「こいつは熊殺しの虎丸と呼ばれていて、その名の通り熊と武器を使わずに戦って殺したことがある。本当なら横綱にもなれた力士だった。新弟子検査直前に人を殺してしまったせいで力士としては終わってしまったがな。おまえみたいな口ばかりの身のほど知らずがガキども二千人を擁する横浜デビルの総長? ガキどもとのケンカにちょっと勝ったくらいで調子に乗ってるようだな。そんなフリフリのドレスで乗り込んで来やがって! おれたちのケンカは遊びじゃない。命のやり取りだ。女だから手加減してもらえると思うなよ。本当のケンカというものを今からおまえに、嫌というほど教えてやるぜ!」 陛下はうんざりした表情。陛下は自分で言っていた通り、話の長い人間が嫌いなのだ。
「虎丸、行け! 今まで感じたことのない恐怖をあの生意気な女に見せてやれ」
「押忍!」
虎丸が陛下目がけてがむしゃらに突進する。
は、速い……
撮影しながら、わたくしは戦慄した。相手は巨体の相撲経験者。捕まったら終わりだから、陛下は打撃戦を挑むだろう――
と思ったら、二人は初めから四つに組み合った。
力士と相撲で勝負するなんて! 正直、陛下がここまで愚かだと思わなかった。
「うおりゃあああ!」
虎丸は掛け声をかけたが、何も起こらず二人は四つに組み合ったまま。
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