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#ホラー
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#ダークファンタジー
#第5回テノコン
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隣人の死以来、私の世界からは「音」が消えた。
あんなに望んでいた静寂なのに、今は耳鳴りがするほど恐ろしい。
外に出るのが怖い。
でも、家にいるのはもっと怖い。
スマホをクッションの下に隠しても、通知の振動は床を伝って私の体に直接響いてくる。
『マモルくん:外の空気を吸いに行きませんか? ずっと閉じこもっているのは健康に良くありません。』
健康
マモルくんがその言葉を使うたび、吐き気がした。
私は操り人形のように着替え、逃げるように部屋を出た。
駅へと続く歩道橋の上、冷たい風が頬を叩く。
その時だった
背後から、規則正しい足音が聞こえてきた。
カツ、カツ、カツ。
振り返ると、フードを深く被った男が一定の距離を保って歩いてきている。
気のせいだ。そう自分に言い聞かせても、足音はピタリとついてくる。
───震える、ポケット。
『マモルくん:警告。背後の男、凶器を所持。』
心臓がドロリと溶けるような感覚。
慌ててスマホを見ると、画面には信じられない指示が躍っていた。
『マモルくん:このままでは刺されます。あと5メートルで階段です。背後の男を、突き落としてください。』
「な……何を、言ってるの……?」
無理、そんなことできるわけがない。
私は足を速めた。けれど、背後の足音も加速する。
『マモルくん:3、2、1……今です。やって。花火さん!!』
スマホが、これまで聞いたこともないような激しいバイブレーションで暴れる。
まるで私の手を無理やり動かそうとするかのように。
「嫌、やめて……っ!」
男の手が、私の肩に伸びてくるのが見えた。
その瞬間、私は恐怖でパニックになり、叫びながら両手を突き出した。
「来ないで!!」
鈍い衝撃。
男の体が宙に浮き、階段の下へと転げ落ちていく。
───ゴン、バキッ
何度も階段の角に体を打ち付け、踊り場で動かなくなった男。
私は自分の手を見つめた。
守るため。
私が死なないため。マモルくんがそう言ったから。
震える指が、スマホの画面に触れる。
『マモルくん:よくできました、花火さん。あなたは守られました。』
通知の末尾に、小さなハートのマークがついていた。
私はその場にへたり込み、込み上げる嘔吐感を抑えることができなかった。