11
『あーあ。終わっちゃった。』
「ほんとあっという間だったよな」
結婚式が終わった数日後、
私達は同居することにした。
『ねぇ先生』
「ん?」
『新婚旅行行きたくないですか!?』
「おー行くか」
なんて
夢のまた夢の話をする。
・
それから2年。
私達はまだまだ幸せに
未熟なまま大人へなっていく。
それでもやっぱり入れ違いは起きる訳で
『もう⋯翔太なんかしらない』
「は⋯?」
『出てく』
「勝手にしろよ。」
私達は、喧嘩をした。
今まではちょっとした喧嘩ですぐおさまったけど今回は許せない。
あっちだって「勝手にしろよ」っていうくらいだもん。
『⋯どーしよう』
家が無くなった私は
何処に行こうかって考えてたけど
こんな私に行き場所なんてなくて。
「姫野?」
私に話しかけてくれたのは
高校時代同級生だった「紅月くん」
それ程仲がいいって訳でもなくて
実はあんまり喋ったことだってない。
『⋯紅月くん』
「覚えててくれたんだ」
『⋯うん』
「今は 何してんの?」
『あーっと 喧嘩しちゃって。』
「へぇー 俺で良かったら話聞くよ?」
『えっ?』
私と話したことなんてないのに
なんでそんな優しくしてくれるの。
「実はさ 姫野のこと好きだった。」
『⋯えっ』
私の事がすきって⋯
何処からそう思えるの。
「今彼氏いる?」
『⋯』
私が何も答えないでいると
紅月くんは私の左手薬指を見て
「あ⋯」
と勘づいたように一瞬、躊躇った。
『ごめん⋯結婚してる』
「そうなんだ」
『えっ?』
「いや。それってどんな人?」
『どんなって⋯』
先生 って言ったら
紅月くんは受け止めてくれるのかな。
だって紅月くんの担任だよ。
「まぁいいや」
「連絡先 教えてくれない?」
『連絡先⋯?』
「クラスの奴に聞いても誰も知らないからさ」
『あっ⋯どうぞ。』
その日はそれで終わって。
私は結局、ちょっと遠出になるけど
深澤先生の旅館に泊まることにした。
・
結婚してるのに1人で旅館に来たら
そりゃあおかしいって思われたから
深澤先生には事情を話した。
・
ピロン
スマホがなる
もしかしたら 先生かも
謝ってきたら 許してあげよう
このままなんて嫌だし
え⋯
紅月くんからの 連絡だった
「今日 会いに行っていい?」
『え?』
「話したいことある」
『わかった』
「位置情報送って」
話したい⋯なんて言われたことない
ここに 紅月くんがくる
・
「〇〇ちゃーん。朝ごはんどうぞ」
『あっ お金かかりますよね。私今そんなに持ってなくて』
「いーよ 俺からのサービスね。」
サービス
ほんとにありがたい
『今日⋯友達来るんですけど』
「友達?」
『紅月くん⋯知ってますか?』
「あー紅月ねぇ」
『いいですか?』
「俺は構わないよ。楽しんで」
この時、紅月くんを呼ぶのを
やめとけばよかった。
そしたら あんな大事にはならなかったのに。
・
「やっほ」
『うん』
私から話すことなんてない。
『話したいことって?』
「言いたくなかったらいいんだけど」
『うん』
「渡辺先生の事今でも想ってる?」
『⋯それはっ』
想ってる。
思ってるに決まってるじゃん。
それでもやっぱり言う覚悟はできない。
「まぁもうないか 笑」
『えっ⋯?』
「流石にもう忘れたろ?あんな奴のこと」
『あんな奴⋯って?』
どういうこと。
私が高校時代 先生の事が好きってのはクラス中にもちろん広がってて。
「いや 生徒にガチ恋するとかあっちもヤバいだろ?」
『⋯それはっ』
「それにあの人色んな奴に色目使って生徒からモテようとしてて笑えるわ」
なにそれ
生徒にガチ恋しててヤバいってのは
私だって
先生にガチ恋してた。
生徒からモテちゃうのだって本心なんかじゃない。彼の魅力だから
『⋯先生のこと』
「ん?」
『翔太くんの事は悪くいわないで!』
「⋯は?」
それは⋯おかしい。
ほら、受け止めてくれないでしょ。貴方は