テラーノベル
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翌朝。 アンナが持ち帰った書類をほぼ徹夜で精査し終えた私は、執務室へ侍女長を呼びつけた。少し隈の浮いた目は、極限の集中状態で異常なほど冴え渡っている。
対面した侍女長は、鼻で笑いながら扇子をゆらした。
「皇太子妃殿下、朝から何の御用で? 帳簿など、遊び半分で触るものではございませんよ」
(……ええ、そうね。100回目までのソフィアなら、あなたの適当な数字に騙されていたでしょうね)
私は無言で、帳簿を叩きつけた。
「侍女長。昨年雨季、石鹸の仕入れに3000万ルク計上されているわね」
「……ええ。清潔を保つのは王宮の義務ですから」
侍女長は余裕の表情を崩さない。
「おかしいわね。この領収書の発行日、ギルド公報によると工房は浸水被害で休業中よ。存在しない石鹸をどうやって仕入れたのかしら?」
机の上に魔法複写機でコピーしたギルド広報をばさっと置いた。
「な、なっ……!?」
侍女長の扇子が止まる。私は立ち上がり、羽ペンを剣のように侍女長の喉元へ突きつけた。
「まだあるわ。『神殿へ寄付した』と言い張る分の領収書。安物の屑石で複写してくれたおかげで、文字が掠れて二重計上バレバレよ」
「『公金横領』がどんな刑罰になるかご存じかしら?自首するか、破滅するか。……五秒で決めなさい。私の時給、あなたの命より高いんだから」
王宮の公金横領は重罪で、自首して多額の罰金を納め刑期を短縮するか、一生、鉄格子の向こうで『無償労働』に励むかの二択である。
「あ、あ、ああ……っ!」
侍女長が絶望に崩れ落ちると同時に、控えていたアンナが冷ややかに呼び鈴を鳴らした
入室してきた騎士たちが、無様に叫ぶ侍女長を冷徹に引きずっていく。
「ひっ、お、お許しを……!皇太子妃殿下……!」
「連れて行って。証拠品はこの書類一式よ」
私は深く溜息をついた。
(あー、疲れた。決算期の徹夜明けみたいな気分……。とりあえず、これで予算権限ゲットに一歩近づいたわね。それにソフィア、あなたの敵もとれたかしら?)
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