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ある
28
柘榴とAI

270
花子
セツは皇太子を殺した。
天国にいるはずの父親の元へ行けるように、一日も欠かさず父親の遺言通り正しく生きてきたが、よりにもよって父親が忠誠を誓っていた皇族を殺してしまった。
そんなセツは間違いなく地獄行きで、父親に会えるはずがない。
ならいっそ、地獄の果てまで皇太子を追いかけ何度も殺そう。一人だけ楽になるなんて許さない。
そう思って自ら命を絶った。
しかし今のセツを包み込むのはいつもの暗闇と、頬を撫でるそよ風と、清潔なシーツの温もりだった。
近くで低い声の人間がぽつぽつと会話している気がする。
少しずつ意識を浮上させ、ついに瞼を開いた。
視力を失って以来見ることのなかった天井と、精巧な造りの照明。地獄でないことは確かだ。
先程の低い声が隣から聞こえ、頭だけを動かしてみる。
「起きたか」
そこには小さなテーブルを挟んで二人の男がカードゲームをしていた。
どちらもセツに一瞥もくれず、カードゲームに夢中だ。
もう片方の男もカードを見つめながらセツに声をかけてくる。
「少し待っててくれ。もうすぐ終わるから」
セツは状況を全く飲み込めなかったが、二人の男のことは知っている。
皇太子への忠誠の証しとして視力を失ってから数年は経ち、容貌は最後の記憶から変わっているが確かに8年前にセツが剣を教えていた「ハント兄弟」だ。
ハント兄弟のうち、弟の方がカードをテーブルに置いた。
「俺の勝ちだな」
垂れた目尻に皺を作り、大きな体躯で柔和に微笑む男が弟のエドガー・ハントだ。
柔らかい金髪は騎士学校に通っていた頃の7年前と比べるとそれなりに伸ばしたようで、前髪ごと後頭部でまとめられている。
セツは自分がどれくらい眠っていたかは分からないが、セツが皇太子を殺した時エドガーは25歳だったはずだ。18歳の頃には生やしていなかった髭を男らしく揃えている。
子供の頃から負けず嫌いで兄に努力で対抗していたからか、体格は隣に座る兄より立派になっている。
丈夫な骨格に恵まれ努力家。どうやらセツの指南が終わり騎士の育成学校に入ってからも鍛錬は続けていたらしい。
セツは少し誇らしく思った。
ハント兄弟のうち、兄の方が弟のカードを見て声を荒らげた。
「なんだと? お前、イカサマを使っただろ 」
「先に使ったのはお前だろ。同じ手が通用すると思うな」
「お前には使ったことなかったはずだ!クソ、通りですました顔してた訳だ。しばらくクラブに顔を出してなかったのもこれが理由か! 一体誰を買収しやがった」
「人聞きが悪いことを言うな」
兄のイザーク・ハントは7年前と変わらず短い金髪を刈り上げ、鋭い目付きを更に強調させている。
こちらは髭を律儀に剃っているようで、エドガーの一歳歳上だが並ぶとどちらが兄か全く分からない。
エドガーと同様、体躯からして今も鍛え続けているのがわかるが、エドガー程の筋肉量は無いようにみえる。捲られたシャツから出ている腕もエドガーの方が太い。
剣の稽古をしていた頃はセツに何かと突っかかったり、使用人達を振り回したりで大人を困らせてばかりいた。弟のエドガーを子分のように扱い二人同罪として伯爵によく怒られていたはずだが、大人になった今の様子を見ると、エドガーもやり返す時があるらしい。
正直傲慢で乱暴な所があったイザークには手を焼いていたので、悔しそうにしている姿を見ると胸がすく。
兄のイザークが刈り上げた後頭部を悔しそうにかき、乱暴に立ち上がるとベッドへ近寄ってきた。
弟のエドガーも上機嫌に話しながらセツの側へやってくる。
