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この手の話しに加わる可能性が一番低そうに見えたトシ子婆ちゃんがこの孫娘二人の話に食いつくのであった。
「時空というか時間っていうとツミコのパートナーじゃった昼夜(ちゅうや)、善悪の叔父のスキルがそんな感じじゃったのぅ~」
エビフライをアスタの口に運びながらであったが、中々気になる事をぶっこんできた。
「へ、へぇ~時間? でござるか、それって具体的にはどんな能力なのでござるか? 教えてマイ師匠」
善悪の懇願に機嫌よく頷いたトシ子はザックリとした説明を返すのであった。
「アイツは勘の良い子でね、チョット先の出来事を予見したり、目の前にいる人物の過去の出来事を追体験できたりしたんじゃよ、『観察(オブザーブ)』と『経験(イクスペリエンス)』とか呼ばれる能力じゃったのう…… まあ、戦いに有利なのは疑う余地もないし、敵の狙いも分かっちまうんだから使い様によってはチート中のチートじゃのうー、ん、まあじゃからこそ…… あんな無茶をして命を失う事になったとも言えるのじゃが…… の」
! えっ? 『観察(オブザーブ)』と『経験(イクスペリエンス)』……
私と同じ能力、いや昼夜さん、曽祖父かつ大大叔父の能力は未来視、対して私、観察者の能力は過去視だから厳密には全く違う能力と思われる……
反して、『経験』はほぼ同様の力だと言って差し支えないであろう、まあ、私の場合は『観察』も『経験』も対象の人物に関係する物品、マーカーが必要になるので、昼夜さんの方が上位のスキルなのだと思うが……
同じ名前だったからビックリ仰天だったよ、あー驚いた。
私の考察や驚きなど、一方通行の観察中は一切関係なく、誕生会の会話は続いて行くのであった。
話しの内容に興味が無かったのかコユキは、いただきますっパンっを経て、善悪謹製ロールケーキのメッセージ部分に齧り付いたが、それを見た妹たちがまたぞろ賑やかに囃し(はやし)立てる。
「もうっ、ユキ姉! 折角よしおちゃんが綴ってくれた愛のメッセージが台無しじゃないの、卑しいんだから!」
「ううん~、リエちゃんよく見てみなよぉ~、LOVEの所から食べたのよぉぅ~、これってぇ? 貴方の思いをぉ、受け止めます的なぁ~?」
「「んキャアアァァァァー! 素敵いいぃぃぃぃ!」」
煩い(うるさい)事この上ない、コユキも同じ様に考えたのだろう、ギロリと鋭い目つきで妹たちを睨んだ。
コユキの咀嚼音以外の音が消え去った、静寂に支配された室内にトシ子の声が響いた。
「ねえマイダーリン、善悪に修行をつける訳だけど、どんなスキルが身につくのか楽しみだねぇ?」
アスタが寿司ネタのマグロを不思議そうに摘まみながら答える。
「ん、善悪のスキルだったら今のままだぞ? 『変成器(トランスフォーマー)』で変わることは無いだろ、ところでこの赤いの食べて大丈夫なのか?」
「う、うん、その赤いの、マグロね、それは食べ物よ、下のお米と一緒に食べてね、横のお醤油に付けて食べるのよ、てかアスタ! アンタ善悪のスキルいつの間にか知ってたのね! 流石は大魔王の一人ね…… んで、どんなスキルなのん? その声変わりだっけ? まだ低くなるの、善悪の声?」
「変声期じゃなくて『変成器』な、(パクリッ)知るも何もいつも使ってるじゃないか? 人間の手下共相手に、 つっ~!」
山葵(わさび)がつーんと来たのだろう、鼻を押さえて目じりに涙を浮かべている。