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第四十八章 ネイルが乾くまで
翔太💙「リバース!!!」
大介🩷「またかよ……ずっとお前のターンじゃん」
いつの間にか止んだ雨。
テーブルにポテトやコーラを並べて〝まだ乾いてない〟と言った理由で、佐久間は翔太の口にポテトを運んでいる。
大介🩷「あっ……ほらここまた塗り直しじゃねぇか」
面倒くさそうにそう言いながらも、何故か嬉しそうに翔太の爪に塗ったネイルを塗り直すと、〝このままいけばオールだな〟なんて茶目っけたっぷりに笑った。
翔太は手札を顔の前まで持ち上げた。
どれも似たような記号に見えて、正直まだよく分からない。
翔太💙「ねぇこのskipってどういうカードですか?」
大介🩷「おい、手札見せるなよ」
翔太💙「だってルールまだよく分かんなくて……」
カードを摘んだまま首を傾げる翔太に、佐久間がふっと笑う。
大介🩷「あーskipはな〜飛ばしだよ」
翔太💙「へぇ〜……二人だと、リバースとあんま変わんないですね」
その瞬間、カードを眺めていた佐久間の目が、悪戯っぽく細くなる。
大介🩷「地方ルールって知ってるか?」
翔太💙「地方ルール?なんですそれ?」
大介🩷「じゃあ俺は江戸川出身だから江戸川ルールでやるか?」
翔太💙「はいっ!僕も江戸川です!」
〝マジかぁー運命感じるな〟そう言いながら佐久間は肩を揺らした。
たぶん笑ってる。
大介🩷「じゃあ今後気を付けろよ」
翔太💙「?」
大介🩷「skip出されたら、
ちゃんと〝江戸川ルール〟従わないとダメだから」
翔太💙「分かってますよ……ルールは絶対ですもんね」
素直に頷いた翔太を見て、佐久間が小さく吹き出した。
手札が面白いように減っていく翔太とは違って、手札が増える佐久間は苛立つどころか、何やら楽しそうに目を細めている。
そして――
気付けば佐久間の前にはカードが山のように積み上がっていた。
対照的に翔太の手札はあと数枚。
一枚出すたびに顔が明るくなっていく。
翔太💙「やった〜僕の勝ちです!」
得意げに胸を張る翔太を見て、佐久間がふっと笑う。
大介🩷「残念だな翔太。UNOって最後の一枚で言わなきゃ上がれないんだよ」
佐久間の視線が、テーブルのカードへ落ちる。
大介🩷「しかもこれ〝skip〟じゃねぇか」
翔太💙「そんなの知らないし……」
むっと唇を尖らせる翔太を見て、
佐久間はテーブルへ頬杖をついた。
大介🩷「まぁ今回は肩慣らしな」
翔太💙「……肩慣らし?」
大介🩷「最初だからペナルティなし。次からが本番」
にやり、と。
楽しそうに口角が上がる。
大介🩷「〝ルールは絶対〟だろ?」
翔太💙「うっ……」
さっき自分で言った言葉に、
翔太が小さく詰まる。
佐久間は、その反応が面白くてたまらないみたいに目を細めた。
大介🩷「ちなみに江戸川ルールだと、skip出したらキスな」
翔太💙「はぁ!?」
大介🩷「知らなかった?」
翔太💙「し、知りませんよそんなルール!」
大介🩷「UNO初心者って怖ぇな」
翔太💙「絶対嘘だ!」
大介🩷「じゃあ調べる?」
スマホへ手を伸ばしかけた佐久間が、わざとらしく「あ」と声を漏らす。
大介🩷「でもネイル乾いてねぇな」
翔太💙「うっ……」
大介🩷「残念」
楽しそうに笑う声。
翔太はじとっと〝skip〟を睨みつけたあと、
何か思いついたみたいに顔を上げた。
翔太💙「じゃ、じゃあ江戸川ルールやめましょう!」
佐久間の眉がぴくりと動く。
翔太💙「他のルールに変更で!」
佐久間が、面白そうに目を細める。
大介🩷「してもいいけど」
翔太💙「ほんとですか!?」
大介🩷「他所はもっと厳しいぞ?」
翔太💙「……へ?」
にやり、と。
佐久間がゆっくり顔を寄せる。
大介🩷「例えば――」
耳元へ落ちた低い声。
その瞬間。
