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波風 かなで
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うわ、めっちゃ熱い回だった……! メバルが「Kさんを置いて逃げたみたいじゃん」って泣きながら叫ぶとこ、ぐっと来た。普段ビビりなのに「今度は私がみんなに聞くから」って前を向くのが少年マンガの成長感あって好き。一方K-Tの「直す」「必ず見つける」って短い言葉にすごい執念感じた。壊れたガラケーに仲間の名前が残ってるだけで泣ける。鍛冶場でどういう武器作るのか激アツ。次回マジで待ってる🔥
鉄の村から離れた草原を、五人は走っていた。
正確には、走れていたのはマサカゲとアオノだけだった。
メバルは何度も振り返りながら、カキの腕を支えている。ミステーは黄色と黒のピラミッドを両手で押さえ、少し遅れてついてきていた。
村の方角からは、銃声と金属音が断続的に響いている。
レイナの姿は、すでに見えなくなっていた。
「止まるな。追いつかれる」
マサカゲが言った。
「でも、Kさんがまだ村に……」
メバルは息を切らしながら答えた。
「Kさんなら、もうリスポーンしてるかもしれない」
アオノが淡々と言った。
その言葉に、メバルの足が止まりかける。
「リスポーンしてたら、どこにいるの?」
「最初に設定された地点。死亡地点から最も近い場所とは限らない」
「じゃあ、Kさんは一人で……」
メバルの顔から血の気が引いた。
麻酔銃を失ったあとの彼女は、いつもの怖がりな性格に戻っていた。敵の姿がないと分かっていても、木々の向こうや草むらの影を何度も確認してしまう。
「メバル、今はKさんを探すために動いている」
マサカゲが振り返った。
「だから、焦るな。焦れば全員が危険になる」
「でも……私たち、Kさんを置いて逃げたみたいじゃん」
メバルの声が震えた。
「置いていったわけではない」
「同じだよ!」
突然、メバルが叫んだ。
カキが驚いて足を止める。
「Kさんは、ずっと私たちを守ってた。撃たれたときも、鎖に捕まったときも、村に入ったときも……なのに、最後は私たちを逃がすために一人で残って……」
メバルは両手を握りしめた。
「私、助けに戻れなかった」
「戻ったら、お前も倒れていた」
マサカゲは厳しく言った。
「Kさんはそれを分かっていたから、下がれと言った。あれは命令だ」
「命令でも……」
「守るための命令だった」
短い沈黙が落ちた。
遠くで銃声が一発響いた。
カキが肩を跳ね上げる。
「なあ……これ、まだ村から聞こえてるよな?」
誰も答えなかった。
カキは剣を握り直したが、手は震えていた。
「レイナ、何者なんだよ。あんなに強いなら、最初から俺たちを助ける必要なんてなかっただろ」
「助けたのではなく、用心棒を倒す目的が別にあった」
アオノが言った。
「私たちは、その場にいただけかもしれない」
「じゃあ、Kさんを斬ったのも……」
「目的のために排除した」
アオノは感情を抑えた声で続けた。
「彼女は敵の動きだけでなく、私たちの位置も正確に把握していた。最初から、全員を観察していた可能性が高い」
「それなら、追う」
マサカゲが言った。
五人が彼を見る。
「レイナを追う。Kさんと合流する前に、彼女が何を知っているのか確認する」
「でも、Kさんが村に戻っていたら?」
「Kさんは、仲間を探して必ず動く。俺たちが同じ場所に留まっていたら、すれ違う可能性が高い」
マサカゲは地面に膝をつき、拾った矢を調べた。
それはレイナが放ったものと同じ形をしていた。白い羽根。青みがかった金属製の矢じり。
「レイナは森の奥へ向かった。足跡は薄いが、矢の素材にこの青い鉱石が使われている」
アオノが、洞窟で採取した青い鉱石を取り出す。
「同じ成分が周辺の地面に残っている」
「追跡できるの?」
メバルが尋ねた。
「完全ではない。しかし、方向なら推定できる」
「じゃあ行こう」
メバルは涙を拭った。
「レイナを見つけて、Kさんの居場所も聞く。今度は、私がみんなに聞くから」
その声には、まだ震えが残っていた。
それでも、足は止まらなかった。
五人は森の奥へ進んでいった。
*
K-Tは、草原を抜けて鉄の村へ戻っていた。
日が傾き始めている。
空は赤く染まり、遠くの山の向こうから夜の影が迫っていた。
村の入口には、破壊された用心棒が倒れている。骸骨の残骸もあちこちに散らばっていた。
しかし、村人の姿は一人もない。
K-Tは周囲を警戒しながら、広場へ入った。
処刑装置はまだ残っている。牢屋を吊り下げていた鎖は途中で切れ、クレーンの支柱には深い傷が刻まれていた。
あの場所で、仲間たちは捕らえられていた。
あの場所で、レイナがK-Tを斬った。
地面には赤い光の痕跡が残っている。
K-Tはその中心へ歩み寄った。
そこに、ガラケーが落ちていた。
折りたたみ式の本体は大きく歪み、画面には蜘蛛の巣のようなひびが入っている。アンテナも根元から曲がっていた。
K-Tは無言で拾い上げた。
電源ボタンを押す。
画面は点かなかった。
もう一度押す。
今度は、ひび割れた画面に薄い光が浮かんだ。
端末情報。
位置情報。
メール。
各種機能の表示が乱れ、文字が崩れていく。
K-Tは通話画面を開いた。
登録されているのは、仲間たちの名前だけだった。
