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#現代ファンタジー
るるくらげ
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第2章 第19話
「魂魄踏台」
1日目の夜ーー
一日の労働が終わった後の空気は重かった。 鍋を洗う水音、皿が重なる乾いた音、店主のくぐもった咳。
「じゃあ俺たちは寮にかえるよ」
アーベルは軽く手を振る。 その仕草は余裕に満ちていて、城下街の埃すら触れていないようだった。
アーベルとロイマロは2人に簡単な属性の基本を説明して帰って行った。
「……なんかむずかしかったな」
アクラは倉庫の壁にもたれ、夜空を見上げる。 体がだるい。頭も回らない。
「今回は説明だけでしたからね。まぁ我は大体の属性は覚えました」
この世界には9つの属性が存在する。
火、水、風、雷、光、闇、毒、精神、魂
「うーん……多すぎて覚えられねえよ」
アクラは頭をかく。
「そのうち慣れますよ。きっと」
遠くで酒場の笑い声が弾けた。
「……てかバロロの爆がなかったぜ?」
「それは火の派生系ですよ」
「えっ!派生系とかもあるのか!?」
「派生も含めると25種類です」
「なっ……」
軽く絶望。 胸の奥が沈む。
「でも逆に言えば選択肢が多い分 戦略も広がるってことだよな!」
無理に前向きな声を出す。
「ええ。そうですね」
こうしてふたりは眠りにつこうとしていた。 狭い二階部屋。薄い布団。通りの灯りが隙間から差し込む。
「……変な人ですね。やっぱりあなたは」
エペは暗闇の中、天井を見つめる。
アクラは既に眠っていた。
「我が黒刃だって 知っているのに」
小さく呟く。 夜が更ける。
ーー次の日 2日目 昼
倉庫裏の空き地。 太陽が高い。影が短い。
「見ての通り 俺は2種類属性をもってるよ」
そういってアーベルは右手に紫黒色のオーラと左手に白と赤の渦巻くオーラを発生させた。 空気が重くなる。石畳が震える。
「これは……?」
「右手のは闇の派生系、呪。 そして左手のは魂の派生系の命だよ」
「呪……。刹那ちゃんと同じですね」
エペがぼそっと呟く。口元には笑が溢れてる。よっぽど彼女のことが好きなんだろう。
「ロイのは魂の派生……死属性だ。まぁ貴様たちみたいなのには操れっこないけどな」
ロイマロが今日も団子を食べながら毒を吐く。 団子の甘い匂いが、血の匂いと混ざる。
「その……魂属性ってそもそもなんですか?」
アクラが一歩前に出る。
「いい質問だね。そもそも魂属性は他のよりも珍しいんだ。そして魂属性自体はほとんど意味を持たない。」
「……え?」
「簡単に言うと 命とか死とかに派生したい場合 魂から身につける必要があるんだ。要するに命、死の踏み台ってわけだね」
「そ、そうなんですか……」
「さて、言葉だけじゃつまらないだろうし 実演してあげるよ」
「ーーあそこにネズミがいるね。」
ロイマロの腕が動く。 団子の串が空を切る。
ネズミが串刺しになる。
「ちょ、ちょっと……!」
エペが眉をひそめる。
「まぁ ここからが本番。」
アーベルは瀕死のネズミに近づき串を抜いてあげ 左手でオーラを与える。
淡い光。
数秒後 輝き始めーー
「ふ、復活した……!?」
「でもこれを使えば対象の寿命が縮むんだ」
「じゃあ有限って訳じゃないんですね……」
その次の瞬間、ネズミが息絶える。
「ーーそしてこれが”死”だ」
ロイマロがネズミにむけて魔力を放っていた
「……これの代償は 使用者の寿命を利用して対象者を殺す。 どれだけ寿命が減るかは 相手の残り寿命と反比例する」
ロイマロが辛辣な発言をする。
「じゃ、じゃあ今のも……」
「まぁ 所詮2ヶ月だ」
その軽さが、逆に重い。
そのころーー城下街 レリー喫茶店にて
甘い香り。 焼き菓子の匂い。木の椅子。
「あ、あの……今日は誘ってくれてありがとう」
ジャックが視線を泳がせる。
「い、いいぜ礼なんて!オレもずっと誘ってみたかったしな……!!」
バロロの体格は明らかに場違いだ。
「この店の名前な!レリー喫茶店っていうだろ? レリーラ共和国の料理をレリーって呼ぶんだ!!……オレの出身国だからな!」
「へぇ〜!そうなんだ!」
「ま、まぁほらメニューだ!好きなの選べよ!オレのおごりだ!!」
「わぁ!ほんとうに?でもいいよ わたしが払うから」
「いいんだいいんだ!オレに払わせてくれ!」
「そ、そう?えへへ。ありがと〜!」
しかしジャックはなぜバロロが自分に好意的なのか 気づけずにいた。
「うーん……迷うなぁ ねぇ。なにがおすすめ?」
「おっ!オレのオススメはリルゥトゥルだ!レリーラを代表するすっげぇ美味いパンケーキ!」
「いいね!それがいいかな」
「飲み物は……甘いの好きか?」
「うん!大好き!普段食べれないから楽しみだなぁ」
「それならトルゥクがおすすめだ!イチゴティーっていったところだな!」
「おいしそう!バロロくんはどうする?」
「うおおおお!オレも同じのにするぞ!」
店がシーンとなる
「おっ……わ、悪いなみんな!」
「あはは おもしろいー! 」
ジャックが無邪気に笑う
「それと……この間のこと、わたしを守ってくれたんだよね。……お礼しなくっちゃ」
「お礼はいらないぞ!オレはただ……その、お前が好きだから……」
しかしその告白はジャックの耳には届かず
「あっ!リルゥトゥルきたよ!」
「お、おう!! 」
3日目 夜。
月明かり。 冷たい風。
「きみの戦術はすごいね。まるで閃光みたい」
「あ、ありがとうございます!」
エペの剣が光を裂く。
「もしかしたらきみは雷か風属性かもしれないね 」
「きみは間に合いそうだ」
エペは嬉しそうだ
「……それで きみはどうだろう。アクラ」
アクラは拳を握る。 何も起きない。
「魂系ということはないのか?東幻人はそれ系が何故か多いからな」
ロイマロが言う。
「……でもみたところ 貴様、純粋な東幻人ではないな。どこかのハーフか?」
「……あ、はい!母がレリーラ人でした」
「そうなると話は別だな……」
アクラはハーフ。 どちらにも完全には属さない。
小さい頃から馴染めなかった。
バロロと気が合う気がするのも、そのせいかもしれない。
「今日は仕方がない。また明日にしよう」
二人は去る。
夜が深い。
半端者の疎外感と属性関連の焦りーー それはアクラをどんどん不安へと追いやっていった。
最近は胸の糸が騒がしくないと思っていたのに、少なくとも自分だけ騒がせてばかりだ。
きっとゼグレからしてみたらずっとうるさいだろう。
そう考えてくるとーー少し笑えてくる。