葉々小朔。他の何でも無い、俺の名前。
父ちゃんも母ちゃんも、幼馴染だって俺のことをそう呼び続けている。
まさか、呼ばれ方がちょっと変わっただけでこんなにもドキドキするとは思わなかったのだ。
この感情の正体はとっくに分かりきっている。
「それでも私は良いわよ。朔」
「えっ…?」
「もう遅いから寝ましょう…おやすみ」
「え、ちょっ!葵!」
突然の事で酷く困惑しながら、葵の名を呼ぶ。しかし彼女が自身の名を認識をする前にブチッと切れてしまった。
「…はぁぁぁぁ」
大きなため息を付きながら、よく分からない角度で上がっていた腰をベットの上に落とした。
生殺しにほかならない。
風呂上がりの身体は時間と共に冷めきっていた筈なのに、血が沸騰したように熱い。
時間が時間なので声に出せない分、ベットの上でのたうち回る。
声を殺せば殺すほど、自分の心音がやけに身体中で木霊する気がした。
結局その日は一睡も…いや、一睡は過言かもしれないが驚くほど眠れなかった。
───嗚呼、眩しい
朝日が差し込んだ輝く部屋には不釣り合いな表情をしているであろう俺は、葵に何と送るかずっとずっと悩んでいる。
葵に何とも思っていなかったかと聞かれたら答えは否である。幼馴染達の為に二人きりさせれば、俺達も必然的に二人きりになる。
俺だって健全な男の子である。
二人の恋を成就させる為の作戦会議は葵と俺だけの秘密のようで、こそばゆい感覚であった。
本当は分かっていた。この想いが友情だけじゃないだなんて分かりきっていたんだ。
ダブルデートなんて言ったのも微かな願望が浮き出ただけなのに、笑って流されると思っていたのに。
「期待しちまうだろ…」
小さく溢れた俺の声は何故か震えていた。
俺は意を決してLINEを送る。
「おはよう」のたった一言のメッセージに随分と時間を掛けてしまった。
既読がつくまで、ゴロゴロとしながら葵に何と返されるか予測する。
そもそも名前を呼び捨てしたか覚えているかすら分からない。
切る前の彼女の声は酷く眠そうな声色であった。
葵は俺には勿体ないくらいの人だ。
俺の学校の恋には葵の名は必ずと言って良いほど出てきて、男女共に大人気。
僻むやつが居るのが正直、かなり憎い。
真夏の海が似合いそうな雰囲気は、太陽で輝くふわふわの茶髪は、いつだって俺を惹きつける。
隠したくない、俺の秘密
コメント
18件
1ヶ月ぶりのノベル版待ってましたー!!!✨ 朔くん視点見れて私はめちゃくちゃニマニマしてます!!! 朔くんはもう自分の気持ちに気づいてるからこそドキドキしちゃってて可愛すぎるぅぅぅ 紅くんと藤花ちゃんが付き合ったあとから、朔くんと葵ちゃんも付き合ってくれ☆ お泊まり編もとても楽しみにしてまーす!!✨ 投稿お疲れ様です!🍵
読んでくださりありがとうございます。作者のぬんです。 朔葵呼び捨て騒動の朔視点の話です! ちなみに題名の「俺のヒロイン」は、葵自身が自分の事を「偽ヒロイン」と思っていることへのアンサーみたいな感じです。 次回からはお泊まり編に進んでいく予定です。 お楽しみに!