「俺が勝ったから、先にセツに挿れるのは俺だな」
「勝手にしろ」
イザークがセツのいるベッドの脇に座り、エドガーはサイドテーブルに置いてあった小瓶の中身を水の入ったグラスに注いでいた。
困った。全く訳が分からない。
そもそも何故セツは今生きているのか。
確かにあの時自分の首を剣で掻っ切ったはずだ。
皇太子に木偶の坊、欠陥品、下賎な売女等々言われまくっていたセツだが、剣の扱いだけは誰にも負けない自信があった。視力が無かったとはいえ、そんなセツが死に損ねたとは思えない。
混乱したままとりあえず体を起こすと、弟のエドガーが謎の液体が入ったグラスをセツに差し出した。
とりあえずセツは一言も発していないので感謝の言葉と共にエドガーからグラスを受け取った。
「えーっと。お久しぶりです?ありがとう」
ハント兄弟に敬語を使ったことは無い。弟のエドガーが不思議そうに首を傾けながら微笑んだ。
状況が読み込めず混乱しているのはセツだけらしい。
受け取った謎の液体は薬か毒か。皇族殺しという死罪どころか一族皆殺し級の犯罪を犯したのだから、状況的に考えて毒の可能性が高い。
セツの心は崇拝していた父親が死んでしまった時に一緒に死んでしまったし、縋っていた皇太子も自分の手で殺してしまったのだから、今更残された価値のない自分の肉体が何処でどのように死ぬかはどうでもいい。
そのため薬でも毒でも構わないが、聞くくらいは許されるだろう。
首を傾げながら口を開く。
「毒?」
セツの脇に座る兄のイザークが返答する。
「そんなものだ。体に害はないから安心しろ」
体に害のない毒などあるか。本当に訳が分からない。
しかし目の前の男達はセツの恩人であるハント伯爵の息子だ。拒否する選択肢はない。
セツは訳が分からないままグラスを一気に煽った。
「毒と言われた物を勢いよく飲むな、阿呆」
イザークに怒られた。
飲めと促したのは二人だ。理不尽だと思う。
折檻や拷問のための毒なら痛みが訪れると思ったが、喉と腹の底が熱くなるだけで特に変わった様子がない。自白剤の類だろうか。
喉に手を当て首を傾げていると、イザークの顔が近づいてきて唐突に唇を重ねられた。
「んん?!」
驚きでグラスを落としそうになるとエドガーがグラスをセツの手から拾い、イザークの隣に座り込む。
乱暴者のイザークの唇がセツの唇を舐めたり噛んだりして奥に入れさせろと要求してくるが、皇太子以外との男性経験を持たないセツには受け入れ難かった。
後頭部をがっしりと掴まれたままゆっくりとベッドに沈められる。
エドガーよ、何故止めない。
イザークを窘める係だったはずのエドガーはセツの訴える視線に気付かず、布団を勝手に剥いでセツの白い脚を撫でている。
一向に口を開かないセツにイザークが一度唇を離した。
「おい、口を開けろ」
「んん!(何故!)」
「お前は俺達の所有物なんだから、言うことを聞け」
「んん?!(何故?!)」
「イザーク、あまり強引にするとセツに嫌われるぞ」
苛立ったイザークが片手でセツの慎ましやかな胸を鷲掴みした。驚いて声が上がる。
「あ?!」
その一瞬の隙に、イザークの分厚い舌がセツの口内に侵入した。
乱暴で、熱烈な接吻にセツは動揺を隠せない。
相手は記憶の中では5歳年下の弟子達だ。伸び代のある子供達としか認識していなかった。
そんな子供達を本気で跳ね飛ばす気には到底なれず、そして5年間皇太子に無理矢理暴かれ続けたセツの体は勝手に大人しくなっていく。
セツは早く終われ、と目を強く瞑りイザークの接吻を受け入れていると、腹の底の熱が全身に広がるような感覚に気付いた。
歯列や上顎をなぞられると耳の下が痺れ、下腹部が疼く。
