目立つことは避けたいので、
変装魔法を使って髪色をバターブラウンにし、瞳を碧色にする。
服装は伯爵家くらいの装いをイメージして、
薄灰色のズボンにシャツの上から灰色のベストを着る。
所々に銀色の刺繍が施されており、上品にかつ、動きやすい服装だ。
碧のネクタイに銀のタイピンを止め、
黒靴を履き、ふちのの細い銀の眼鏡をかける。
片方の横髪を耳にかけ、髪を1つに束ねる。
そして上着を羽織ると伯爵家の三男ぐらいには見えるだろう。
まあ、こんなもので十分だろう。
「行ってきます」
「行ってらっしゃいませ」
執事のフルードに見送られて外に出る。
馬車で行くよりも自力で行く方が速いので早足で街へ向かう。
朝早いので外の空気は冷たいなあ…。
薔薇園は街の中央より少しだけ外れた所静かな場所にある。
徒歩だと30分程度といったところだろうか、そんなに離れてはいないが、あまり人の気配がないのだ。
歩いていくと甘い香りが風に乗って漂ってきて僕は思わず感嘆(かんたん)した。
優雅で品のある甘い香りだ。
さらに進んで行くと薔薇で包まれた薔薇園が見えてくる。
薔薇は門の外にも出てしまいそうなほどに沢山咲いていて一つ一つが意気揚揚(いきようよう)と美しく咲いている。
辺り一辺満開の薔薇だ。
「おや?随分早くから可愛らしいお客さんが来たねぇ」
門の目の前で来ると、中からお爺さんが出てくる。
「知り合いにここの薔薇は見事だとお伺いしまして、僕、薔薇が好きなんです」
「そうかいそうかい、君みたいな美少年に興味をもって貰えて嬉しいよ、ゆっくりしていくといい」
「ありがとうございます」
お爺さんに御礼をして門の中に入る。
門をくぐると薔薇の甘く優しい香りがふわっと広がり、全身が薔薇で包まれたような、そんな感覚になる。
中はどこもかしこも薔薇で美しく飾られ幻想的な空間が広がっていた。
「うわぁ……立派でとても素敵な薔薇達ですね……!」
思わず感嘆の声をもらすとお爺さんはそれは嬉しそうに微笑んで
「ありがとう、嬉しいよ。そういえば朝早いけれど、朝食はもう食べたのかい?」
「いいえ、まだですね」
「そいつは丁度良い、今からサンドイッチを作るんだよ、良かったら食べってくれ」
「え、いいんですか…?」
「ああ、君みたいな若くて可愛い男の子に興味を持ってもらえて嬉しいんだよ、君なら大歓迎だよ」
「……ではお言葉に甘えて」
「ふぉっふぉっ…そうとなれば腕がなるなぁ…最高のサンドイッチを最高の薔薇園で召し上がれ」
「あ、ありがとうございます…!」
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