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第十話「肉体のレシピ」
🔪オペ室の演出
金属の器具がずらりと並ぶ――手術室。
ではなく、“キッチン”。
クラウスのアトリエは、肉を盛り付けるための祭壇。
そこに置かれたまま目を覚ました少年は、まだ自分の状況を理解していなかった。
「……ここは……?」
クラウスは優しく微笑む。
白衣のボタンは血に濡れ、手袋はすでに染まっている。
胸元にかかった名札には【臓器調整師/クラウス】と記されていた。
「安心して。“必要な部位しか取らない”。
君は“未来の自分”の材料になれる。誇っていいよ。」
🔪スケアリーの実況「パーツ取りのビュッフェスタイル」
「来たねぇ~~~ッ!! ビュッフェ方式!!」
スケアリーは壁に張りついて逆さにぶら下がり、目をギラつかせる。
「彼は殺さない。“使う”んだ。
これはただの殺人じゃない、“部位ごとのセレクト式料理”だよ!!」
「肝臓は熟成用、心臓は鼓動の強さ、眼球はピント精度、
全部、“レシピ”に基づいた選定……つまり――」
「人間の肉体を、“味の構成要素”として捉えてる!!!!」
🔪解体開始
クラウスは、少年の胸に手を当てる。
指が皮膚をなぞると、そこにラインが浮かび上がった。
あらかじめ用意していたカッティングプランに沿って、メスが下ろされる。
「この骨の角度……うん。
“左鎖骨”はいただこうか。」
ザクリ。
悲鳴はあがらない。
クラウスが使用しているのは“意識だけ残る麻酔”。
「痛みは残すよ?
“味覚”っていうのは、料理人だけが感じるもんじゃない。」
少年の目が見開かれる。
その中に映っていたのは、笑うスケアリーの顔だった。
🔪スケアリーの食レポ「恐怖のカットステーキ」
「ひゃっはぁあああ!! うぅぅ、いい断面ッ!!!」
スケアリーは血まみれのホワイトボードに絵を描いていた。
――“解体済みの少年”の盛り付け図。
「この切り口!! この血の滲み!!
これはもう、“カットステーキの演出”として芸術の域!!」
「しかも、本人がそれを“感じながら提供される”んだよ!?
つまり“観客でもあり、料理でもある”!!」
「ねぇユリウス、こういうのをなんて呼ぶか知ってる?
……“自家製の恐怖”って言うんだよ。」
🔪ユリウスの苦悶
部屋の隅で立ち尽くすユリウス。
彼の顔は、冷静というより感情を押し殺していた。
「……これで、完全犯罪になるのか?」
スケアリーは床を舐める勢いで跳ねながら答える。
「なるとも!!
だって彼は“料理”してるだけなんだから!!
誰が殺した? いや、“誰を食べたか”なんて誰にもわからない!」
「証拠は溶ける。肉は混ざる。名前は消える。」
「ねぇユリウス、見てごらんよ――」
「これが、“肉体のレシピ”ってやつだ。」
🔪クラウスの独白
クラウスは丁寧に骨を磨きながら、ふと呟いた。
「“人間”ってさ、構造が曖昧すぎるんだ。
神様が雑に盛りつけた料理だよ。」
「……俺は、そのレシピを改良してるだけ。」
次回 → 第十一話「熟成の火入れ」