メバル。
カキ。
マサカゲ。
ミステー。
アオノ。
発信ボタンを押す。
呼び出し音は鳴らなかった。
画面に「接続不能」と表示される。
K-Tはしばらく画面を見つめていた。
やがて、ガラケーを閉じる。
「……必ず見つける」
そのとき、背後から金属音が響いた。
K-Tが振り向く。
村の奥から、複数の人影が現れた。
鉄の鎧を着た人間たちだった。手には槍や弩を持ち、顔を布で覆っている。彼らの後ろには、損傷した用心棒が二体立っていた。
赤い目がK-Tを捉える。
用心棒の腕が持ち上がった。
K-Tはガラケーを握り、周囲を確認する。
武器はない。
トンファーも、拳銃も、クラフトした装備はすべて失っている。
それでも、彼は逃げなかった。
「待って」
人影の中から、女性の声がした。
用心棒が腕を下ろす。
布を巻いた女性が前へ出てきた。彼女はK-Tの手にあるガラケーと、壊れた処刑装置を交互に見た。
「あなたは、あの牢屋を壊した人?」
「そうだ」
「村人を襲った仲間?」
「違う。仲間を救出した」
女性はしばらくK-Tを観察した。
「あなたたちは村に侵入し、用心棒を破壊し、処刑装置を止めた。村の記録では、あなたたちは侵入者になっている」
「こちらも、理由なく捕らえられた」
「それは……」
女性が言葉を詰まらせた。
K-Tは倒れた用心棒へ視線を向ける。
「こいつらは命令に従っただけか」
「そう。村の外から来た者を捕まえるように設定されている」
「設定?」
女性は少し驚いた顔をした。
「あなたたちは、この世界の言葉を理解できるのね」
「質問に答えろ」
「用心棒は、村を守るために作られた。外から来る敵や、異常な存在を排除する。その命令が、何年も更新されていない」
女性は処刑装置を見上げた。
「村の中央にある装置も、昔は敵を処分するためのものだった。でも、今は誰が何のために作ったのか、知っている者はいない」
「レイナは?」
K-Tが尋ねた。
女性の表情が変わった。
「レイナを知っているの?」
「仲間を襲った」
「襲った?」
「彼女は、骸骨と用心棒を倒した。その後、俺を斬った」
女性は黙り込んだ。
やがて、後ろにいた村人の一人が口を開く。
「レイナは、村の外から来た者を追っている」
「なぜだ」
「彼女の家族が、昔、村の用心棒に捕らえられたからだ」
別の村人が続けた。
「レイナは村を憎んでいる。村人も、用心棒も、処刑装置も……全部を壊すつもりだ」
K-Tは、森の方角を見た。
「なら、仲間を襲った理由は?」
「あなたたちが村にいたからかもしれない。レイナは、村に関わる者を信用しない」
「俺たちは村人ではない」
「彼女にとっては、同じだったのだろう」
女性は槍を下ろした。
「あなたは、まだ仲間を探すつもり?」
「ああ」
「一人で?」
「必要なら」
女性はK-Tの壊れたガラケーを見た。
「その道具は、もう使えない」
「使える」
「画面も割れている。アンテナも折れている」
「直す」
K-Tは短く答えた。
女性は、初めてわずかに笑った。
「この村には鍛冶場がある。外から来た者を拒むためではなく、道具を作るための場所が」
「武器を作れるか」
「作れる。ただし、材料が必要」
「鉄鉱石はある。青い鉱石も持っている」
K-Tはポケットから、採取していた鉄鉱石と青い鉱石を取り出した。
女性の目が見開かれる。
「その青い鉱石を、どこで?」
「洞窟だ」
「それを使えば、普通の鉄武器より強いものを作れる。だが、加工には危険が伴う。失敗すれば、武器だけでなく鍛冶場も吹き飛ぶ」
「構わない」
K-Tはガラケーを見下ろした。
ひび割れた画面には、仲間たちの名前がまだ残っている。
「仲間を取り戻す。そのための武器が必要だ」
女性はしばらく黙っていた。
やがて、用心棒たちへ合図を送る。
「武器を下ろして。彼を鍛冶場へ案内する」
村人たちがざわめいた。
「本当にいいのか?」
「この人は、処刑装置を止めた。私たちを傷つけるつもりなら、もっと早く攻撃している」
女性はK-Tへ向き直った。
「ただし、約束して」
「何を」
「その武器を、村を壊すためには使わないこと」
「約束する」
「レイナを見つけたら?」
K-Tは少しだけ目を伏せた。
「話を聞く。それでも敵なら、止める」
女性は頷いた。
「分かった。あなたを鍛冶場へ通す」
K-Tは村人たちの後を歩き出した。
広場を抜け、壊れた家々の間を進む。
背後では、赤い目の用心棒が静かに立ち上がっていた。
村人たちはまだ警戒している。
それでも、槍を向ける者はいなかった。
鍛冶場の扉が開く。
中には、大きな炉と、無数の金属片、古びた設計図が並んでいた。
壁には、剣や弩だけではなく、銃器に似た武器の図面も掛けられている。
K-Tはそれらを一つずつ見た。
普通の剣では、レイナには届かない。
拳銃でも、用心棒の装甲を貫けない。
必要なのは、速く、強く、確実に仲間を守れる武器だった。
「何を作る?」
女性が尋ねた。
K-Tは、壊れたガラケーを炉の横へ置いた。
「まず、これを直す」
「それから?」
「レイナを止められる武器を作る」
炉に火が入った。
赤い炎が、鉄鉱石と青い鉱石を照らす。
K-Tは静かに拳を握った。
村の外では、夜が始まろうとしていた。
森のどこかで、仲間たちはレイナを追っている。
そして遠く離れた場所で、レイナもまた、彼らの行方を追っていた。