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#一次創作
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第3話 双方連絡
通信の夜は、拠点の息が少しそろう。
地下の通路を歩く足音まで、なんとなく同じ速さになる。食堂で皿を置く手つきも、発電輪のそばで布をしぼる指も、灯りの油を確かめる首の角度も、どこか決まった時刻の方へ引かれていく。
今日は六つとも応答予定だと、昼の終わりにミツが言っていた。
その一言だけで、夜の空気は少し張る。
毎日つながるわけではない。風がひどい日もある。向こうで輪が回らない日もある。赤い砂が通路まで入り込み、人の喉が先に潰れる夜もある。だから六つそろう日は、それだけで少し得をしたみたいな顔になる者がいる。
ナミオも、その一人だった。
もっとも、得をしたい理由は他とは少し違う。
向こうの打音が多いほど、混じる余地も増える。
言葉の間。
報告の端。
返事の癖。
誰かが短く笑いそうになる打ち方。
そういうものが、昨夜から急に気になるようになっていた。
発信室の前まで来ると、すでにカザンが輪の軸を確かめていた。袖をまくった腕に油が光り、鼻筋の横の浅い傷だけ先に動く。
「今日は真面目な顔だな」
「いつも真面目」
「その嘘はもったいない」
ナミオはラジカセを抱え直した。
今日は持ち込むなと言われていない。言われなかっただけで許されたわけでもないが、ミツが何も言わないなら、とりあえず腕の中にあるままでいいことになっている。
トウヤは壁にもたれて靴紐を指でいじっていた。
「六つ全部だって」
「聞いた」
「最後まで起きてられるかな」
「寝るなよ」
「おまえの変な音が混ざったら起きる」
「今日は混ぜない」
「今日は、って言った」
カザンがすぐ笑う。
「ちゃんと考えてるな」
ナミオは返しきれず、発信室の中へ視線を逃がした。
ミツが通信板を机に置いている。細い体つきで、動きだけは迷わない。喉の近くの小さな泥化跡が灯りのゆらぎで見えたり消えたりしている。ハジメは壁際で送受信台の針を見ていた。目がいつものように人より先に金具や反射へ向いている。
「ナミオ」
ミツが呼ぶ。
名前を呼ばれると、いまだに少し背すじが伸びる。
「今日は後ろ」
「うん」
「近づきすぎない」
「うん」
「うんが軽い」
「今日はほんとに」
「ほんとに?」
「ほんとに混ぜない」
ミツは半信半疑の顔もせず、ただ通信板の端を指で叩いた。
「終わるまで、それ持ったまま」
ナミオはラジカセを見下ろした。
「鳴らしてもないのに」
「鳴らせる顔してる」
昨日と似たことを言われ、トウヤが小さく吹き出した。
ナミオは反論しかけ、やめた。たぶん今の自分は、ほんとうに鳴らせる顔をしている。
室内の灯りが一段だけ強くなる。
輪が回り始めた合図だった。
カザンとトウヤが左右につく。床板がゆっくり震え、送受信台の針が起きる。金具の小さな擦れが、これから始まる音の前ぶれみたいに聞こえる。
ミツが座る。
一拍、息を整える。
最初の打音が、乾いた夜に落ちた。
日本からの発信。
確認。
応答待ち。
音は点と線に切れているのに、今日のナミオにはそれが川の上に浮かぶ板切れみたいにも見えた。ひとつひとつは短い。けれど、並ぶと道になる。
最初に返ってきたのはアメリカだった。
返しが早い。いつもより一拍だけ軽い。打音の隙間に、少しだけ弾む癖がある。
ミツが板に目を落としながら読み取る。
発電、安定。
機械修理、一件完了。
水位、やや低下。
