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盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

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盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

44 - 派手派手しいギャラリーたちのおかげで、着飾った自分が霞んでいます①

2025年09月12日

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賑やかな夜会会場に足を踏み入れた途端、ノアの思考はお仕事モードに切り替わった。


「殿下、前方右側にニワト……いえ、ローガン殿下とクリスティーナ嬢がおります。なんかお偉いさん達に囲まれて喋り散らかしております。あとローブを羽織った人は会場の端っこのガラス側に3人、……や4人。そんでもって更に左側奥にグレイアス先生がいますが女性に囲まれてます」

「そうか。ありがとうノア。頼りになるね」

「へへっ……でも、この後は私──」

「ああ、わかっている。配置がわかればもう大丈夫。あとは私に任せてくれ」

「はい!でも、何かあったら私を盾にして逃げてくださいね」

「……ははは」

最後のノアの言葉に、アシェルは笑うだけで頷かない。


絶対に返事をもらいたかったが、返事を強要することはできない。


なぜなら、会場に入ったら一言もしゃべるなとグレイアス先生から厳命されているからだ。


酷い扱いだが、宮廷マナーを身につけられなかったノアにも非があるので素直に口を噤む。


そうすればノアは、着飾った貴族令嬢の1人にしか見えない。


国王の生誕を祝う夜会はまだ主役が登場していないというのに、大変な賑わいをみせている。


絶え間なく音楽が奏でられ、男女のペアが円を描くようにダンスを踊り、会場の端にはノアが夢にまで見た絶品キノコ料理がある。


しかしノアがそれを口にできるのは、任務を遂行してからだ。


与えられたミッションは3つ。


一つ目は、会場に入ってすぐにアシェルに、予め指定されていた人物がどこにいるか報告すること。

二つ目は、国王陛下の登場前にダンスを一発踊ること。

三つめは、国王陛下に挨拶をすること。ただし全てアシェルが対処するので、となりで品よく笑うだけ。


たった3つといえど、されど3つ。


ミッションをこなしている最中にイレギュラーなことがあれば、全て迅速に的確に対応しなければならない。


ノアは、もうすでにこの3つのミッションをクリアするのは容易ではないことに気付いている。


四方八方からの不躾な視線と、あからさまに聞こえてくるアシェルの誹謗中傷。加えて自分に対しての非難めいた囁き。


(ああ……どうかキノコ料理が残っていますように)


真剣に祈りながら、ノアはピンと背筋を伸ばす。こちらに向かってくる2名──ローガンとクリスティーナに気付いたから。


二人は既に臨戦態勢に入っているのが嫌でもわかる。会場に入って数分で、いきなり難易度が高いイレギュラー対応だ。


不安を覚えたノアは、ちらりとエスコートしているアシェルを見上げる。


予想に反して、盲目王子はいつも通り奇麗な笑みを浮かべていた。


対してのっしのっしとガサツな歩き方でこちらにやってきたローガンは、馬子にも衣裳という言葉を使っても「カッコイイ」とか「素敵」とか「イケてる」と口にすることに罪悪感を覚える姿だった。


同じくクリスティーナも今日も安定の派手派手しさで、例えるならアカイカタケ。無論、食用ではない。


とはいえ二人は、存在感だけはある。歩を進める二人の邪魔をしないよう、ギャラリーたちはそそっと道を開ける。


そうしてノア達の行く手を阻むように立ち塞がったローガンは、ニヤリと意地悪く笑った。


「おや、アシェルじゃないか。いやいや、引きこもりのお前が来るなんて思いもよらなかったぞ」


そんな失礼な台詞を吐いたローガンは、今度はノアに視線を移す。


「初めて見る顔だが、君も大変だな。こんな盲目の男がエスコート役じゃダンスも踊れないだろう。どうだ?良かったら俺と……って、お前、まさかあの醜女なのか!?」


ぎょっと目をむいたローガンにノアは、ふわりと微笑む。


本当は侮蔑の目を向けたい。許されるなら脛を蹴っ飛ばしたい。


でもグレイアスから「腹が立つことを言われたらムッとする代わりに笑え」と命じられている。


女子の笑みは最強の武器だ。特訓のおかげで優雅な笑みを浮かべることができているノアを見て、ローガンはあからさまにたじろいだ。


ローガンの隣にいるクリスティーナに至っては、般若のお面を付けているようにしか見えない。


(ざまあみろ)


そんな気持ちを伝えるかのように、ふふんとノアは胸を張る。


ノアの隣に立つアシェルも機嫌がいいようで、ニワトリ男に向けるにはもったいないほどの爽やかな笑みを浮かべて口を開いた。


「私などを気にかけていただいたようで感謝申し上げます、兄上。ですが今日は彼女がいますからご安心ください」


そう言ってアシェルは、ノアの手をそっと持ち上げた。


何をするんだろう。パチパチと瞬きをしながら事の成り行きを見守っていたノアに、アシェルはニコッと微笑み、再び口を開いた。


「父親の生誕祭に参加しない息子などこの世にはおりません。それに何より私の婚約者を紹介できる特別な機会なのですから、足が折れたとて私はここに来る気持ちでおりました」


言い終えたアシェルは、なんのためらいもなくノアの手の甲に口づけたのだ。


(ひょえぇぇーーー)


ノアは驚きに目を見張る。


笑えというグレイアスの命令なんて、宇宙の彼方に吹き飛んでしまった。

盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

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