比較的近い所の赤い石、魔核を出来る限り集め終わった善悪は、嬉しそうな笑顔で、キャシィとウィリアムに向けて感謝の言葉を綴った。
「何も知らず、暗中模索(あんちゅうもさく)の拙者達に優しく接してくれて本当に助かったでござるよ、キャスとウィル、これからも宜しくでござる、ほれ、この通り」
そう言って、深々とンナメリカ人の二人に、深々と、本当に深く、足元まで届く程深く、頭を下げたのであった。
驚いて、固まってしまった知日派のキャサリンよりも、一層驚きつつ、しかし、瞬間に反応してくれたのは、まんまアングロの大男、ウィリアムの方であった。
「おい、コーフク! 止めろヨ! さっきは嫌な言葉を言っちまったが、あんなのは本気じゃネェよ、なぁ、おい、お前だって分かってんだろうが! 米日の同盟関係を誰よりも心地よく思ってるのが、頼もしいと思っているのが俺達アメリカ人だって事を…… だから、頭を上げてくれよ、俺達に出来る事ならさぁ、何でもするつもりなんだぜ? 分かるよなぁ、コーフク?」
頭を下げていた善悪はその言葉を聞いて感動していた……
ありがとう、メリケン! と…… やっぱり単純で良かった、と……
そしてオーバーアクションで言ったのであった!
「ううぅ! ウィリアム、ありがとう、で、ござる! 君達との友情は他に代える事が出来ぬ日本の財産でござるよっ! くぅ~、くっ! じゃあ、僕チンたち急いで行く所があるから、この赤い石が、悪魔に戻らないように見ていて欲しいでござるよ、同盟者として! すまないでござる! しかし、頼むでござる、同盟者として……!!」
そう言っている間にも、続々と集められる赤い石、魔核を前にして、聖女キャシィが悲鳴の様な叫びを上げる。
「ちょ、チョット、コーフク、こんな大量の魔核、アタシ達二人で押さえられるか、ドウカ……」
「うん、頼むでござる! 死なないでね? んじゃ!」
そう、見捨てるように言うと善悪はスプラタ・マンユの七柱と、戻って来た三柱の魔狼と共に、ボシェット城の内部へとその身を投じたのであった。
進入した一階層は虚栄のグローリアは当然居らず、ガッラーンと只広いだけの空間が広がっており、暗く静かなままであった。
まあ、コユキがここの敵? 大罪的なヤツを何とかしたのかな? と考えた善悪は、さっきまで頑張り続けてくれた狼達(今は秋田犬位)三匹にお礼を言う事にしたのであった。
「あ、まだお礼を言ってなかったでござるな、チロシロクロ、見事だったでござるよ! 本当に強い、いや強すぎる、格好良い狼でござったよ!」
「ありがとね、善悪様、魔王種位までだったら三匹揃ってたら誰にも負けないから、いつでも言ってね♪」
茶色のワサオっぽいチロが代表して答えてくれた!
ああ、良かった、これで、心強い味方が又増え、た? 善悪は慌ててチロ達に聞く。
「んんん! チョット待って! そんなに強い三匹が、捕獲されて番犬にされる制約を受けたって、アスタロトってそんな凄まじい悪魔なのでござるか? ねぇ? コユキちゃんやばいんじゃないの?」
言いながら善悪はまだ見ぬボシェット城の上部へとオロオロと視線を向けてしまうのであった。
問われた魔狼たちは平気な顔で善悪に告げた。
「御心配なく、我等を捕らえたのはアスタロトではございません、善悪様」
とシロ。
「その通り、強さは兎も角、あの脳筋魔神の術式に捕らわれる事はございません」
とクロ。
「我々三匹が同時に捕らわれたのは、ストゥクスの河川敷で遊んでいた一瞬の隙を衝かれての事、まあ、かの魔神バアルが現れるとは夢にも思わず、不覚を取った次第です、てへへ」
チロがテヘへと言ってる間に、善悪の表情はどんどん青褪めて行くのであった。
「ちょ、チョット、バアルって? あのバアルでござるか? 神、いや絶対神とか名乗りを上げたやつ等を次々殺しちゃう…… 神殺しの…… バアル?」
違うって言って、そんな思いは犬共には一切伝わらなかったようで、ワンころ達は声を揃えて言ったのである。
「「「はいっ! 神殺しのバアルです!」」」
「くうぅぅぅぅ~、こ、コユキちゃん~!」
叫び声をあげた善悪は、大慌てで上の階へと上がる手段を探し始めるのであった。
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