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連作「いい年して」

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連作「いい年して」

4 - 4話 いい年して遊んで

♥

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2025年11月13日

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「ゲーム、まだやってるの?」

職場の休憩室で、先輩が笑いながら言った。

「いい年して、飽きないねえ」


直哉はスマホを伏せて、

「まあ、現実の方がバグ多いんで」

とだけ返した。


先輩は笑って出ていった。

残った缶コーヒーの音だけが、

カチンと静かに響いた。





家に帰ると、

イヤホンの中で友人の声がする。

「おつかれー、今日も潜る?」

「潜る潜る」

画面の向こうの仲間たちとログイン。


仮想のフィールドに立つと、

空がやたらきれいだ。

「今日、リアル曇ってたからさ」

「そういう日は晴れマップ行こうぜ」


彼らは顔も知らない。

けれど、名前を呼び合うたびに、

何かが救われる気がする。





深夜。

モニターの明かりだけが部屋を照らす。

「いい年して遊んで」

ふとつぶやく。


誰かの声みたいに聞こえた。

子どものころ、

「宿題より遊びを優先して怒られた日のこと」

高校で「部活の練習を真面目にやれ」と言われた日のこと。

全部、思い出す。


——遊びって、命の余白みたいなもんじゃないのかな。


現実がギチギチしてくるほど、

あそび(余裕)が要る。

ゲームも、音楽も、友だちとのチャットも。

生きるための“隙間”だ。





「おい、ボス来てるぞ!」

仲間の声。

直哉はマウスを握り直す。


画面の向こうで、誰かが笑っている。

世界が一瞬だけ、軽くなった。


戦闘が終わると、ログの欄にメッセージが流れた。


“いい年して遊んで、ありがとう”




誰が打ったのかわからない。

でも、心のどこかにそっと残った。





画面を閉じて、

真っ暗な窓に自分の顔が映る。

笑っていることに気づいて、

直哉は少し照れた。


「いい年して、遊んでる」

それで、いいじゃないか。

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