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スイートルームに泊まるので特別なサロンを使えるらしく、ドリンクサーバーの飲み物やおやつを部屋に持ち込んでいいとの事だった。
おやつはコイン型チョコやビスケットなどがあり、駄菓子屋にあるガラスのボックスに入っている。
夜のカクテルタイムに入った今は軽食も並んでいて、これからレストランに向かうというのに、つい色々食べたくなる。
エレベーターの床には美しいダマスク柄が刻まれ、ゴンドラが上昇するとガラスから吹き抜けになっているロビーが見下ろせる。
フロアに着くとモスグリーンの柄付きカーペットの上を歩くけれど、客室の反対側はバルコニーになっていて、吹き抜けのロビーが一望できる。
どこにいても絵になるホテルで最高だ。
カードキーで解錠すると、アイボリー地にモスグリーンと金のストライプ柄の壁紙が目に入り、「お姫様みた~い!」とテンションがぶち上がった。
入ってすぐ左手には、プリンセスが使うような優美な装飾が施された鏡がり、右手には黒い大理石の洗面台と、やはりエレガントな鏡がある。
洗面所の左手にはお風呂があり、高級感のある白い大理石の壁に白い浴槽、カラフルなタイルの床、浴槽の横手の壁にはエレベーターの床と同じダマスク柄の模様があった。
シャワーはレバー式で、上中下と三段ついている。
しかもレインシャワーと呼ばれる、天井に吐水口のあるシャワーまでついていた。
「アメニティめっちゃ可愛くない?」
「持ち帰っていいんでしょ? やばい……」
私と恵はすでに語彙力を失っている。
お手洗いもバスルームと同じカラフルタイルの床で、シンプルながらお洒落だ。
部屋に入ってすぐ左手の鏡の隣にはクローゼットがあり、スリッパ、靴の乾燥機がある他、バスローブがハンガーに掛かっている。
上部には枕の予備があって、頭の高さにうるさい人はこれで調節できそうだ。
さらにその隣はミニバーになっていて、白地にサックスブルーの柄が入ったティーカップが二客、電子ケトルにアイスペールがある。
引き出しの中にはグラスやインスタントのコーヒー、お茶が入っていて、さらに下は冷蔵庫でミネラルウォーターが四本入っている。
上部の壁にはキャラのラフスケッチみたいな絵が掛かっていて、ニヤニヤしてしまう。
そしてなんと言ってもこの部屋のメインは……!
「アルコーヴベッド!」
私は歓声を上げて、壁の一部をくりぬいてソファにしたような場所に座る。
オレンジ色の壁紙のそこに座ると恵がスマホを構え、私は黒のレースで縁取られた黄色いクッションを抱き締めてピースして写真を撮ってもらった。
アルコーヴベッドの向かいにはツインベッドがあり、ヘッドボードの後ろにはラビティーとラビニーが描かれている。
ベッドの間にはフロントに通じる電話が置かれた台があるけれど、その上の壁にもラビティとラビニーのシルエットが描かれた丸い絵が縦に二つ並んでいた。
電話台の引き出しにはポストカードが三種類入っていて、多分持ち帰っていいやつだ。
向かいには液晶テレビがあり、テレビ台の下の引き出しにはアイボリーのパジャマが入っていた。
窓辺の隅にはスタンドライトがあり、ゆっくりパークを見下ろせるようにテーブルと椅子が二脚ある。
格子模様の窓というかドアを開けるとバルコニーになっていて、まるでプリンセスがのびのびと歌っていそうな美しい景色が広がる。
「うわぁ……! 凄い!」
部屋はコの字型の建物の中央なので、バルコニーに出ると左右に出っ張った建物が見え、正面にはランドが広がっているのが見える。
「凄いねぇ……。ロマンチック」
私はうっとりとして目を細め、スマホをインカメラにすると恵と寄り添って自撮りをする。
「全部篠宮さんの奢りだと思うと申し訳ないけど、こうでもしないと朱里とこのホテルには来られないよね」
尊さんが話題に出て、私はクスッと笑う。
「尊さんと涼さん、このメルヘンチックな部屋に二人で泊まるのかな」
そう言うと、恵は俯いてプルプル肩を震わせて笑った。
「おっかしい……。あとで様子見に行ってみようか」
「うん!」
そのまましばし、私たちは飲み物を飲みながら幻想的にライトアップされた景色を眺めていた。
「……恵、尊さんとの結婚を認めてくれる?」
オレンジジュースを一口飲んで言うと、彼女はバルコニーの欄干にもたれかかって私を見る。
「朱里が篠宮さんを好きなら仕方ないでしょ。今でも私の一番好きな人は朱里だけど、篠宮さんには敵わないしね」
そう言って、恵は私の髪をそっと手で梳く。