたはずの水狐と水梟が居た。
しかも喋っている。
〔我らはキミの助けに来た〕
〔いや言い方が悪いか…〕
〔簡単に言うと通訳だ〕
そう言いながら水梟はにんまりと笑うようにクチバシを開き、頭を怖いほど傾ける。
「ぇ、ちょっと待って…」
情報量が多すぎて理解が追いつかない。
通訳?
てか動物なのに喋れるの?
じゃあなんで最初っから喋らなかったわけ?
色んな疑問が頭を巡るも、キリがない。
だから半信半疑ながら受け入れることにした。
まぁ、確かに先程からこの女の子…
ミイちゃんユイちゃん、月さんが言っていることは分かりにくい。
多分、古語だと思う。
そしてミイちゃんユイちゃんの面と水狐たちが僕に自ら逢いに来たこと。
何か引っかかる…
【… 無視するなどよき度胸かな。なんぢもこの手に食はむや?】
二重に合わさった急な低い声と目の前視界いっぱいに広がる般若。
「うわぁ!?」
それに驚いて尻もち着いてしまう。
気づけばミイちゃんユイちゃんの顔が般若面に変わっている。
こんなの誰もが驚くと思う。
そんな尻もちを着いた僕を見て水狐は相変わらず笑っている。
しかもミイちゃんたちまでも。
なんか性格似てる気がする…
そう思いながら水梟を見ると、
一瞬小さく笑っていたのを僕は見逃さなかった。
「人の子よ。少しばかりミイとユイと遊ばずや?させばこなたの作業も迅速に進めらる。」
そう月さんの声が聞こえてくるも、姿は無い。
てかこれ結構意味伝わるな…
通訳要らなそ。
そう心で思っていると水梟がこちらを見ていたことに気がつく。
なんだか心を読まれてそうな気がし、少し怖い。
「里玖〜!!花いちもんめせむ〜!!」
「傘回しせむ〜!!
【███せむ〜!!】
そう言いながら小さな鬼のツノが生えた頭を僕の腕に擦り付けてくる。
それがいつか刺さってしまうんじゃないかとビクビクしている僕。
そういえばさっき2人の声が重なった際、あのノイズ音のような声になった気がした。
でもノイズ音じゃなくてザーザー降りの雨音のようだった気が…
そう思いながら次の蝶のヒントかなとか考える。
「え、でも蝶って虫だから雨ダメじゃないのかな……」
独り言を呟く。
そう。
虫は大体雨が苦手。
蝶などは特に飛べなくなるから雨の日には見ない。
前の課題は『捕まえれない』だったけど
今回は『雨』……
そういえば蒼葉くんは海斗兄さんに似ていて…
じゃあこの梅雨の都、月さんは僕が知っている人と似てるってこと?
そう思いながら考えるも、やっぱり何も思い出せない。