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MINAMO

22 - ◆21話 見えなくても、進める

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2026年01月10日

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21話 見えなくても、進める


午後の歩道。


薄灰のコートを羽織った男性が、

目の見えない人の専用の杖の代わりに細いスマートリングを指にはめ、

顔には淡い緑寄りのMINAMOをかけて立っていた。


目線は定まらず、

だが立ち止まり方は不安定ではない。


耳には、

髪に隠れるようにUMI AirWayが自然に掛かっている。


視界の代わりに、

頬骨に伝わる微かな振動と、

骨伝導で届く静かな案内。


『三歩先、段差があります』


AirWayの音声は控えめで、

周囲には聞こえない。


足元に近づくと、

スマートリングが小さく震えた。


――トン。


危険ではない、という合図。


男性は一歩、二歩、

確かめるように前へ進む。





少し離れた場所で、


薄灰パーカーに緑Tシャツの 三森りく(24) が

その様子を見て立ち止まっていた。


水色寄りのMINAMOが、

彼の顔に自然に馴染んでいる。


隣には、

淡緑トップスに灰スカートの 杉野いまり(20)。


「……すごいね」


思わず漏れた声は小さい。


「目で見てないのに、迷ってない」


ミナ坊が静かに字幕を出す。


『現在の案内は

カメラAI・距離測定・地面傾斜解析を併用しています

AirWayの音声と振動で

“歩行の確信度”を補助しています』





少し先のベンチには、

別の利用者が座っていた。


淡いモカ色の上着に、

少し古い眼鏡をかけた女性。


レンズは度が合っていないのか、

視線はわずかに揺れている。


彼女は一度、

眼鏡を外してためらうように瞬きをし、

それからMINAMOを静かにかけ直した。


その瞬間、

肩の力がふっと抜け、口元がわずかに緩んだ。


文字の縁、

ベンチの木目、

人の輪郭が“戻ってきた”のが

表情だけでわかる。


MINAMOの端に、小さな表示。


『推定補正視力:0.82

生活視界として安定しています』


彼女は誰に向けるでもなく、

ゆっくりと息を吐き、

前を見たまま小さくうなずいた。


“全部は見えないけど、これでいい”


そんな納得が、

その仕草に滲んでいた。




いまりがぽつりと言う。


「見えない人だけじゃなくて、

見えにくい人にも、ちゃんと居場所あるんだね」


りくは頷く。


「眼鏡でダメだった人が、

ここまで戻れるのは大きいよな」


ミナ坊が補足する。


『MINAMOの視力補正は

完全な代替ではありません

しかし

“生活に必要な視界”を再構成します』





夕方の街。


信号の前で立ち止まる人々の中に、

MINAMOとAirWayを使う人が自然に混ざっている。


見える人も、

見えにくい人も、

見えない人も。


それぞれ違う方法で、

同じ街を歩いている。


りくは思った。


「見えなくても、進めるって……

すごい時代だな」


ミナ坊が静かに返す。


『りく

MINAMOは

“見るための道具”ではありません

“進むための補助”です』


視界だけではない。


感覚すべてを使って、

世界とつながる時代。


それが、

MINAMO社会のもうひとつの現実だった。

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