テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
優しい出汁の香りがふわりと湯気と共に鼻腔をくすぐった。
ボウルの中で新鮮な卵を数個溶きほぐし
たっぷりの出汁と少々の薄口醤油を合わせてから、よく熱した長方形の卵焼き器へと一気に流し込む。
じゅわ、と小気味いい音が静かなキッチンに弾け、みるみるうちに黄色い生地が空気を含んで膨らんでいく。
それを菜箸で手際よく手前へと巻き、空いたスペースに再び液を流し込む。
この工程を何度も何度も丁寧に繰り返すことで
お箸で上から軽く押せばじゅわっと黄金色の出汁が滲み出るような、料亭風のふわふわな出汁巻き卵が焼き上がった。
隣のフィッシュグリルからは、鮭の塩焼きが爆ぜるパチパチという香ばしい音が聞こえてくる。
小ぶりながらもしっかりと脂の乗った極上の身が、熱線に炙られてじんわりと綺麗な狐色に染まっていく。
皮目がパリッと焼き上がるのを横目で確認した。
その傍らの小鍋では
お湯を沸かして鮮やかな緑のほうれん草をさっと数十秒だけ茹め上げる。
すぐに冷水に取ってアクを抜き
手で固く絞って食べやすい大きさにカットし、おひたしにする。
もう一つの小鍋の味噌汁からは、出汁の芳醇な湯気とともに
純一の好きな豆腐とわかめが優しく揺れていた。
木製のお椀に控えめに盛った
炊き立ての温かい白米と、これらのおかずを丁寧に机へと並べていく。
朝の澄んだ光が差し込む食卓に
どこかホッとする、理想的な日本の伝統的な朝食が完成した。
それから少しして、目をこすりながら寝室から純一が現れた。
「ふぁ〜…おはよぉ、りひとさん……。朝からすっごいいいにおいがするぅ…」
「純一、おはよう。今日は純一の大好きな、出汁をたっぷり入れた出汁巻き卵作ったからね」
「やったぁ!りひとさんの作るお料理はぜんぶ美味しいから、何でも嬉しいけどね!」
純一は嬉しそうに目を輝かせながら食卓の椅子につくと、待ちきれない様子でパクッと卵焼きを口に入れた。
「ん〜っ、おいしっ♡ ほんと、毎日こんなに美味しいご飯食べられるなんて、本当にりひとさんと結婚したいくらい!」
「ふふ、お互いの仕事がもっと落ち着いたらね」
「えっ……!本当に、ぼくりひとさんと結婚できるの?!」
純一は箸を止めて、驚いたように丸い目をさらに大きくした。
「本当だよ。今の日本の法律上、男同士じゃまだ戸籍を入れることはできないけど……二人の愛を誓う結婚式なら、いつでもできるからね」
「するするぅ……!絶対、いつか絶対に結婚式しようねっ!」
「ふふっ、約束するよ。だから、それまでお互い仕事頑張ろうね」
「うんっ!たくさんがんばる!」
「む、無理はしちゃダメだよ?倒れたら元も子もないんだから」