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ピエロの衣装をした、やせ形の男が現れる。EDMとともに出されたテロップは『ばっくんチャンネル』。
「はいっ。暴露系活動家のー、ばっくんです。
突然ですが皆さんは、婚姻関係にあるパートナーが浮気をしていたらどうしますか? まあね、割と日常に潜む問題の中では難しい部類まもかと思うんですよ。結局、そういう人とはうまくやっていけないだろうし、初めから結婚などしない。という判断をとれるのが理想ですよね。ですが中には、復讐をする、と答えた方もいたかもしれません。果たして、あなたは本当に被害者なのですか?
今回取り上げさせてもらうのは、今話題の収納アドバイザー系動画投稿者『みらみら』さんです。情報提供者様によりますと、みらみらさんは一般企業に勤める夫が浮気をしていることに気づき、その会社へ告発を行ったとのことです。この時点で犯罪であることは明らかですが。その上なんと、その浮気というのは彼女の勘違い、ただの妄想だったのです。
記者の方の善意で、今回の事は事前に収まったそうですが、仮にこれが実行されていたらと思うとぞっとしますね。独りよがりな妄想で夫の社会地位、会社の信用を崩そうとしただなんて、まともな人間のする事とは思えません。…………」
動画公開から半日、その再生数は、現時点ですでに十万回を超えていた。さらには、この内容についてネット上の著名人ら数名が反応を見せ、匿名掲示板等のSNSサイトにトレンド入りする。
みらみらはその炎上っぷりから、めらめらと暗喩されるようにもなる。
また、みらみらは顔出しでの活動を多くしていたため、彼女の同級生や知人を名乗る人物により、『誉田美蘭』という本名が明かされる。いくら確かな情報化を判別できない、ただの匿名アカウントによる言葉であっても、今回はその名だと認識しているアカウントが大半であったことから、おそらくはそうなのであろうと大衆に見なされ、誉田美蘭はたったの一晩で社会の玩具へと成り果てた。
動画公開から一日、卒業アルバムが流出し、誉田美蘭という名で彼女を悪く言うのをためらっていた層でさえ、彼女で遊び始める。ばっくんチャンネルの本動画の再生数は四十万に達し、その勢いは今後もなお増していくことが見込まれる。
では、一体何が大衆を動かしたのか。悲しいことにそれは、彼らのいじめる美蘭が志したものと同じであった。
実は、この暴露で本当に人々が激怒したのは、彼女が勝手に行った復讐なぞではない。いや、正しくはそれも含まれるのだが、彼女をより多くの人間に裁かれるべき悪と感じさせた、もっと人間の琴線に触れる、彼女を人間と見なせなくなるような過去があったからであった。
そう、それは正義感と呼ばれる怒り。
情報提供者曰く、誉田美蘭は……