翔太💙「きゃぁっ!!」
驚いた拍子に、手札がばさばさとテーブルへ散らばった。
数秒の沈黙。
そのあと、佐久間が盛大に吹き出す。
大介🩷「あーあ。また最初から塗り直し」
翔太💙「佐久間さんのせいですっ!」
じとっと睨みながら、翔太は慎重にカードを並べ直した。
それからしばらく、
翔太は〝skip〟を警戒するみたいに何度も手札を確認しながらゲームを続けていた。
佐久間はそんな反応が面白いのか、
わざと〝draw two〟を重ねたり、
ギリギリまでカードを出さずに様子を眺めたりしている。
翔太💙「うわっ、またですか!?」
大介🩷「初心者ほど面白ぇからな」
増えていく手札に、翔太がむっと頬を膨らませる。
けれど。
最後の数枚になった瞬間、翔太の顔がぱっと明るくなった。
翔太💙「これ出せる!」
バシッ――
勢いよく叩き付けた三枚。
三枚並んだ〝skip〟。
静まり返ったテーブルの上で、
透明なネイルだけが艶っぽく光っている。
佐久間は一度カードへ視線を落としたまま、何かを堪えるみたいに肩を揺らした。数秒遅れて、ふっと笑う。
大介🩷「……翔太」
翔太💙「……はい?」
大介🩷「UNO言ってねぇ」
翔太💙「……あ」
大介🩷「しかもskip三枚」
翔太💙「えっ」
大介🩷「江戸川ルールだから……ちゃんと三回分な」
翔太💙「はぁぁ!?」
思わずソファの背へ逃げるみたいに身体を引く。
けれど、佐久間は逃がさないみたいに肘を掛けたまま、楽しそうに目を細めていた。
大介🩷「ルールは絶対、だろ?」
翔太💙「うぅ……っ」
三回。
その数字を頭の中で反芻した瞬間、一気に顔が熱くなる。
佐久間は急かすでもなく、ただ面白そうに翔太を眺めていた。
大介🩷「ほら」
翔太💙「……っ」
近い。
さっきまでUNOしてただけなのに、
急に空気が変わった気がした。
翔太💙「……一回でいいですか」
大介🩷「ダメ」
翔太💙「じゃ、じゃあ二回……」
大介🩷「三回」
にやり、と。
完全に楽しんでる顔。
翔太はじわじわ熱くなる顔を隠すみたいに俯いた。
翔太💙「……じゃあ、早くしてください……」
大介🩷「ん?」
翔太💙「だからっ……!」
言葉が詰まる。
けれど、逃げるみたいに目を逸らしたまま、
翔太は小さく唇を尖らせた。
翔太💙「……キ……キス、するんでしょ」
大介🩷「可愛いの……なんなんだよ」
ソファが軋み、佐久間の熱が近付いてきて翔太はゴクリと唾を飲み込んだ。キツく目をギュッと閉じると、吐息が顔にかかった。
大介🩷「そっちからするのがルールだけどな」
翔太💙「えっ」
思わず目を開けた瞬間、ぐい、と肩を押される。
ソファへ倒れ込んだ身体の上へ、佐久間の影が覆い被さった。
大介🩷「あっぶねぇ〜またネイル剥げるとこだったわ……乾くまでそのまま手挙げてな?」
翔太💙「待って、佐久間さ……ンンッ」
柔らかな熱が唇に押し当てられた。歯列をなぞる佐久間の舌が翔太の身体を熱くする。艶めくネイルを施した手が翔太の首筋を這い、Tシャツの隙間から侵入した。
翔太💙「ンンンッ……」
大介🩷「暴れるなよ。また塗り直しになっちゃうよ?」
低く笑う声。
そのまま頰へ触れた指先に、翔太の肩がびくりと揺れる。
大介🩷「……ここ、一個目な」
翔太💙「……っ、え」
耳元へ落ちた声の意味を理解するより先に、熱い吐息が首筋へ触れた。唇を覆うように、佐久間の口が翔太を捉えて離さない。その間も擽ぐるように這う佐久間の手に翻弄されて、甘い吐息が漏れた。
翔太💙「待って、いい自分でするから!」
大介🩷「できんの?」
翔太💙「はい、頑張る」
ソファの上に正座して、フッと短く息を吐いた翔太は、佐久間の肩に触れると目を瞑りながら尖らせた唇をゆっくりと近付けた。
翔太💙「まだ?もう少し?」
大介🩷「ふはっ……なんだよそれ、ちゃんと自分で見て確認しろよ」