末尾に、ごく短い私語。
今日も輪がうるさい。
それを打った相手の顔が、ナミオにはなんとなく浮かんだ。
見たこともないのに。
前へ流した短い髪。徹夜のあとほど顔色が沈む男。片耳だけ少し赤い。笑うと目じりだけが先に動く。
打音の癖から、そんな顔が勝手にできる。
ナミオは自分でも変だと思いながら、ラジカセを抱く腕に少し力を入れた。
次は大中国。
返しは重いが崩れない。
一音ごとの輪郭がはっきりしていて、余計な揺れがほとんどない。そこにいる通信者が、座る背すじまで崩れない人なのだと、音だけでわかる気がした。
収穫、維持。
地下熱、やや上昇。
人員、異常なし。
末尾に、ごく短い確認。
日本、昨夜の異常音、何。
室内の空気が少し変わる。
トウヤの輪がわずかに重くなる。カザンが横目でナミオを見る。ミツは瞬きもせず、そのまま板を押さえた。
異常音。
記録は向こうへも回っている。
ナミオの喉が乾いた。
ミツは短く打ち返す。
内部混入。
損傷なし。
詳細、後日。
その返しはそっけない。けれど、隠してはいない。書いたものをそのまま置く打ち方だった。
大中国からの返しは、少し間が空いた。
了解。
そのあと、ほんの一拍だけ遅れてもう一つ来る。
無事ならよい。
ナミオはその短さに、なぜか胸の奥を軽く叩かれたみたいになった。
そっけない。
でも、やわらかい。
言葉にすればそれだけなのに、打音にすると、最後のひとつが少し長い。それが妙に人らしく聞こえる。
ミツは何も言わず、次へ移った。
ロピからの音は冷たい。
空気が冷たいわけではない。打ち方のあいだに、風を噛んだような細かな揺れが混じるのだ。寒い場所の呼吸は、遠くから聞いても少し違う。
風、強い。
外壁、補修中。
保存食、減少。
そのあとに、短い私語。
今日は星、見える。
トウヤが輪を回しながら小さく笑う。
「こっちは天井しか見えないのに」
「回せ」
カザンが横から言う。
けれど、その声も少しやわらいでいた。
見たことのない星が、打音ひとつで部屋の中へ入ってくる。誰もその形を知らないくせに、一瞬だけ同じ方を見た気になる。
ミツが返す。
こちら、川面のみ。
ロピからの返しは早かった。
十分。
その言葉に発信室の何人かが笑った。
大きくではない。喉の奥だけで崩れる笑いだ。
向こうの通信者も、こっちのことをよく知らない。
それでも、天井しか見えない暮らしを思って、十分と言う。
わからない部分は多いのに、伝わるものがある。
その気配が、乾いた室内に少しだけ残る。
中東からの返しは、いつも乾いた板を爪で軽く叩くみたいな硬さがある。
観測、継続。
赤い砂、舞い少。
昼熱、上昇。
そこまでは報告だった。
次の一音だけ、間が少し変わる。
日本、異常音、規則ありか。
ハジメが壁際でわずかに顔を上げた。
ミツは考える時の癖で喉元を指先で押さえ、それから打つ。
規則あり。
意味、不明。
中東から返る。
意味、不明、よい。
そのあと、ほんの短く続く。
規則だけでも道になる。
発信室が静まる。
誰もすぐには動かなかった。
ハジメの目が少しだけ細くなり、ナミオはラジカセを抱えた腕の中で心臓が鳴るのを聞いた。
規則だけでも道になる。
その返しは、報告ではなかった。
研究者の匂いがする。言葉の形より、その先の手触りを見るような打ち方。向こうの通信者の後ろに、別の誰かが立っているのかもしれない。額に布を巻き、袖口まできっちり閉じた細い顔の誰か。そんな想像が勝手に浮かぶ。
ナミオは飲み込むように息をした。
自分が作った意味のない信号のことが、遠い拠点の別の頭の中で、少しだけ道として置かれた。
