久々に焼肉が食べたくなって、翔太を誘った
嬉しそうにはにかんで、二つ返事で行くと言われて、なんだか心が踊った
仕事や買い物の話、いつも通りに盛り上がる
翔太はすごく楽しそうで、心なしかいつもよりお酒のペースが早かった
「翔太、もう一杯飲むだろ?」
空になったグラスを見て声をかけると、さっきまでご機嫌に飲んでいたのに、急に悩み出す
「んー、どうしよかな」
「なに、酔っ払ったのか?」
「まだちょっとしか酔ってないけど」
「なんだよ、だったら飲めよ」
「だって……」
ふいと横を向く
真っ赤な耳が見えて、いつの間にそんな酔ったのか、なんて思ってたら、澄んだ震えが耳に届いた
「もすこし飲んだら、好きってバレそう」
耳の朱色が、頬まで一気に染まるのが、やけにゆっくりとスローモーションで見える
その言葉の意味を反芻する
数秒の沈黙
耐えられなくなった翔太が立ち上がる
「っ、ごめ、なんでもない、俺トイレ」
「ちょっ!待ちなって!」
反射で翔太の腕を掴む
止まってくれたがこっちを向かない
「こっち」
手を引っ張って隣に座らせるも、翔太は反対側を向いて俯いたままだ
「翔太、こっち向いて」
「むり」
「いいから」
頬に手を添えてこちらを向かせる
火傷しそうなほどに熱い
恥ずかしさが限界突破したのか、瞳が潤んでる
伏せ目がちに視線を彷徨わせ、時折ちらっと上目遣いに一瞬だけ目が合い、また逸らされる
……正直言ってむちゃくちゃ可愛い、いや、なんだこれ
「…ね、ぇ、、さっくん、、なんか、言ってよ…」
ぐすっと鼻を啜る音が聞こえる
「正直言ってむちゃくちゃかわいい」
「…っ?…ぅえっ?」
パッと顔を上げて、ぱちくりと瞳を瞬かせる
その拍子に、瞳の淵に溜まっていた涙が零れ落ちる
当の本人は驚きすぎて気にもしていない
うん、かわいいな
「かわいい」
溢れた涙をキスで掬い取る
「わっ!なに」
「涙。溢れてる」
「へ?……あ」
ほんとに気付いてないとか、かわいいすぎる
よしよしと頭を撫でる
「なんなの、めちゃくちゃかわいいじゃん」
「えっと…」
「佐久間さんびっくりなんだけど〜」
「あの、さっくん、あの」
「ん?どした?」
「……大丈夫?」
「なにが?」
「あたま?」
「失礼な」
「だって、、、俺、さっくんに、好きって言ったんだよ?」
言いながらまた頬を染める
自分で言っといて照れるとか、かわいすぎかよ
「わかってるよ、かわいかったから」
「………俺はどうしたらいいの?」
「佐久間さんと付き合ったら?」
「いいの?」
「うん、俺、翔太好きだわ」
「…………そっか、いいんだ」
ぽかんとした顔をしてたのが、徐々に嬉しさに破顔する
ふわふわと花が舞うような、はにかみを浮かべる
「…へへ、そっか」
「はぁー!かわいいなぁ!もう〜」
思わずぎゅっと抱き寄せる
「かわいい、かわいいとは日頃思ってだけど、今日の可愛さは規格外じゃん。この数分で佐久間さんイチコロなんだけど」
「ふふふ、ちょろすぎじゃん、さっくん」
耳元で嬉しさが跳ねるような声がする
「なんとでも言えよ。こんなにかわいいの独り占めできるんだったら何でもいいわ」
「……ねぇ、さっくん」
「ん?」
顔を覗き込めば、得意の上目遣いに、少し口角をあげて首を傾げる
「おうち、行きたいな」
「断れるわけねーじゃん…」
翔太の可愛さに翻弄される日々の始まりだ
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ありゃあ!かわいい!