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連作「いい年して」

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連作「いい年して」

5 - 5話 いい年して結婚しないで

♥

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2025年11月15日

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「先生、もったいないですね」

園児の祖母が言った。

「そんなにしっかりしてるのに、いい年して結婚しないなんて」


茜は笑って、

「ありがとうございます」と返した。

それ以上、話を広げると面倒になることを、もう知っていた。





放課後。

子どもたちが帰った園庭は静かだった。

風がブランコを揺らして、その音がやけに柔らかい。


職員室では、同僚の美奈がスマホを見ながら言った。

「私の同級生、また結婚したんだって。しかも三回目!」

「おお、記録更新」

「ね? でもすごいよね、あの行動力」

「行動力、って言葉にできるの、いいね」


美奈が首をかしげる。

「どういう意味?」

「なんか……結婚も離婚も、挑戦扱いされるのに、

“しない”だけは停滞みたいに言われるでしょ?」


美奈は一瞬黙って、それから笑った。

「確かに。それ、名言っぽい!」





夜。

帰り道のスーパー。

「半額シール貼りたて!」という声に、

茜は足を止めた。

隣の主婦二人組が笑いながら惣菜をカゴに入れている。


その笑い声を聞きながら、

ふと「家に帰って誰かが待ってる」って、

どんな感じだったっけ、と思った。


でも次の瞬間、

“誰かを待たせる”側の自分も想像して、

少し疲れた。


——待つのも、待たせるのも、

どっちも得意じゃないんだよな。





家に帰って、

パジャマに着替えて、

テレビをつけずに部屋の灯りを落とす。


カップスープの湯気が立ちのぼる。

一人分の静けさが、悪くない。


スマホのメッセージに母からの文。


「茜、元気? いい年して、いつまで一人でいるの」




その文字を見て、茜はカップを置いた。

少し間をおいて返信を打つ。


「いい年だから、いられるんだと思う」




送信ボタンを押したあと、心がふっと軽くなった。





窓の外で風が鳴る。その音が、どこかやさしく感じた。

ひとりの夜の静けさも、ちゃんと生きてる音だ。

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