薄目を開けて確認すると、瞬きもせずに翔太を捉える瞳とぶつかった。〝目閉じてよ!〟と怒る翔太にクスクスと笑いが止まらない佐久間は〝お前が聞いてきたんだろ?早くしろよ〟と言って終始楽しそうだ。
大介🩷「ほら1回目だぞ」
翔太💙「えっ?2回目でしょ」
大介🩷「やり直しだろ?」
翔太💙「ず、ずるいですっ」
熱くなった顔のまま、もう一度ゆっくり顔を寄せる。
今度こそ失敗しないように。
けれど、触れる寸前で佐久間がふっと笑った。
大介🩷「そこじゃねぇよ」
翔太💙「……へ?」
次の瞬間、くい、と顎を引かれる。
そのまま再び首筋へ落ちた熱に、翔太の肩がびくりと震えた。
翔太💙「ンンンッ……はぁっ……」
チクリと、ひりつくような熱が一点に集まる。押し返そうと伸ばした手は呆気なく頭上で捉えられた。
大介🩷「乾くまで……俺のもんだからな」
翔太💙「ダメだから……っ……んっ……」
大介🩷「仕方ないだろ?ゲームなんだから」
押し当てられた熱がじわりと色付き、
〝これじゃ隠しようがねぇな〟と佐久間が笑う。
その指先が首筋に残された証をなぞるたび、翔太は熱から逃れようと肩を震わせた。
一方その頃。
雨の名残が残る別の部屋では――
薄暗い部屋の中、ベッドへ凭れた亮平が小さく息を吐く。
蓮🖤「……で、いつまでこうしてる気だよ」
亮平💚「蓮こそ早く退けよ」
蓮🖤「……て言うかなんで服脱いでんだよ」
亮平💚「え?流れ?」
蓮🖤「どんな流れだよ」
呆れたみたいに眉を寄せる蓮へ、亮平は悪びれもせず笑った。
亮平💚「昔思い出すでしょ?」
蓮🖤「思い出さねぇよ」
亮平💚「嘘つけ」
蓮🖤「お前と一緒にすんな」
亮平💚「昔はもっと素直だったのになぁ」
蓮🖤「黙れ」
蓮は小さく息を吐いた。
本気で怒っているわけではない。
ただ、こうして昔みたいに距離を詰められると調子が狂う――
ベッドの上へ散らばったクッション。
途中まで開いたペットボトル。
カーペットを濡らす二人分の靴。
さっきまで普通に話していたはずなのに、
いつの間にか距離だけがおかしくなっていた。
亮平💚「だって蓮、今日ずっと顔怖かったし」
蓮🖤「お前が絡んでくるからだろ」
亮平💚「あ、否定しないんだ」
蓮🖤「……うるせぇ」
蓮がくすくす笑いながら、
ベッドへ倒れ込む。
その瞬間。
コンコン――
二人同時に動きを止めた。
翔太💙「れーん、ごめんね遅くなっちゃった」
亮平💚「……は?」
蓮 🖤「あ」
聞こえた声に、亮平の眉がぴくりと動く。
何故か蓮だけが、面白そうに目を細めていた。
ガチャ――
何も知らないまま、翔太がひょこっと顔を覗かせる。
翔太💙「え……あれ?亮平?」
そこまで言って、
部屋の空気に気付いたみたいに固まった。
そして次の瞬間。
蓮の視線が、
ふ、と翔太の首筋へ落ちる。
数秒の沈黙。
蓮 🖤「……へぇ」
翔太💙「……え?」
亮平💚「はぁ?💢」
翔太💙「ん?」
首筋に残る熱の意味を知らないまま、翔太はきょとんと瞬きを繰り返していた。
色鮮やかに塗られたネイルの先に、大事そうに抱えられたUNOの箱。
重苦しい空気の中で、
翔太の白い小さな手に宿る熱だけが、
まだ雨上がりみたいに浮かれて見えた――
遥 ℎ𝑎𝑟𝑢𝑘𝑎
#渡辺翔太
コメント
5件

だって亮平、きょうずっと顔怖かったし、って、なんで💚が言ってるの?🤔
わあっ花凜さん!!もうこのエピソード最高すぎません!?!?😭💕💕💕 UNOでまさかの「江戸川ルール」発動ww 佐久間さんのずる賢い感じと翔太くんのピュアな反応のギャップがもう尊すぎて胸がギュンギュン言ってます!!「キス三回分」って…ずるいけど愛情感じる〜〜!!🫣💖 最後の蓮くんと亮平のシーンで空気変わるところもエモかった…!翔太くんが首筋の痕に気づいてない感じがまた切ないというか…次どうなるの!?続きが待ちきれないです!!🌸🔥