それだけで、昨日とは違う夜になっていた。
自治区はいつも遅い。
返るまでの間が読めない。位置不定だからだとミツは言っていた。どこかに留まる拠点ではない。動きながら中継する。だから打音の奥に、歩く音や金具の揺れまで乗ってきそうな時がある。
今日も少し長く待ったあと、ようやく返りが来た。
現在地、伏せる。
中継、可能。
人員、軽傷一。
そのあと、妙な間。
ミツの指が止まる。
自治区から続く。
日本、昨日の音、歌か。
ナミオの指がラジカセの角を強く掴んだ。
誰かが小さく息をのむ。
歌。
その言葉は、この世界では娯楽の方へ置かれる。最優先ではない。報告でもない。けれど、なくなったら困ると誰もが知っているもの。
ミツはすぐには打たない。
表情は変わらないまま、指先だけがほんの少し迷った。
その迷いに、ナミオは自分の胸まで掴まれている気がした。
やがてミツが返す。
歌ではない。
しかし、歌に近いと感じた者あり。
自治区からの返しは、打ち方が少し笑っていた。
なら、半分歌。
「半分歌って何だよ」
トウヤが今度は声に出して笑い、ミツに睨まれて口を閉じた。
けれど室内の空気は、さっきまでより明らかにやわらかい。
異常音。
意味のない信号。
規則あり。
歌に近い。
半分歌。
昨夜ひとつの板に書かれたものが、もうこんなふうに拠点を渡って、違う名前をつけられている。
どれも同じではない。
でも、どれも少し当たっている。
ナミオは自分の中の何かが、嬉しいのか、怖いのか、まだはっきりしないまま立っていた。
最後に、日本から全拠点へ向けた短いまとめが打たれる。
川水、維持。
地下菜、やや減。
輪、良好。
異常音、観測継続。
そして、ミツは一拍だけ間を置いた。
そこに乗せるべきではない何かを、乗せるかどうか決める時の顔だった。
「ミツ」
ハジメが低く呼ぶ。
ミツはそれに答えず、打った。
全拠点、今夜も無事であれ。
発信室の空気が、ほんの少し揺れた。
そんな私語は珍しくない。
珍しくないのに、六つそろった夜の最後に置かれると、違う重さになる。
アメリカから、早い返し。
そちらも。
大中国から、少し遅れて。
同じく。
ロピから。
風は強いが、生きる。
中東から。
こちらも、今夜は残る。
自治区から最後に。
どこにいても、仲間なら届く。
ナミオはそこで目を閉じそうになった。
誰の顔も見ていない。
見たこともない。
それでも今、遠い場所で輪を回し、板を押さえ、短い言葉を打ち返した人たちがいる。その指の重さや、息の間や、眠気や、喉の乾きまで、少しだけ同じ場所に並んだ気がした。
わからない部分は山ほどある。
星の見え方も違うだろう。
川のにおいも違うだろう。
外へ出られる時間も、地面の硬さも、保存食の塩気も、きっと違う。
でも、今夜も無事であれ、に返す時の速さは、どこも少し似ていた。
通信が終わる。
針が伏せる。
輪が止まる。
室内に残るのは、人の呼吸と、耳の奥にしばらく残る点と線の名残だけだった。
最初に動いたのはトウヤだった。
「半分歌って、ちょっといいな」
「おまえ、そこだけ残るな」
カザンが笑う。
「そこだけって、十分だろ」
ミツは板を見下ろしたまま、端に新しい記録を書き足した。
異常音件、複数拠点反応あり。
歌と認識する者あり。
規則性、共有可能性あり。
ナミオはその手元をじっと見た。
「共有可能性、って何」
「そのまま」
「向こうにも通じるかもしれないってこと?」
ミツは書く手を止めずに答える。
「少なくとも、聞いた者が勝手に捨ててはいない」
ハジメが送受信台の針を軽く押さえながら言った。
