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私には卯月という幼馴染兼親友が居る。
誕生日は4ヶ月違いで、
時間的には私の方が年上。
私の家の庭には青色の朝顔が咲いていて、
日向の家の庭には
黄色のアネモネが咲いていた。
私と卯月のお気に入りの場所は
古くからある、
小高い丘の上のブランコだった。
今ではそのブランコには蔦蔦が
張り付いていて、
昔みたいに漕げそうには無かった。
「日向~、アイス買ってきて!」
うわ、また始まった。
この言葉を聞くと毎回背中に寒気が走る。
「また?毎日アイスばっか食べてたら太るよ」
「日向に世話してもらえる方が幸せ」
「子供か」
「いや、子供以下か」
「も~….うるさいよ!」
「はいはい…パシリは今すぐ行ってきますよ~..」
あ~…面倒くさ…。
でも卯月の頼みだし…しょうがない..。
そんなことを考えつつ、
私はコンビニへ足を早めた。
「お待ちどうさま」
そう言いながら私は
卯月にアイスが入ったコンビニの袋を
渡した。
「てんきゅ~」
「お!パピコじゃん!!分かってるね~」
「まぁね」
「一緒に食べよ!」
「いや、いいよ」
「一人で食べな」
「え~?私が太っちゃってもいいわけ~?(笑)」
「はぁ….分かったよ..」
そう言いながら私は
卯月の手に持っているパピコを
2つに分けて、片方を卯月に渡した。
「Thank you」
「うわ、うざ(笑)」
「ww」
「ほっぺについてる」
私は無意識に卯月の頬に付いているアイスを
指でとり、その指を口へ運んだ。
すると、私のことを凝視している卯月と
目が合った。
「ん?何?」
「え…今..え…?」
「何?(笑)」
「あぁ、今の?もしかして惚れちゃった?」
とふざけながら言うと、
「いや!私じゃなかったら惚れてなかったね!!」
と卯月は焦り気味に返事した。
「ふ~ん…」
『卯月じゃなかったら惚れてなかった』 …
ね~。
私だったら….完璧に惚れてる..。
そんなことを考えてると
ほのかに顔が熱くなった気がした。
「それよりさ!担任の○✕がさ!!」
「私にだけ宿題出すんだよ!?」
「酷くない!?」
「まぁ、頭悪い卯月のせいじゃない?」
「ウ”….そうだけども..」
私が言うと図星だったのか
卯月は顔を青くした。
「しょうがない。手伝ってあげるから」
「本当に!?」
私がため息混じりに言うと、
尻尾を振っている犬のように
卯月は喜んでいた。
「うん」
「じゃあ、いつもみたいに私の家来てよ!」
「最初からそのつもり!」
「やったー!!」
そう言って私は卯月と一緒に
卯月の家へ向かった。
人生の神様は時に良いことをしてくれる。
でも、残酷なこともする。
もしかしたらその『残酷なこと』の対象者に
私が選ばれてしまったのかもしれない。
このときから私は
自分の死が近づいてきている予感が
していた。
何らかの事故や事件の『死』ではなく、
寿命や余命の方の『死』だ。
でも、 私はこのことを卯月に伝えるつもりは
一切無かった。
もしかしたら卯月は自分のせいで
私が居なくなったのだと
責めてしまうと思ったからだ。
そこで私は良いことを思いついた。
私たちのお気に入りの場所、
あの丘の上のブランコに
手紙を括りつけようという
考えだ。
そこで私は早速、手紙を書くことにした。
手紙には今までの思い出話や
今まで素直になれなかったこと。
そして、
卯月を女性として好きだ ということを
書いた。
気づいたら手紙にはいくつかの水滴が
落ちていて、
私は自分自身が泣いていることに
気がついた。
その夜、
私はあの公園の丘のブランコに
手紙と1輪の青のアサガオを括りつけた。
何気なく後ろを振り返ると、
綺麗な街明かりが見えた。
今まで卯月と、
この蔦だらけの思い出のブランコで
一緒に夜景を見たことは無かった。
それのせいか尚更、虚しくなった。
「卯月と一緒に見たかったなぁ…」
私は声を殺して静かに泣いた。
まるで夜の静けさに溶けてしまうように。