テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
■呪画怪談:『花骸(はながら)』
アーカイブより復元された映像記録
【動画データ】
配信日:2022/02/16
配信者:オカルト暴き人・リュウ(仮名)
登録者数5万人前後の心霊系動画配信者。
トレードマークは大きなサングラス。
オカルトに関する豊富な知識をひけらかす配信が主だが、基本的に心霊は信じておらず、理論で迷信と決めつける内容が多い。
[00:00]
暗転からフェードイン。
とある部屋(リュウの自室?)。
白い壁の前にリュウが座っている。
テーブルの上には筒状のケース。
「……はい、というわけでね。
今日もガラクタが届きました。
えー……差出人不明。住所もなし。
中身は……まあ、見ての通りの『絵』ですね」
リュウ、ケースから紙を取り出す。
ガサガサという音が、不自然に大きくマイクに響く。 彼はそれを背後の壁に、養生テープで雑に貼る。
「今日は、この悪趣味で出所不明な絵の検証をしていきたいと思います。
つか、これを呪いとか言っちゃうお前らの脳みそを検証したいわ(笑)」
[03:15]
定点カメラの映像。
リュウは画面の端で、ホラー系アートと迷信を結びつけた蘊蓄を語る。
画面中央にはあの『絵』。
「(笑いながら)おいおい、コメント欄!『怖い』とか『ガチもん』って盛り上がりすぎでしょ?」
「これ、ただの現代アートですよ。昔の絵に似せてるけど。ほら、ライト当てますね」
強力なLEDライトを絵に向ける。光が当たった瞬間、絵の表面の凹凸が強調される。墨の跡が、まるで這い回る生物のように見えてくる。
[07:42]
「ちょっと休憩、みんな絵でも眺めてて」
リュウが画面外へ飲み物を取りに行く。無人になるスタジオ。
Webカメラのオートフォーカスが作動。ジ、ジジッ……という駆動音。
ピントが『絵』と、その横の何もない空間を高速で往復し始める。
あたかも、そこに見えない対象物があるかのように。
[09:10]
リュウが戻ってきて、エナドリを飲みながら、『見たら呪われる』など絵にまつわるオカルト話を小馬鹿にした口調で批判する。
彼はまだ気づいていない。
カメラに向かって話しているが、映像と音声にわずかなラグが生じ始める。
「(声がワンテンポ遅れて)……あれ? なんか、エアコン効いてない気がするんだけど……気のせい?」
コメント欄が高速で流れ始める
「後ろ」
「絵動いた!」
「人の影、増えてない?」
「やば」
「リュウくん、いつも一人だよね?」
「誰かいるよ」
「仕込みだよね?仕込みだと言って!」
[11:24]
リュウが「何言ってんの」と、冷笑混じりにコメントを読み上げようとして、ぴたりと止まる。
彼は自分の肩越しに、背後の壁を振り返る。
「……となりの部屋、なんかやってる?変な音したわ、今」
音声記録:マイクは無音。
しかし、スピーカーから再生すると、低周波のうねりのような音が混じっている。
[13:00]
「あ、なんで勝手に……あれ?」
リュウがPCの画面に顔を近づける。
彼のサングラスにPC画面が反射し、それがPC上部のWebカメラに撮影された。
再び、コメント欄が高速で流れ始める。
「サングラス!なんか人映ってる!」
「これマジでヤバい!」
「リュウくん、逃げて!」
「サングラスはずせ!」
「後ろ!」
「外せ」
「外せ」
「外せ」
「外せ」
「外せ」
そのサングラスの反射の中に、リュウではない『人の形をした暗がり』が、リュウの背後に立っているのが見えていた。
右下の同時視聴者数表示:34,617
一瞬のノイズ。画面が白飛びする。
掠れた、女性の声がマイクに拾われる。
『……もう……おぼ………た』
声の直後、リュウは突然立ち上がる。
振り返り、サングラスを外して生身の目で「絵」を直視した瞬間、彼の語彙が消失した。
「あ……え……これ……」
そのまま無言で絵を見つめ続ける。
カメラには彼の微動だにしない背中だけが撮影される。
突然、映像が途切れる。
翌日、非公開。
さらに翌日、削除。
私はアーカイブ保存されていたものを入手したが
再生を停止した瞬間、
右下の同時視聴者数表示だけが
まだ点灯していた。
34,618
なぜか視聴者数が増えていた。
このうち、誰が『画面の内側』だったのかは、わからない。
コメント
2件
怖いですね、リュウさんは大丈夫なのでしょうか?🤔 無事であって欲しいです💦💦
286