「それは強いな」
「また褒めてる」
ミツが言う。
「褒めてない。面倒が増えると言ってる」
「それはそう」
カザンが肩を回しながら頷いた。
「向こうにまで半分歌が広がったら、ナミオが調子に乗る」
「もう乗ってる」
トウヤが言うと、ユラが遅れて発信室の戸口から覗いた。
「終わった?」
「終わった」
「六つそろった?」
「そろった」
ユラはそこで目を少し丸くした。
「じゃあ、今日はちょっといい夜だ」
その言い方に、誰も反対しなかった。
食堂では、いつもより会話が長く残った。
保存食の缶を開ける音、湯気の上がる鍋、地下菜をちぎる指先、その全部のあいだに今夜の通信の話が挟まる。
アメリカの輪はうるさいらしい。
ロピは星が見えるらしい。
自治区のやつは歌って言ったらしい。
半分歌って何だ。
意味は通じなくても、なんか伝わることあるよな。
そんな言葉が飛ぶたび、ナミオは皿の中の豆をつぶしながら耳だけをそちらへ向けた。
自分のことなのに、自分の手を離れたみたいな感じがした。
昨日までは、ラジカセの中だけにいた音だった。
今日それは、点と線のあいだをすべり、見たこともない人の耳に触れた。そこで異常と呼ばれ、歌に近いと呼ばれ、半分歌と呼ばれた。
名前を変えながら、少しずつ広がる。
「ナミオ」
ユラが向かいに座り、皿を置く。
「よかったね」
「何が」
「向こうにも、変って思われて」
「それ、よかったって言うの」
「変って思われたあとに捨てられてないなら、よかったってこと」
ナミオは少し考えてから頷いた。
たぶんそうだった。
ただ笑われて終わるのと、変だと感じたまま記録されるのは違う。
ミツが少し遅れて食堂へ来る。細い体を椅子に収め、皿を置くまでの動きがいつも通り正確だ。
ナミオは言うか迷ったあとで、やっぱり口を開いた。
「ありがとう」
ミツはスプーンを持つ手を止めた。
「何に」
「最後のあれ」
今夜も無事であれ。
あの一文がなかったら、ここまでやわらかくはならなかった気がする。
ミツはしばらくナミオを見たあと、皿に目を落とした。
「六つそろったから」
「うん」
「それだけ」
「うん」
「それに、向こうから先にやわらかい返しが来たから」
「うん」
「……打ちやすかった」
最後だけ少し小さかった。
ユラがそれを聞いて笑いを飲み込み、トウヤははっきり笑ってカザンに頭を叩かれた。
食事のあとの通路は、いつもより灯りがあたたかく見えた。
人力の灯りは弱い。
弱いのに、六つの拠点の話を聞いたあとだと、ここだけの灯りじゃない気がする。
ナミオはラジカセを抱え、老爺の部屋へ向かった。
布の戸をくぐると、いつもの熱と油のにおいが迎える。
老爺は起きていた。膝に鳴らない機械を置き、指先で表面の傷をなぞっている。
「今日は長い顔だ」
「長い?」
「遠くまで行ってきた顔だ」
ナミオは入口に腰を下ろした。
「六つそろった」
「ほう」
「昨日の音のこと、向こうにも伝わってた」
老爺の目が少しだけ細くなる。
「何て言われた」
「異常」
「うん」
「歌に近いって言う人もいた」
「うん」
「半分歌って言ったやつもいた」
老爺はそこで笑った。
喉の奥だけで崩れる、小さな笑いだ。
「いい名だな」
「ほんとに?」
「全部ぴったりじゃないところがいい」
ナミオは膝の上のラジカセを見た。
傷だらけの箱。
継ぎはぎの持ち手。
赤い砂の入りこんだ溝。
それが今夜、遠い拠点へ自分の断片を渡した。
「向こうの声ってさ」
ナミオが言う。
「顔わかんないのに、なんとなくわかるんだよ」
「何が」
「たぶん、打ってるやつの感じ」
老爺は頷いた。
