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「どうして……、こんなこと、したんですか?」
「どうして? そりゃあ恨むだろ? 元はと言えばアンタのせいで上澤家をクビになったんだからさぁ」
「…………っ」
高間さんは冷たい視線を向けながら、何故こんなことをしたのかという私の問い掛けに答えていく。
「それは、確かに、申し訳無かったと思います……でも、だからって……」
彼が言うに、上澤家をクビになったことが発端のようだけど、それについては私に非があったから何も言えないけれど、だからと言って実家に嫌がらせをするのは違うと思う。
「私を恨んでいるなら、私に直接何かをしてくれば良かったじゃない! どうして家族を、店を巻き込むの? こんなの、酷過ぎる……」
「だってお前、全然俺の気持ちに応えねぇじゃん。優しくしてやったのに、恩を仇で返しやがってよ」
「え?」
「俺が気持ち伝えてやっても渋ってさぁ、何様だよ? テメェがさっさと俺の告白受けてりゃ、店の被害は最小限で済んでたんだぜ? 要するに全てお前が悪いんだよ」
高間さんは嘲笑うように言葉を並べ立てて私を責めてくる。
(私が彼からの告白を素直に受けなかったから、今回の嫌がらせをしたの? そんなの、理不尽過ぎる)
悲しくて、悔しくて、怒りが込み上げてきた私は彼を睨み付けて言い返そうとした、その時、
「情けねぇ男だな。女にしがみつかなきゃ生きられねぇとか。勘違いしているようだが、テメェを上澤家から追い出したのは侑那とのことだけが原因じゃねぇ。テメェがしてきた数々の悪行が明るみになったからクビにしたんだ」
私たちの間に割って入って来た巴さんは、高間さんに向かってそう告げた。
「はあ? 俺が何したって言うんだよ?」
「今回のようなことを、これまでもして来ただろうが。まあ、お前のその猫かぶった性格のせいで、被害者の殆どが、当時お前が犯人だったとは微塵も思わなかったみてぇだがな」
「……はぁ、そこまでバレてんのかよ。まあ、いいけど」
巴さんの言葉に、観念したのかこれまでの悪行とやらを素直に認めた高間さん。
そこへ巴さんの代わりに如月さんが、これまで高間さんがしてきたという数々の悪事について読み上げていく。
すると、うちの店のような被害者が五人くらいはいたという事実に、今回の私のように、気があるように近付いて相手の懐事情に踏み込み、お金を騙し取るような詐欺行為までやっていた高間さん。
それでも、彼の口の上手さと人当たりの良さが原因で、まさか高間さんがそんなことをしていたなんて思いもしなかったと言っていたらしい。
最終的に上澤家お抱えになったことで、金銭面にも困らなくなっていたことから、暫くは大人しくしていたようだったけれど、私の存在が、彼の日常を変えたという。
「来栖に言い寄ったのは、この店が目的だろ? パティシエの娘で実家に店を持っている来栖は、お前にとってかなりの好条件だったようだからな」
そして、巴さんの言う通り、私に言い寄って来たのは、いずれ上澤家を辞めた後の行き先に困らない為で、あわよくば、私と結婚してパティシエの自分がいずれ店を継ぐというシナリオを想定していたのだと知った。
「ったく、折角上手くいきかけてた計画が台無しだ。嫌がらせに困ってるところに俺が現れて、親身になってその気にさせて付き合って、最終的に店を貰うつもりだったのによ。はぁ、女は良いよな、どんなにどん底でも金持ちの男に気に入られさえすれば、そうやって助けてもらえてよ。どうせ、身の回りの世話とか言って身体使って取り入ったんだろ? じゃなきゃ、助けたりしねぇだろうしさぁ」
そんな、人を馬鹿にするような言い方をしてくる高間さんに頭に来た私が反論しようとした、次の瞬間――
「言葉には気を付けろ。来栖は決してそんな女では無い。お前とは違い、仕事には常に懸命に向き合っていた。テメェの勝手な想像でコイツを傷つけることは、許さねぇ」
巴さんは高間さんの襟首を掴むと、冷たく鋭い視線を向けながらドスの効いた声で叱責した。