体罰とは程遠い感覚に戸惑いイザークの大きな胸板を押し返すと、イザークは抵抗なく離れた。
「効いてきたか?」
イザークはセツの頬がほんのりと染まって額に汗を滲ませた様子を見て口角を上げた。
「折檻してもらえると思うなよ。俺達はあのクソ野郎じゃないからな。覚悟しろよ」
先程飲まされたのは媚薬の類だったのか。
どうせ犯されるなら、玩具のように痛めつけて欲しい。
セツは父親を救えなかった無念と共に生きているから、虐げられたり嬲られたりされるなら贖罪になるので甘んじて受け入れる。
イザークの深碧色の瞳を見上げて懇願の意を表すが、エドガーに脚を引っ張られて気が逸れる。
「心配しなくていいよセツ。死ぬ程気持ち良くなるだけだから」
それが問題なのだ。しかも何故この兄弟は当然のように皇族殺しの罪人であるセツを慰み物にしようとしているのか。
まさかセツによる青年時代の稽古が厳しかったと不満を抱いていたのだろうか。いや、厳しくしたつもりは毛頭ない。全く分からない。どうしよう、可愛いとさえ思っていた弟子達が狂った。
どう考えても二人の意図が読めず苦しんでいる間も媚薬によって体温が上がっていく。
熱に浮かされたセツは、早い段階で思考を放棄することにした。
どうでも良い。二人が飽きたらまた自死を計れば良い。
セツには地獄まで皇太子を追いかけるという目的しか死んだ心に残っていなかった。
抵抗をやめると二人がセツの衣服に手をかけ、一瞬にして全裸にされた。
皇太子に犯されていた時は視力がなかったから男に肌を曝け出すのを自分で見るのは初めてだ。
羞恥で無意識に胸を手で覆おうとすると、イザークに阻止されまた口付けが降ってきた。
イザークの左手がセツの胸に這い、唐突に先端をきつく摘む。
「ん!」
媚薬で感度が上がった状態で敏感なところを刺激され、無意識に脚を揺らした所でエドガーが両脚の間に潜り込んでいることに気付く。
「セツのここ、処女みたいに狭そうだ。月の雫はあのクズが残した痕も全部消したんだな」
エドガーが秘部を広げて観察している。吐息が敏感なところに届いて腰が震える。
しかしセツは快楽を求める体とは別に、聞き捨てならない単語を聞いていた。
「んん、はぁ、つ、月の雫?!」
イザークの長ったらしいキスから逃れ、視界の殆どを占めているイザークに正気かと目で訴えた。
イザークは口の端を一度舌で舐めると、両手でセツの胸を弄りながら応えた。
「そうだ。覚えてないのか? あの日、お前が勝手に死のうとしたから皇太子が持っていた月の雫を全部お前に飲ませたんだ。どうやら飲ませる量を間違えたらしいけどな。まあ、若返って良かったじゃないか」
「全部飲ませた?!」
「気にするのはそっちじゃないだろ」
月の雫とは、万病に効くだけでなくどんな怪我さえもたちどころに治してしまうといわれている、皇族のみが所有する神秘の霊薬だ。
皇族でさえも一人一瓶という希少性のあるそれを、一瓶丸ごと全て飲まされたとは。セツの体は存在するだけで不敬の塊だ。死んだら死体を燃やして灰にしてもらおう。
そして何故そこまでして生かされたのか。先程のイザークの発言を信じるとすればセツに月の雫を飲ませたのはハント兄弟だろう。
ハント兄弟はセツが知らないうちに本当に狂ってしまったのか。
セツは一瞬二人の父親であるハント伯爵の顔を思い出して嘆いたが、エドガーが敏感な秘部に吸い付いてきたことによって快感で思考がすっ飛んだ。
機嫌の良い皇太子に弄られることはあったが、こんなに感じたことはない。媚薬の助けは充分にあるにしても、エドガーの舌使いは皇太子しか知らないセツには毒でしかなかった。