「手つきは音に残る」
「そういうもん?」
「字に癖が出るのと同じだ」
ナミオはその言葉を少し噛んだ。
字。
見たことのないものではない。古い紙の上に残る線。けれど自分たちの今の暮らしでは、板に刻む印の方が近い。
「ロピのやつ、たぶん笑うと急だ」
「ほう」
「大中国のやつ、背すじ伸びてそう」
「ほう」
「自治区のやつは、歩きながら打ってる感じ」
老爺はそれを否定しない。
「じゃあ、もう半分会ってるな」
「半分会ってる」
「顔は見なくても、手の間は見える」
その言い方がナミオには好きだった。
手の間。
音の間。
わからない部分を埋めるのは、正確な情報だけじゃないのかもしれない。
通じなかったところを、勝手にやさしく受け取ること。
少しだけ多めに想像すること。
仲間として先に置いてみること。
それで、離れた拠点同士が六つの夜を渡っている。
老爺の部屋を出る頃には、通路の灯りがいくつか消え始めていた。
拠点が眠る前の静けさだ。
ナミオは川沿いの見張り小屋の下まで歩いた。
地上へ出る戸は閉じている。夜でも簡単には開けない。赤い砂がどれだけ残っているか、その日の風がどれだけ意地悪か、誰にも読み切れないからだ。
それでも川のにおいは上がってくる。
湿った空気。
鉄気まじりの水。
遠くの壁にぶつかって返る流れの音。
ナミオは膝を抱えて座り、ラジカセを胸に置いた。
今日は鳴らさない。
抱えているだけでいい気がした。
アメリカ。
大中国。
ロピ。
中東。
自治区。
日本。
六つ。
点と線だけでつながるには多すぎるくらい遠いのに、今夜は同じ卓についた仲間みたいだった。
見たことのない顔が、音の癖で勝手に浮かぶ。
片耳が少し赤い男。
髪をきっちりまとめた人。
寒さで指が割れた若い通信者。
額に布を巻いた静かな目。
留め具を小さく鳴らしながら立つ人。
そして、この地下で板を押さえるミツ。
どこまで当たっているかなんてわからない。
わからないままでいいのかもしれない。
わからない部分を、敵ではなく仲間の形で埋める。
今夜の通信は、そんな夜だった。
ナミオは目を閉じた。
耳の奥で、打音がまだ続いている。
輪のうなる音。
ミツの短い返し。
ロピの十分。
中東の規則だけでも道になる。
自治区の半分歌。
今夜も無事であれ。
そちらも。
同じく。
風は強いが、生きる。
こちらも、今夜は残る。
どこにいても、仲間なら届く。
その一つひとつが、赤い砂だらけの世界の上に細い糸を張っていく。
切れそうで、でも切れていない。
弱そうで、でも毎夜つながる。
ナミオはラジカセの角を指でなぞった。
意味のない信号は、まだ意味を持っていない。
けれど今夜、あれはひとりの持ち物ではなくなった気がする。
遠い耳が一度受け取ったものは、もう少しだけ長く生きる。
明日になれば、また労働がある。
保存食の塩気に顔をしかめ、地下菜を運び、輪を回し、泥化の跡をこすりながら眠る。
同じ夜の繰り返し。
それでも、六つの拠点にそれぞれの眠れない人がいると知っただけで、暗さの形が少し変わる。
ナミオはゆっくり立ち上がった。
地下への階段の前で一度だけ振り返る。
見えない地上。
閉じた戸。
赤い砂。
その向こうに、見たこともない拠点がいくつもある。
わからないことだらけだ。
でも、わからないまま届くものもある。
それを今夜は、ちゃんと知った。
ナミオは地下へ降りた。
通路の先で灯りがひとつ消える。
またひとつ消える。
最後の灯りが残るあいだ、耳の奥ではまだ、点と線が静かに行き来していた。
遠さをそのまま抱えたまま、同じ仲間として呼び合うように。