テラーノベル
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──つがい化から、約二ヶ月。
ミンジュとジョングクは周囲の視線に少しずつ慣れながらも、
誰よりも深く“絆”を結び始めていた。
ジョングクのスタジオ撮影に同行し、控室で彼の髪を整えていると、
ふと、ミンジュの手元が震えた。
「……っ」
「ヌナ?」
「あ、ううん。なんでもない……ちょっと、立ちくらみ」
ごまかしたつもりだったが、ジョングクの目は鋭かった。
⸻
その夜、彼女の体は再び熱を持った。
何かが体の奥から突き上げるような違和感。
普段なら抑制剤で抑えられる“発情反応”とは明らかに違った。
──これは、“共鳴”。
SクラスSubが、SSクラスDomとのつがい化によって引き起こす“特殊反応”。
極めて稀なケース。
記録にもほとんど残っていないほど、希少な現象だった。
⸻
「ヌナ……それ、もう普通の反応じゃない。俺のバースが、ヌナの身体に影響を与えてる」
ジョングクは研究機関に問い合わせ、つがい化の副作用について調べていた。
「体温の上昇、周期のズレ、皮膚感覚の過敏化──
全部、“完全同調”が始まってる兆候です」
「……私、グクのせいで壊れていくのかな」
「ちがいます。ヌナは“変わってる”んじゃなくて、“進化してる”。
俺のつがいとして」
その言葉に、ミンジュは少しだけ安心した。
だが、その“異変”を嗅ぎ取った者が、もう一人いた。
──ユリ。
Bクラスである彼女にとって、Sクラスのミンジュは“雲の上”。
SSクラスDomとのつがいなんて、憎らしいほどの奇跡に思えた。
彼女は裏アカウントで再び活動を始めていた。
《あんな女にグクが汚されるのを黙って見てるわけにはいかない》
その投稿には、同じような嫉妬を抱えるSubたちの反応が相次いでいた。
“つがいの排除”──
それは、法に触れる禁忌でありながらも、
かつて実際に起きたこともある、嫉妬の果ての暴走行為だった。
⸻
その数日後、ミンジュは事務所に向かう途中で、何者かに声をかけられる。
「ミンジュさん、ですよね?お話、少しだけ──」
気づいたときには、腕を強く引かれていた。
「離して──!」
だが、力の差は明白だった。
──その瞬間、背後から風のように現れた影が、相手を地面に組み伏せた。
「ヌナに……指一本、触れるな」
ジョングクだった。
SSクラスDomとしての本能が暴れ、目は赤く染まり、
周囲にいた警備も声をかけられないほどの威圧感を放っていた。
震えるミンジュを抱きしめながら、彼は呟いた。
「これ以上、ヌナを狙うなら……俺の本能が、誰かを壊してしまうかもしれない」
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