せめてもの抵抗で快感に抗うように歯を食いしばろうとすると、イザークの親指が口内に侵入してきて阻止される。
「う、うぅ──!」
今までにないほどの早さで絶頂に追いやられ、脚を痙攣させた。
セツの惚けた顔をイザークが見下ろしている。
「体つきはそんなに変わってないが、顔は幾分か幼くなったな」
そういえば若返ったんだっけ。セツは目が覚めてから自分の顔を鏡で見ていないので分からない。
「18かそこらか?」
「いや、20ぐらいじゃないか?」
ハント兄弟がセツの肉体年齢を推測している。
元々セツはイザークの5歳年上だったが、18にしても20にしても体は年下になってしまった。
イザークがセツの髪を掬って弄っている。
「髪も随分伸びたな。落ち着いたら切らせるか」
セツの髪は帝国では珍しい白髪だった。
セツ以上に真っ白い髪を持つ人間は見たことがない、と皇太子に気に入られており、腰よりも長く伸ばされ手入れされていた。
しかしセツはそれどころではない。エドガーは指でセツの敏感な突起を相変わらず弄っているし、イザークはセツの顔を見ながら空いた手で小さな乳房をこねくり回している。
セツは仰け反ってまた達した。
イザークがセツの顔を見て舌打ちする。
「随分感じやすいな。あのクソ野郎に仕込まれたと思うと本当に腹が立つ。俺の手で殺してやりたかった」
勝手に機嫌を悪くして体勢を変え、そのままセツの胸に乱暴に噛みついてきた。
「いッ!」
痛い。痛いけど、皇太子と同じなら痛そうにすると更に酷くされる。暴力に慣れた体が勝手に歯を食いしばって我慢した。
「おいイザーク、やりすぎだ。傷になる」
「ちょっとくらい良いだろうが」
「クズ野郎と同じになる気か?」
「ちっ」
イザークが舌打ちをし、歯型の残った胸を慰めるように舐めだした。それはそれで火照ったセツには辛い。口を閉じても鼻からだらしのない声が漏れる。
そんなセツに機嫌を直したのか、イザークが鋭い目でセツを見つめながらざらついた舌で突起を舐め続けた。
胸に気を取られてるうちに、腟内にエドガーの指が入ってくる。
優しく撫でるようにお腹側をなぞられると、感じたこともないような刺激が体に走った。
「え、あぇっ?」
間抜けな声と共に腰が浮く。
イザークが面白そうに口角を上げた。
「なんだその顔は」
顔は笑ってるくせに、セツを馬鹿にしてくる。イザークは子供の頃から変わらない。
セツの声を聞いたエドガーが優しく問いかけてくる。
「気持ち良いんだな。あまりこういう前戯はした事ない?」
しかし腟内の指はセツを刺激し続けているため返事どころではない。
皇太子に掻き回された時と全然違う。外の敏感な突起でもないのに、快楽に追いつめられる。
「あ、はぁ、それ…ぃ──ッ?!」
「イったな」
「偉いぞセツ」
ぜえぜえと息を吐きながら絶頂後の下腹部の疼きをやり過ごす。
何なのだこの二人は。セツの知っている性交ではない。皇太子ならとっくに硬い物を突っ込んで勝手に果ててすぐにセツをベッドから追いやっているのに。まだハント兄弟は挿入すらしていない。 何なのだこの二人は。
「若返った影響で中もかなり狭いから、ちゃんと解してから挿れよう」
エドガーの声は優しかったのに、セツには死刑宣告に聞こえた。
コメント
1件
読み終えたよ〜!第2話、一気に引き込まれた😭💕 セツの「どうでも良い」って達観した感じと、でも体は正直に反応しちゃうギャップが切なくてエモすぎる…。ハント兄弟、子供の頃の弟子がまさかこんな形で再会するなんて思わなかったし、二人のキャラの違いがはっきり出ててめっちゃ推せる! 媚薬のシーン、セツが快楽に戸惑う様子が生々しくてドキドキしたよ。続きが気になりすぎる…!!